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77.

 帰りもリオは人間離れした怪力を見せた。

 山ほど獲った獲物を、漫画のように山にして担いで帰ったのだ。怪力もさることながら、積み上げた魔物の死骸を崩さず運ぶバランス感覚も人間離れしている。


 俺も自分で獲った狼の魔物三匹は自力で運んだ。

 リオみたいに人間離れした姿は晒したくないので、森の中で見つけた倒木で簡易の台みたいなものを作って引き摺っている。ただの食用なら縄で括って引き摺るのでもいいのだが、狼は毛皮が高く売れそうだから、直に引き摺って傷を付けたくなかった。


 俺にかかれば狼の三匹と丸太くらいぜんぜん重たくないけど、悠々と台に乗って移動しようとしたピーパーティンとルビィにはイラっとしたので、睨み付けたらリオの荷物の上に逃げた。グラグラしている魔物の山の上で時おり落っこちそうになっているからざまあ見ろだ。


 村に帰れば当然驚かれたが、リオの方はそれほど驚かれていなかった。

「今日も大量だな」

「こりゃ、うちだけじゃ解体できないわね」

 魔物の山を見てもリオの家族はのんびりしたものだ。婆ちゃんは近所に手伝いを頼みに行っている。


「こっちの三匹はギルが獲ったんだよ」

「へー! よくリオについて行けたな」

 リオの親父は目を丸くしているが、完全にリオのおこぼれを貰ったみたいに思われている。能ある鷹は爪を隠すけど、あまりに軽くみられると腹が立つ。


「ついてってない、俺が一人で獲ったんだ」

「うっそだー」

「シルバーウルフって足早いんでしょ」

「ギル、ぶきもってないじゃん」

「嘘じゃねえ、罠張って獲ったんだ」

「すげー! どんなわな?」

「企業秘密」

「きぎょーひみつ?」

 ガキどもがわらわら集まってくる。最初は疑っても俺の話しをすぐに信じる。やはりリオの兄弟だ。素直過ぎてちょっと心配になる。


 婆ちゃんが呼びに行けば村の連中はすぐに集まってきた。

「シルバーウルフがいたのか」

 村長の爺さんもやって来てギョッと眼を見開いている。群れで行動するような魔物が村の近くに住み着いたとなれば、村の守備を考え直さなくてはいけないわけだ。


「うん、でもたぶん全部狩ったよ、近くに他の集団がいる気配はなかったもん」

「逸れもんの集まりがたまたま近くに来ただけだろうな、この辺に住み着いている形跡はなかった」

 これはピーパーティンやルビィにも探らせたから間違いない。村長は安心したようで解体に加わった。


 大物は隣の町の冒険者ギルドにでも持ち込んで丸ごと売るのかと思っていたが、流石は猟師の村。みんな解体道具を持参してきているのを見るに、当然の如くみんな魔物の解体ができるらしい。手伝いの駄賃は魔物肉の山わけだ。


「肉は全部村で食うのか?」

「それは無理だよ、村では保存食にする分も含めてレッドベア二頭あれば充分、残りは隣の町に売りに行くんだ」


 リオの話しでは、明日にでも隣町に売りに行くという。

 肉と毛皮とその他の素材とでは買い取ってくれる店が違う。冒険者ギルドならまとめて買い取って、解体から店へ卸すまで全部やってくれるが、当然ながら手数料は取られるから、村で解体して自分で各店に売りに行く方が儲けは増えるわけだ。


「ギルのはどうする? 今ならみんなついでに解体してくれると思うけど」

 村人は肉と多少の毛皮が貰えればいい。リオの獲ってきた量が多いから、狼三匹分くらい増えたって今更かまわないそうだ。


 俺は別に手数料くらいケチる必要はない。金は持っていないけれど、魔物を売った金から手数料を差し引いてもらえばいい。冒険者ギルドのシステムを見ておきたいとも思う。

 だが、今はそれよりも自分で解体をやってみたい。魔界だと碌な道具もないから結構雑な解体しかしていなかった。人間界だと色んな道具があるから、使い方を知っておきたい。


「俺も解体したい、教えてくれ」

 頼めばリオの爺ちゃん婆ちゃんは快く教えてくれた。


 俺の服が一張羅だと知っているから、エプロンまで貸してくれる。袖まであるからエプロンというより割烹着だ。

 大人用だから大きいし、ごわごわしていて動きづらい。聞けばカバみたいな魔物の皮で出来ているらしい。魔物は体液が酸性だったり、大きくて狂暴な寄生虫が飛び出してくることもある。この割烹着はそれらをものともしない頑丈な防護服なのだ。


 あとは大きなサンバイザーを逆さまにしたような板を首に巻き付ける。飛び散る体液から顔を護るためだ。

 地面に置いた魔物から跳び上がるものを弾くためにこの形だが、とにかく下が見え辛い。本当はゴーグルなどを付けるべきなのだが、ゴーグルにできるような透明で頑丈な素材は高級品だから村にはないという。


 俺は酸性の体液にも寄生虫にも絶対に負けないし、ダークエルフが作った服もたぶんぜんぜん平気だろうが、これも人間式の解体方法を学ぶ一環だ。


 リオの家にあるだけでも魔物解体用の刃物は十種類以上あった。大型の魔物を切り開く大刀や小型の魔物用の果物ナイフみたいなもの、骨から肉を削ぐための湾曲したナイフだとか内臓を開くための細長いナイフだとか、いっぱいあり過ぎて覚えきれない。

 その他にも、皮を鞣すための道具も複数あるし、骨を磨くための道具や内臓を加工する道具等々、家ごとにも道具の形が違ったりそれぞれ使い方に拘りがあったり、いっぺんに全部覚えるのは諦めた。

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