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61.

 大国があるかどうかは置いておくとしても、とりあえず、知っておくべきはまずは樹海の方に接している国だと俺は考えた。


 まだまだ数十年は先の話しになりそうだが、人間の国と交流できるようになったとしても、山越えルートの開拓はほぼ不可能だ。


 樹海も今は人も魔物も越えられない危険地帯だが、入っただけで突然死ぬことはない。人間界から逃れてきたという黒魔導士も、樹海を命がけで越えてきたという。あのポンコツ代表のルビィだって、樹海で迷子になったが運良く魔界まで辿り着けたというのだ。

 現にダークエルフたちが、樹海の中でも工夫して暮らせているのだから、いずれは樹海の中に道を作ることもできるはずだ。


 だが、山岳地帯はもう越えようと思っただけで死ぬ。

 山頂は雲の上だから、まずもって生身の人間が辿り着ける場所ではない。山の魔力が強大過ぎて、逆に魔法も使いづらくなっているから、飛べる魔物たちだって山脈を越えるのは難しい。トンネルを掘るのも果てしなくて現実的じゃない。あそこに生息できるのは、岩食って生きられる巨人や岩蜥蜴などの特殊個体だけだ。


 というわけで、俺だけなら山越えもできるけど、運よく山の向こうの人間の国と仲良くできたとしても、その後の魔界との交流を進めるのが難しいと意味がない。

 でも、今のところ何もかも夢のまた夢だから、人間の国と国交結びたいんだよね、なんてまだ言えない。国交結ぶどころかまず魔界が国とも呼べない有様だし、人間界がどうなっているのかもわからない。


 だから、人間界を見てくるという行動が、魔物どもにはいまいちピンとこないらしい。


「そもそも、なぜ人間なんぞを見に行くのですか、あれらは弱く小さく腹の足しにもならんと聞いたことがある」

 ザランも首を傾げている。獣と言えば行動原理は少量調達と縄張り拡張だ。人間狩って食おうという発想は大変魔物らしい思考回路だが、物騒な考えは少しずつ改めさせねばならんだろう。


「ハンッ、獣は食えるかどうかしか頭にないのか」

 ザランが発言すると、すかさずヤオレシアが嫌味を返す。ヤオはまあ人間界が興味深いどいうのはわかってくれているようだが、やっぱりインテリのふりして性格がヤクザだから、すぐに喧嘩腰になるのはいただけない。


 ヤオレシアとザランは、あの相撲大会の後も顔を合わせれば相撲をする仲になっている。本人たちとしてはあの日付かなかった決着をつけるため戦っているそうだ。今でもバチバチだし会話はいつも嫌味の押収だが、むしろ仲良しに見えるから好きにさせている。


「なんだとぉ……ああ、おまえらはきっと人間とも仲良くできるだろう、弱くて小さいからな」

「なにをぉ、貴様が無駄にデカいのだ、この毛玉が」

「黙れヒョロガリの棒っきれが」

「焼くしか能のない馬鹿猫め」

「喧嘩すんな」


 いくら仲が良くても、会議の場で相撲を始められては困る。ザランもヤオもギラギラ睨み合っていたが、浮かせかけていた腰をどすんと下ろしてそっぽを向いた。


 後ろでガルドとマルウが「いつもうちのがすみません」と頭を下げあっている。相撲の気配にそわそわと真っ先に立ち上がろうとしているクーランも鬱陶しい。会議中は乱闘禁止の命令を予め出すべきだったと俺も反省する。

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