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62.

 まだぜんぜん形になっていないけど、五天王(一名欠席)にくらいは俺の考える魔界の展望を話しておくべきだろう。


「俺はさ、魔界をもっと立派な国にしたいんだよ、建物いっぱい建ってて、飯も美味くて、ちゃんとした法律がある国にさ」


 こんな話をしても、ピンと来たのはヤオレシアとシクランだけだ。ザランとクーランはぜんぜんわかっていない様子だ。


 それもそうだろう。魔物たちは生まれながらに弱肉強食が身に沁みついている。基本的に身体が頑丈だから身を護る服も家もいらないし、力が絶対だから知恵を振り絞る必要もない。それで生きられないのなら死ぬ、それだけだ。

 そんな世界だから、群を大きくしてルールを決めてみんなで助け合って共存しよう、なんて発想は生まれるわけもない。


「国家運営については、私も多少の心得はありますが、建国となると心許ない」

 シクランはやはり元は貴族か王族だったらしい。どれだけ昔の国かは知らないが、支配階級としての仕事もある程度わかるようだ。それでも流石に国造りまでは経験がない。


「だろ、俺も漠然とした理想はあるけど、詳しいことはぜんぜんわからないんだよ」

 当の俺は、小説や漫画で建国物語を読んだことがある程度の知識しかない。勿論、支配階級にもなったことないし、人を使う立場になったことがほぼほぼない。前世で貰った最高位は係長だったと思う。


 だけど、俺はいつまでも原始的な生活は嫌だ。知識がないからって諦める必要はない。俺が嫌なら魔界を変えればいいのだ。俺が変えたいのだから、みんな俺の理想に付き合うべきなのだ。


 何故なら俺は魔王ギルバンドラなのだから。


「だから人間界を見て来る、人間は王様を中心に国を造って道具を作って、何千人もの群れで生きてるんだろ」

「ええ、一千年前は確かにそうだった」

「二百年前までは確かに」

「百年前も確かに国はありました」


 この魔界で最古の知識を持つのはゴーストのシクランのようだ。人の世界からはみ出して魔界へやって来た黒魔導士からもちらほら声が上がる。

 最新情報が百年前というのは心許ないが、一千年前から国家という体制があり、同じ国ではないだろうが百年前まで人間の国はあったというなら、たぶん今も人間国家はまだ滅びずにあるだろう。


「俺がいない間もおまえらは魔界の改造を進めとけ」

 俺もわからないなりに色々計画は考えた。まあ、結局はわからないから、改造の方法をみんなで考えとけという計画を考えただけだ。


「とにかくまずは食糧自給だ、ザランは草原地帯で食える植物の栽培方法を考えろ」

「お任せください」


 一番に声をかけられたザランは得意気に胸を張る。こいつは意外と順位を気にするから、最初に声をかけないと後で拗ねるだろう。

 草原地帯の試験農地はぼちぼち形になってきている。まだ食える植物を植えてみているだけだが、思いの外育つのが早いから、飽きっぽい獣たちでも飽きずに栽培方法を模索している。


「クーランは森林地帯で食える動物の飼育方法を考えろ」

「任せろ!」


 クーランは俺の声に被せ気味に返事をする。ヤル気があるのは良いが、こいつには落ち着きを覚えてもらいたいもんだ。

 森林地帯の試験牧場も見てくれだけは牧場らしくなってきた。相変わらず家畜候補の魔物たちとオーガたちとの乱闘は続いており、家畜を大人しくさせるのは難しそうだが、オーガたちの方が家畜を傷付けずにぶちのめす技術が発達してきている。魔界流の飼育方法と言い張れなくもないと思う。

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