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58.

 石を持って山を下りた俺は、さっそく黒魔導士組合を訊ねた。


 黒魔導士組合の住処は相変わらず草原の隅っこの岩場だ。ここは良くも悪くも何もないから、食料もないが死ぬほどの外敵もいない。静かに魔術の研究をするには打って付けの場所なのだ。

 せっかく魔界は魔力が充満しているのだし、魔法の研究も押し進めたい。いずれは魔術研究所なんてのも建てたいもんだが、今のところ公共事業として実行する順位は低い。


 人間社会ならば医療やインフラに魔法は直結するだろうが、魔界ではそうでもない。

 魔物は基本的に頑丈だし、怪我や病気で死ぬならそれまでの実力だったということで終わるから、医療なんて考えるやつはほぼいない。衣服や住居も必要としない生活だから、インフラなどという概念もない。だから魔術の研究なんて魔界においてはただの趣味、もしくは弱者の小細工でしかないのである。


 そんなわけで、黒魔導士たちは今日も今日とて吹きっ晒しの岩場で自主的に魔術の研究をしている。俺としては魔術研究に携わるやつらは大事にしたいので、訊ねるたびに食料などを持ってきている。


「ようこそお出で下さいましたギルバンドラ様」

「いつもいつもお恵み頂き誠にありがとうございます」

 俺が顔を見せたら岩陰から黒いローブ姿の影がひょこひょこと飛び出して跪いてくる。黒魔導士どもは相変わらず腰が低い。


 今日はそこらへんにいた魔獣の死骸と、そこらへんに成ってた木の実だ。牛よりも大きい魔獣一匹分の肉があれば、黒魔導士どもは一月も食っていけるだろう。

 そうして、持ってきた石や金塊を鑑定させている。


 なんとこの世界にも鑑定魔法なるものがあった。


 前世のファンタジー作品で最も便利な魔法と言えば鑑定魔法だろう。パッと見ただけでゲームのステータスみたいな窓が開き、相手の強さだの特技だの魔法の属性だの、物だったら成分とか効果とかが即座にわかる。とっても都合の良い魔法である。


 だが、現実はそう甘くなかった。

 そりゃそうだ。あんなデータベース誰が作るんだ。数値とかどういう基準で誰が測ったんだ。

 もしも、どこかの誰かが百科事典を作ろうプロジェクトを立ち上げて調べ上げたとしても、もの凄い労力と時間をかけて調べ上げたデータを、魔法が使えるやつ誰でも見れるようになんてするわけがない。


 そんなわけで、この世界での鑑定魔法なるものは、診たものの成分や特性が色や模様で見える。鑑定しようと思ったものの周りに、こうフワフワと色とりどりの雪の結晶が浮かんでいるような光景が見えるという魔法だ。色の濃淡や模様の大きさ、あるいは混色具合や模様の緻密さで、含有量だとか強弱だとかがわかるらしい。

 つまりは、鑑定魔法を使えたとしても、知識と経験がないとなんもわからん。


 当然、俺は鑑定魔法は使えるけど見てもぜんぜんわからん。

 魔法は生まれた時から知っていたし使えるし、身体に刻まれていると言っても過言ではないから、他者の魔力属性や才能や練度、行使された魔法の仕組みだとかは一目でわかる。同じく、物に付与された魔法も読み取ることは出来る。しかし、その物が何でできているかはわからない。


 世の中ままならないもんだ、と溜息を吐いているうちに、鑑定を終えた魔導士どもが大興奮していた。

「魔王様! これはまさしく黄金です!」

「ほぼ完璧に近い純度です! 見てくださいこの美しい結晶の並び!」

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