雨の降る光景
こうしてガッコーも終わり、待ちに待った夏休みに突入した。
ようやくあたし達の、熱い青春の時間が始まったんだ。
相変わらずあたしは、海の家でバイト三昧だった。
虎太郎達も毎日応援に駆けつけ、たまには真希も女友達を連れて来てくれて、ガヤガヤとした忙しい日々が続いていた。
あの白いビキニなんて、屈辱的な姿は嫌だった。
馬鹿なヤンキーや、スケベなオッサンのギラついた視線が癪に障るし、たまにはエロい言葉や、行動を仕掛けようとする連中もいた。
マジでぶち殺そうとさえ感じていた。だけど鎌田さんの手前、我慢したんだ。
もっともそういう連中は、虎太郎達が未然で防いでいたし、陰で半殺しの目に遭わせていた。
こんな姿だけ気にしなければ、とても楽しい時間だった。みんな笑顔で楽しいひと時。
だけどその間、龍次の姿だけは見えなかったんだ。
ザーザーと雨が降り続いていた。
さっきまで広がっていた青空は、どこにもその姿は見えない。そこにあるのは灰色の厚い雲。
降り付ける雨が窓にぶつかり、雫となって滴っている。
そこから見える浜辺は、人の姿もなく寂しげ。
所々に見える、宣伝用のノボリやビーチパラソルが、雨に打たれて物悲しさを露わにしていた。
「参ったなー、ひどい雨だぜ。こりゃー止む気配ねーよな」
鎌田さんが煙草をくわえ、遠く浜辺を見つめている。
「いきなりですもんね。こっちはビショビショですよ」
あたしは髪をタオルで拭きながら返した。
窓際のテーブル席にあぐらをかいて座り、窓の外を見つめる。
既に水着姿じゃなく、借りた白いジャージ姿だ。
それはいきなりのことだった。ポツリポツリと降り出した雨は土砂降りとなり、あたし達は退散を余儀なくされていた。
虎太郎達も自宅に帰り、そこにいるのはあたしと鎌田さんだけだ。
「仕方ねーよ。天気には勝てない。テキ屋殺すに刃物は要らない、雨の三日も降ればいいってな」
「あはは、鎌田さんがテキ屋ですか? 似合いすぎて怖いですよ。ヤクザ顔負けですからね」
「馬鹿、言いすぎだ」
「すみません」
あたしは後ろに視線を向けて、ペコリと頭を下げて舌を出した。
「まったく」
苦笑する鎌田さん。
「しかし、お前らには感謝してるよ。毎日手伝ってくれて、俺としちゃ大助かりだ」
「あの水着姿だけは、勘弁なんすがね」
「悪いな。俺だってあんなカッコーさせるのは、気が引けるんだが……」
言葉を濁す鎌田さん。
「だけど売り上げは、良いんでしょ? しかもあたしの水着姿、ちらちら見てヘラヘラしてるし」
「ま、まあな。……嫌いだったら、あんなカッコーさせねーよ」
視線を逸らし、微かに紅潮する。
きっとあの姿を思い出してるんだ。硬派に見える鎌田さんも、やっぱり男だ。エロいことしか考えていない。
それがこの人の良さでもあるんだが。
「あそこに龍次もいれば、もっと盛り上がるんだろうがな」
不意に鎌田さんが呟いた。
それであたしは無言になった。
確かにあの光景には、足りないものがある。それは龍次の存在だ。
龍次はあたし達のチームに取って、トラブルメーカー的存在。
あいつがいると、いつでもドタバタ展開になるけど、それがあたしらデュランダルのいい所。
それがないってのは、寂しいことだ。
「あいつ、本気であたしに負けたのが、悔しいのかな」
テーブルにうなだれて、ボソッと呟いた。
それは、ずっと感じていた疑問だ。
チームのみんなの前じゃ、言えない台詞だけど、つい口走った。
寂しい雨の光景が、あたしの心を解放したのかも知れない。




