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桜咲イノリ 上等です!  作者: 原田真優
第二章 新チーム始動
12/17

隠された真実

 そんなあたしの横顔を、鎌田さんはしみじみと見つめている。


「……イノリ、お前は龍次のことをどう思う?」

 そして訊いてきた。


 あたしは少しだけ考える。


「仲間ですよ」

 そして窓の外を見つめて答えた。


 窓に映り込むあたしもそう言ってる。

 少なくともあんなエロ少年、異性としては考えられないって。


 ……かまぼこみたいな目が可愛い、か。確かにいつでも目尻をつり上げて、怒りを全面に押し出してたら、シワになっちゃうかもな……



「そうか」

 鎌田さんが笑う。


「あの日のこと、どう感じた?」

 そして再び訊いてきた。


「あの日のこと?」


「俺が、お前ら二人を、闘わせた時さ」


「あん時の、あいつですか?」

 あたしは顎に右手を添えて、また考え込む。


「少しムカつきましたね。あたしの胸を揉みやがって」


 ホント、あの時の龍次の態度には、ムカついていた。いや、思い出すだけで頭にくる。


 ケンカの腕前とか、そう言う点では、龍次を認めるところもある。

 だけどあいつは、エロくてワガママ。チームの和なんかお構い無しだ。


 その上、あたしに負けたからって、不貞腐れるなんて、男としても最低だ。



 そんなあたしの顔を、鎌田さんは寂しげに見つめていた。


「龍次は、変に誤解を受ける性格だからな。あの時だって、わざとお前の胸を触ったんじゃねーか?」


「えっ?」

 その台詞に愕然となった。言ってる意味が判らない。マジマジと鎌田さんに視線を向ける。



 そんな戸惑いも余所に、鎌田さんは続けだす。


「あの総長の座を争そってのケンカ。最初に提案したのは龍次なのさ」


「えっ、龍次が? 何故そんなことを」


「あいつは言ってたんだ。『ウチの次期総長、俺と桜咲で悩んでるなら、あいつを総長にしてください』ってな。『あいつを総長に担いで、俺が道を切り拓く特攻隊長になる。そして総長をガードするのが親衛隊長たる虎太郎。それがウチらデュランダルが、デュランダルたる最高の布陣です』って、躊躇いもせず言い切ったよ」



 頭の中が真っ白だった。あの龍次が、そこまで考えていたなんて。



「だったら何故、あたし達を闘わせたんです?」

 だからこそ違和感を感じた。最初から決めてたことなら、闘うだけムダだ。



「お前が女だからな」


「えっ?」


「女が総長になるってのは、どんなに仲がいい仲間だって、納得出来ないこともある。タダの御輿だろうって、勘繰る奴もいるだろう。だから拳と拳の勝負をして、本気の実力を示そうとしたのさ」



 それは言われてみれば当然のことだ。


 仲間内に、そんな言葉を口にする奴がいなくても、他のチームとすれば別かもしれない。


 悪口ってのは、どこから出るか判らないから。

 そんな情況になれば、チーム内の不協和音を招く結果にもなる。



「それなのにお前は、本気にならなかった。自分は女だからって、少しだけ躊躇ためらってたんだろ?」

 鎌田さんの視線が痛い。


「いやっ……その……」

 堪らず口籠もる。戸惑い左手で髪を掻き上げた。



「だから、わざと胸を揉んだんだろ。お前が本気で勝負するように」


「だったらあいつ、わざとあたしに負けたって可能性も……」


「さあな、そこまでは判らん。俺はそこまであいつの気持ちは判らんからな」


 全ては龍次の思惑で動いていたんだ。


 チームを想い、あたしの性格を読み取り、未来へのビジョンを画いて。



 だけど、胸を揉んだのは個人の楽しみも含まれていただろう。

 あの時の“役得”って台詞は、それを意味してる……




「大変だイノリ。龍次がなにしてたかが、判ったぞ!」

 突然そこに、虎太郎が飛び込んできた。


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