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桜咲イノリ 上等です!  作者: 原田真優
第三章 VSロードオブファントム
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龍次の想い

「龍次は、このサイトを立ち上げた奴を、探していたんだ。C組の岡田と一緒にな」


「探していた? なんの為に? それにそれならあたし達に言えばいい話だろ?」

 あたしは意味が判らなかった。


 確かにこの写真は、屈辱に満ちた嫌な思い出だ。

 だけどそれならそれで、あたし達に話して欲しかった。同じ仲間なんだから。


「言えなかったそうだよ。イノリが、傷つくだろうから。俺達に言えば、相当頭にくるだろうから。だからあいつはひとりで、この存在を、元から消し去ろうとしてたんだ」


 納得した、確かだった。

 あたしだって少し混乱してるし、仲間達がこの存在に気付けば、そうとうムカつきを覚えるだろう。


 だから龍次は、その存在を胸の内に、ひとりで仕舞しまいこんだのだろう。



「俺だってこんな写真、イノリに見せたくはなかったさ。俺だって多分、龍次と同じ立場なら、見せずに隠していたと思う。だけどゴメンよイノリ、こんな見たくもない写真を、お前に見せちゃって。だって俺からすれば、龍次だって大切な存在だから。イノリが龍次のことを、ずっと誤解してたら嫌だからさ」

 静かに言い放つ虎太郎。

 悔しげで苦痛に満ちた表情だ。


 あたしと龍次、それぞれを憂い、それでもままならない現実に、押しつぶされそうな表情だった。



「いや、ありがとう虎太郎。あたしも少しは驚いたけど、あんたが話してくれて、凄い嬉しいよ」

 言って虎太郎を見つめた。


 虎太郎の表情が、笑顔で溢れる。



「さっき岡田が言ってたんだ。この写真を載せたのは、城東高の朝田。この写真はその兵隊の小暮が、隠し撮りしてた写真だって」

 そして再び真顔になり、言い放った。


「朝田? あの豚が?」

 それにはムカつきを覚えるに充分だった。


 朝田はあたしを、いつも舐めるような視線で見つめている。

 とてつもないエロさをかもし出しながら。


 そして同時に、言いようない不安感が頭を過ぎった。



 その時、不意にあたしのスマホに着信音が鳴り響いた。

 相手は真希だ。



「もしもし真希。どうしたんだよ?」

 あたしはそれを耳にあてがった。


『大変だよイノリ。さっき龍次を見たの。特攻服を着込んで、傘も差さずに凄い剣幕で。私、バスに乗ってたから声も掛けられなくて。あれって城東高の方だったよ』

 スマホの向うから聞こえるのは、真希の震えるような声。

 どうしていいか判らないような、苦痛に満ちたトーンだ。



「龍次が?」

 あたしらの不安は的中していたんだ。


 龍次はあたしの為、単身城東高に乗り込んだ。

 ウチのブッコミをやってるくらいだ。その行動は至極明快なものだ。



 傍では鎌田さんと虎太郎も、食い入るようにその会話を聞き入っている。



「ありがとう真希。それだけ知ればあたしらも充分だから」


『龍次、大丈夫かな』


「大丈夫。あいつ、ああ見えてケンカの腕は一流だから」


『だよね』


 少しだけ真希の不安が、緩んだ気がした。



「とにかくありがとな」

 そしてあたしは電源を切った。


「イノリ?」


「龍次の奴がどうしたって?」


 虎太郎と鎌田さんが問い質す。



「ケンカですよ。ウチの特攻隊長が、既に出向いてる。戦場は城東高、敵は朝田とその配下」

 あたしは言い切った。



「オウよ、俺はイノリのナイトだからな。いつでも準備万端!」

 呼応して虎太郎が吠える。


「待ってろよ、龍次。あんたひとりを、カッコよくなんてさせないんだから!」



 そしてあたしと虎太郎は、雨の降り続く表に飛び出した。

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