隠された真実
そんなあたしの横顔を、鎌田さんはしみじみと見つめている。
「……イノリ、お前は龍次のことをどう思う?」
そして訊いてきた。
あたしは少しだけ考える。
「仲間ですよ」
そして窓の外を見つめて答えた。
窓に映り込むあたしもそう言ってる。
少なくともあんなエロ少年、異性としては考えられないって。
……かまぼこみたいな目が可愛い、か。確かにいつでも目尻をつり上げて、怒りを全面に押し出してたら、シワになっちゃうかもな……
「そうか」
鎌田さんが笑う。
「あの日のこと、どう感じた?」
そして再び訊いてきた。
「あの日のこと?」
「俺が、お前ら二人を、闘わせた時さ」
「あん時の、あいつですか?」
あたしは顎に右手を添えて、また考え込む。
「少しムカつきましたね。あたしの胸を揉みやがって」
ホント、あの時の龍次の態度には、ムカついていた。いや、思い出すだけで頭にくる。
ケンカの腕前とか、そう言う点では、龍次を認めるところもある。
だけどあいつは、エロくてワガママ。チームの和なんかお構い無しだ。
その上、あたしに負けたからって、不貞腐れるなんて、男としても最低だ。
そんなあたしの顔を、鎌田さんは寂しげに見つめていた。
「龍次は、変に誤解を受ける性格だからな。あの時だって、わざとお前の胸を触ったんじゃねーか?」
「えっ?」
その台詞に愕然となった。言ってる意味が判らない。マジマジと鎌田さんに視線を向ける。
そんな戸惑いも余所に、鎌田さんは続けだす。
「あの総長の座を争そってのケンカ。最初に提案したのは龍次なのさ」
「えっ、龍次が? 何故そんなことを」
「あいつは言ってたんだ。『ウチの次期総長、俺と桜咲で悩んでるなら、あいつを総長にしてください』ってな。『あいつを総長に担いで、俺が道を切り拓く特攻隊長になる。そして総長をガードするのが親衛隊長たる虎太郎。それがウチらデュランダルが、デュランダルたる最高の布陣です』って、躊躇いもせず言い切ったよ」
頭の中が真っ白だった。あの龍次が、そこまで考えていたなんて。
「だったら何故、あたし達を闘わせたんです?」
だからこそ違和感を感じた。最初から決めてたことなら、闘うだけムダだ。
「お前が女だからな」
「えっ?」
「女が総長になるってのは、どんなに仲がいい仲間だって、納得出来ないこともある。タダの御輿だろうって、勘繰る奴もいるだろう。だから拳と拳の勝負をして、本気の実力を示そうとしたのさ」
それは言われてみれば当然のことだ。
仲間内に、そんな言葉を口にする奴がいなくても、他のチームとすれば別かもしれない。
悪口ってのは、どこから出るか判らないから。
そんな情況になれば、チーム内の不協和音を招く結果にもなる。
「それなのにお前は、本気にならなかった。自分は女だからって、少しだけ躊躇ってたんだろ?」
鎌田さんの視線が痛い。
「いやっ……その……」
堪らず口籠もる。戸惑い左手で髪を掻き上げた。
「だから、わざと胸を揉んだんだろ。お前が本気で勝負するように」
「だったらあいつ、わざとあたしに負けたって可能性も……」
「さあな、そこまでは判らん。俺はそこまであいつの気持ちは判らんからな」
全ては龍次の思惑で動いていたんだ。
チームを想い、あたしの性格を読み取り、未来へのビジョンを画いて。
だけど、胸を揉んだのは個人の楽しみも含まれていただろう。
あの時の“役得”って台詞は、それを意味してる……
「大変だイノリ。龍次がなにしてたかが、判ったぞ!」
突然そこに、虎太郎が飛び込んできた。




