53.
一方、今回の親睦会の主役であるはずの片方、草原の獣たちと言えば、既に飽きている様子だ。
ボスがライオンのせいなのか、草原の獣はネコ科が多くてみんな自由だ。一応、群れで行動するから協調性はあるけれど、ボスが見張っていなければ結構気儘に過ごしている。ザランはいつも高みの見物がお仕事だが、奴が見張っているといないとでは獣たちの労働量は格段に違ってくるのだ。
流石に勝手に寝床に帰るようなやつはいないから、たぶん獣たちにもボスを応援する気持ちはあるのだろう。ただ、飽きっぽくて自由主義だから、腹いっぱいになって昼寝しているやつや、じゃれ合って遊んでいるやつなど、やりたい放題だ。
ザランの右腕である黒豹のガルドでさえ、ダークエルフが持ってきた豆が気に入ったのか、観戦そっちのけでエルフたちと話し込んでいる。仲良くなれて何よりだが、それにしても自由だな。
そして、親睦会の主役のもう片方ダークエルフたちも、いつまでも終わらないボス戦にはちょっとうんざりしているようだ。奴らも優雅な見た目に反して血気盛んだし、戦いは嫌いじゃないけれど、オーガほど戦闘狂でもないから、いつまでも決着がつかない試合にあくびをかいている。
「ヤオのやつボコボコになってるけどいいのか?」
俺の方がちょっと心配になってきたから、念のため聞いてみる。
ヤオレシアはタンコブと痣だらけで御綺麗な顔の原型もなく、銀色の長髪もボッサボサ、炎には耐えた服もあちこち破れてボロ布と化している。
対するザランも、自慢の赤い鬣はぐちゃぐちゃのボロボロだし、風の刃であちこち切られて毛が禿げているし、砂まみれの泥まみれのみすぼらしい外見になっている。動きも鈍くなっているから、ヤオのしつこい関節狙いの攻撃が効いているのだろう。
どっちも酷い有様だが、どっちも意地でも負けたくないらしい。泥臭い執念は称賛に値するけれど、ぶっちゃけるとどちらも往生際悪くてみっともない。
しかし、ダークエルフたちは止める気もなく笑っている。笑顔にはちょっと呆れも含まれているようだが、彼らもこうなる予感はあったらしい。
「ヤオ様負けず嫌いだから」
「執念深いしな」
「一度恨んだら千年は恨み続ける方なんです」
「なにそれ恐っ」
ダークエルフでも千年生きるやつは滅多にいないから、つまりは一生恨み続けるということだ。外見はキラキラした美人のくせに、性格はとんでもなくドロドロだった。
ついでに、ちょっと心配だったけど、草原地帯の豪快な焼肉はダークエルフたちの口にも合ったらしい。おもてなし用の高級料理がアレだっただけで、ダークエルフも普段は焼いたイモとか干し肉を食べているのだし、味覚が他と違うというわけではなかったようだ。
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