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55.

 思い返してみれば、数日前に開催した相撲大会は、俺が魔王になって初めて魔界中の魔物たちが集結する一大イベントだったわけだ。


 だから俺は頭を抱えて悔しがっていた。これはダークエルフ村に最初に行った時と同じだ。

 御神木を俺が復活させる時も、もっと大々的に格好良く俺を崇めたてるような演出をして魔王の威光を知らしめるべきだったのに、ホイッと行ってヒョイッと済ませてしまい、終わってから儀式的なイベントにできたことを思い付いたのだ。


 この前の相撲大会もそうだった。ちょっとした親睦会程度に思ってたから、何も計画せずに適当に始めたら、案外と盛況だし好評だし、かなり大きなイベントになってしまい、またもや後からもっと大々的な国家行事にするべきだったと思い付いたのだ。


「これぞ後の祭りってやつだよな」

「そうか」


 今日は山岳地帯で反省会だ。ここはとても静かでのんびりしているから考え事に打って付けなのだ。といえば聞こえはいいが、巨人たちがものぐさ過ぎて静かなだけだ。


 いつもそんなつもりじゃない時にイベントが起きるのが悪い。樹海に入った時だって、ちょっと様子見くらいの気持ちだったのに、いきなり御神木復活イベントが起きた。先日の相撲大会も集まるのは草原の獣と樹海のダークエルフだけだと思ってたのに、なんでか魔界中の魔物が集まっていた。


 そんなつもりじゃなかったんだ、というのも魔王にとっては言い訳に過ぎない。俺はもっと魔王としての自覚を持つべきなのだ。

 魔王が一声かければ魔界中の魔物が集まるかもしれない。魔王が視察に行ったらSS級レアイベントが起きるかもしれない。前世でも自動車教習所では、運転中は「だろう」という気持ちではなく「かもしれない」という心構えでいるようにと教わった。それと同じだ。


 いや、でも常に「自分特別なんで」なんて心構えで生きるのって難しくないだろうか。魔王だとしても、そんな心構えで生きてるやつってウザくないだろうか。

 だから、俺は突発イベントではなく、魔王としてちゃんと計画を立てて国家行事的なイベントを行いたいのだ。


「もっとこうさ、魔王の配下が一堂に集まる魔界の祭事的な、魔界四天王を俺の前に並べてさ、開会式とか閉会式とかやって、あ、草原と森と沼と山と樹海で五天王になるな? なんか語呂悪いな」

「そうか」


 初めに聞いた魔界の現状だと、草原地帯と森林地帯と沼地と山岳地帯の四つのエリアにボス級の魔物がいるということだったから、四天王で丁度よかったのだが、謎に満ちた樹海にもダークエルフ村があり、そこにもボス級のやつがいたから、今じゃエリアボスが五体いるということになってしまった。

 やはりちゃんと肩書とか役職とかを決めて、魔王の配下として格好をつけるべきだろう。その話し合いをするにも、この前の相撲大会は絶好の機会だったのだ。


「だのにテキトウにみんな集まって相撲して、持ち寄った食料分けてなんとなく宴会っぽくなっただけで、勿体ないことしたな~もっと俺を崇め讃える行事にしときゃよかった」

「そうか」


 どうせ俺が一声かければみんな集まってくれるだろうけど、幹部会を開くぞと呼び出して、最初の議題が格好良い組織名や各自の肩書を決めますと言ったら、みんなに呆れられたりしないだろうか。

 そもそも俺がそういう無駄な会議をしたくない。魔王として体裁を整えるのは大事だと思うけど、わざわざみんな集めるならもっと有意義な議題を話し合うべきだ。


 それに、集める場所とかも気にするべきだろう。王様が一つの種族を贔屓するのも良くないし、かと言ってみんな集まれる開けた場所といえば草原地帯しかない。特に巨人たちまで呼ぶとなると、森林地帯なんか歩かせただけで木々が倒れてしまうだろう。

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