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桜咲イノリ 上等です!  作者: 原田真優
第二章 新チーム始動
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雨の降る光景



 こうしてガッコーも終わり、待ちに待った夏休みに突入した。


 ようやくあたし達の、熱い青春の時間が始まったんだ。




 相変わらずあたしは、海の家でバイト三昧だった。


 虎太郎達も毎日応援に駆けつけ、たまには真希も女友達を連れて来てくれて、ガヤガヤとした忙しい日々が続いていた。



 あの白いビキニなんて、屈辱的な姿は嫌だった。

 馬鹿なヤンキーや、スケベなオッサンのギラついた視線がしゃくに障るし、たまにはエロい言葉や、行動を仕掛けようとする連中もいた。


 マジでぶち殺そうとさえ感じていた。だけど鎌田さんの手前、我慢したんだ。



 もっともそういう連中は、虎太郎達が未然で防いでいたし、陰で半殺しの目に遭わせていた。


 こんな姿だけ気にしなければ、とても楽しい時間だった。みんな笑顔で楽しいひと時。



 だけどその間、龍次の姿だけは見えなかったんだ。








 ザーザーと雨が降り続いていた。


 さっきまで広がっていた青空は、どこにもその姿は見えない。そこにあるのは灰色の厚い雲。


 降り付ける雨が窓にぶつかり、雫となって滴っている。



 そこから見える浜辺は、人の姿もなく寂しげ。

 所々に見える、宣伝用のノボリやビーチパラソルが、雨に打たれて物悲しさを露わにしていた。



「参ったなー、ひどい雨だぜ。こりゃー止む気配ねーよな」

 鎌田さんが煙草をくわえ、遠く浜辺を見つめている。



「いきなりですもんね。こっちはビショビショですよ」

 あたしは髪をタオルで拭きながら返した。


 窓際のテーブル席にあぐらをかいて座り、窓の外を見つめる。


 既に水着姿じゃなく、借りた白いジャージ姿だ。



 それはいきなりのことだった。ポツリポツリと降り出した雨は土砂降りとなり、あたし達は退散を余儀なくされていた。


 虎太郎達も自宅に帰り、そこにいるのはあたしと鎌田さんだけだ。



「仕方ねーよ。天気には勝てない。テキ屋殺すに刃物は要らない、雨の三日も降ればいいってな」


「あはは、鎌田さんがテキ屋ですか? 似合いすぎて怖いですよ。ヤクザ顔負けですからね」


「馬鹿、言いすぎだ」


「すみません」

 あたしは後ろに視線を向けて、ペコリと頭を下げて舌を出した。



「まったく」

 苦笑する鎌田さん。


「しかし、お前らには感謝してるよ。毎日手伝ってくれて、俺としちゃ大助かりだ」


「あの水着姿だけは、勘弁なんすがね」


「悪いな。俺だってあんなカッコーさせるのは、気が引けるんだが……」

 言葉を濁す鎌田さん。


「だけど売り上げは、良いんでしょ? しかもあたしの水着姿、ちらちら見てヘラヘラしてるし」


「ま、まあな。……嫌いだったら、あんなカッコーさせねーよ」


 視線を逸らし、微かに紅潮する。


 きっとあの姿を思い出してるんだ。硬派に見える鎌田さんも、やっぱり男だ。エロいことしか考えていない。


 それがこの人の良さでもあるんだが。


「あそこに龍次もいれば、もっと盛り上がるんだろうがな」

 不意に鎌田さんが呟いた。


 それであたしは無言になった。


 確かにあの光景には、足りないものがある。それは龍次の存在だ。



 龍次はあたし達のチームに取って、トラブルメーカー的存在。


 あいつがいると、いつでもドタバタ展開になるけど、それがあたしらデュランダルのいい所。


 それがないってのは、寂しいことだ。



「あいつ、本気であたしに負けたのが、悔しいのかな」

 テーブルにうなだれて、ボソッと呟いた。



 それは、ずっと感じていた疑問だ。


 チームのみんなの前じゃ、言えない台詞だけど、つい口走った。


 寂しい雨の光景が、あたしの心を解放したのかも知れない。

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