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81.

 量が多くて査定に時間がかかるというので、俺たちは肉だけ置いて一旦肉屋を後にした。他にも売り物がたくさんあるし、いつまでも村長の息子に荷物番をさせていられない。

 俺とリオで残りの売り物を全部担いで、村長の息子とはその馬車広場で別れた。


 再びデカい背負子を背負うことになったが、市場の方へ行くと大きな荷物を背負っているやつはざらにいるから目立たない。

 子供だって商店の手伝いをしていたり、なんなら露店を開いているガキもいる。俺たちも商家の丁稚とでも思われているのだろう。


 次に向かったのは冒険者ギルドだ。こちらも卸す品が多いから査定に時間がかかるだろうとリオが言うのだ。


「リオ久しぶり、ギルドカードの更新?」

「それもあるけど、買取お願いします」


 冒険者ギルドの受付のお姉さんが親し気にリオに声をかけてくる。リオはここにもよく素材を売りに来るから顔馴染みになっているらしい。


 それよりも気になることを言った。

「おまえ、冒険者ギルドに登録してるのか?」

 つまりリオは冒険者だったということか。そんな職業はファンタジーな世界でしか聞いたことがないから、こんな身直にいたことに驚きだ。


 まあ、俺はもっとわけわからん魔王だし、魔界では摩訶不思議な魔物たちに囲まれていたから今更だが、ジョブとしての冒険者という存在を知って、改めてファンタジーな世界なのだと実感した。


「うん、言ってなかったっけ? 登録してるだけで、冒険者らしいことはあんまりしてないけどね」

「そこらのB級冒険者よりも素材持ち込み数が多い子が何言ってんのよ」

 受付のお姉さんは飽きれた顔をしている。でもリオとしては冒険者としての依頼を熟したりはしていないから、冒険者らしくはないと思っているらしい。


 リオが冒険者ギルドに登録しているのは、ギルドカードを持っていると買取価格が割り増しされたり、手数料が安くなるという特典があるからだという。まるでリサイクルショップのポイントカードだ。


 一応、身分証代わりにもなるから定期的に更新が必要だし、ギルドに所属し続けるには一定量の依頼を熟さなければならないという条件もある。

 依頼を熟していても問題行動が多いと登録を抹消されることもあるそうだ。荒くれものの多いイメージの冒険者だったけど、割ちゃんとした職業として認められているらしい。


 魔物素材を持ち込むことで魔物討伐をしたとみなされるし、リオは一回の持ち込みの量が多く多数の魔物討伐を行ったと認められるので、買取をお願いするだけでギルドに所属する条件は満たされるわけだ。当然、素行も頗る良いので追い出される心配もない。


 ちなみに、冒険者の最低ランクはFで、リオはギルドに来る依頼をぜんぜん受けていないのに魔物討伐の実績だけでCランクになっているという。


「ギルも登録しておけば、便利だし大きな街に行く時も通行証代わりになるよ」

 登録は十三歳からできる。俺はこの世界ではまだ一歳にもなっていないけど、見た目だけなら十三歳でも通用するだろう。


「あなたは初めて見るわよね、エジン村の子?」

「ギルだ」

「今は僕の家にいるんだ」

「なら実家の近くで登録した方がいいわ、保証人も必要だから親御さんに頼んでみたら」


 やっぱり誰でも登録ができるわけではないよな。リオも十三歳で登録する時は親父さんに付いてきてもらったらしい。

 人間界での身分証はあったら便利そうだけど、身分を証明するものが何もないから、身分を証明するカードも手に入らない。

「じゃあいい」


「グレンさんは別の町から来たけどここのギルドで登録できたじゃん」

 グレンさんって誰だよ。俺のことなのにどうしてリオはこんなに食いつくのか。俺自身は別に身分証がないことはそれほど気にしていないのだが、この会話のせいで受け付けのお姉さんはすっかり俺のことを家出っ子か孤児だと察してしまっている。


「ごめんなさいね、保証人がいないならBランク以上の冒険者からの推薦が必要なのよ」

 そのグレンさんとやらはBランク以上の冒険者の推薦が貰えたらしい。俺はギルドカードを得るために上級冒険者に近付こうと思うほどの熱意はない。リオはまだ未練がありそうだったが、この場は引くしかない。


 冒険者ギルドに持ち込んだのは魔物の肉以外の素材だ。魔石とか、食べるには不味いが薬の材料になる内臓とか、あとは骨や牙なんかも卸した。

 骨や牙は細工師に売れるそうだが、町には細工師がたくさんいるし、欲しがっている素材も人それぞれだから、ギルドに降ろすのが一番手っ取り早い。細工師たちもわかっているからみんな冒険者ギルドに素材を買いに来る。


 革だけは村で贔屓にしている店があるから、そちらに売りに行くそうだ。

 冒険者ギルドでもやっぱり査定に時間がかかるから精算は後になった。リオのギルドカードの更新も、今回の魔物討伐分も成績に加味するから査定の後ということになり、俺たちは魔物の毛皮を担いで外に出た。

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