龍次の想い
「龍次は、このサイトを立ち上げた奴を、探していたんだ。C組の岡田と一緒にな」
「探していた? なんの為に? それにそれならあたし達に言えばいい話だろ?」
あたしは意味が判らなかった。
確かにこの写真は、屈辱に満ちた嫌な思い出だ。
だけどそれならそれで、あたし達に話して欲しかった。同じ仲間なんだから。
「言えなかったそうだよ。イノリが、傷つくだろうから。俺達に言えば、相当頭にくるだろうから。だからあいつはひとりで、この存在を、元から消し去ろうとしてたんだ」
納得した、確かだった。
あたしだって少し混乱してるし、仲間達がこの存在に気付けば、そうとうムカつきを覚えるだろう。
だから龍次は、その存在を胸の内に、ひとりで仕舞いこんだのだろう。
「俺だってこんな写真、イノリに見せたくはなかったさ。俺だって多分、龍次と同じ立場なら、見せずに隠していたと思う。だけどゴメンよイノリ、こんな見たくもない写真を、お前に見せちゃって。だって俺からすれば、龍次だって大切な存在だから。イノリが龍次のことを、ずっと誤解してたら嫌だからさ」
静かに言い放つ虎太郎。
悔しげで苦痛に満ちた表情だ。
あたしと龍次、それぞれを憂い、それでもままならない現実に、押しつぶされそうな表情だった。
「いや、ありがとう虎太郎。あたしも少しは驚いたけど、あんたが話してくれて、凄い嬉しいよ」
言って虎太郎を見つめた。
虎太郎の表情が、笑顔で溢れる。
「さっき岡田が言ってたんだ。この写真を載せたのは、城東高の朝田。この写真はその兵隊の小暮が、隠し撮りしてた写真だって」
そして再び真顔になり、言い放った。
「朝田? あの豚が?」
それにはムカつきを覚えるに充分だった。
朝田はあたしを、いつも舐めるような視線で見つめている。
とてつもないエロさを醸し出しながら。
そして同時に、言いようない不安感が頭を過ぎった。
その時、不意にあたしのスマホに着信音が鳴り響いた。
相手は真希だ。
「もしもし真希。どうしたんだよ?」
あたしはそれを耳にあてがった。
『大変だよイノリ。さっき龍次を見たの。特攻服を着込んで、傘も差さずに凄い剣幕で。私、バスに乗ってたから声も掛けられなくて。あれって城東高の方だったよ』
スマホの向うから聞こえるのは、真希の震えるような声。
どうしていいか判らないような、苦痛に満ちたトーンだ。
「龍次が?」
あたしらの不安は的中していたんだ。
龍次はあたしの為、単身城東高に乗り込んだ。
ウチのブッコミをやってるくらいだ。その行動は至極明快なものだ。
傍では鎌田さんと虎太郎も、食い入るようにその会話を聞き入っている。
「ありがとう真希。それだけ知ればあたしらも充分だから」
『龍次、大丈夫かな』
「大丈夫。あいつ、ああ見えてケンカの腕は一流だから」
『だよね』
少しだけ真希の不安が、緩んだ気がした。
「とにかくありがとな」
そしてあたしは電源を切った。
「イノリ?」
「龍次の奴がどうしたって?」
虎太郎と鎌田さんが問い質す。
「ケンカですよ。ウチの特攻隊長が、既に出向いてる。戦場は城東高、敵は朝田とその配下」
あたしは言い切った。
「オウよ、俺はイノリのナイトだからな。いつでも準備万端!」
呼応して虎太郎が吠える。
「待ってろよ、龍次。あんたひとりを、カッコよくなんてさせないんだから!」
そしてあたしと虎太郎は、雨の降り続く表に飛び出した。




