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50.

 魔力の押し合いでは決着がつかなかった。

 どちらも荒い呼吸を繰り返しているくせに、未だにバチバチ睨み合っている。


 ザランとヤオレシアはしばしの沈黙の後、ほぼ同時に火の玉と風の刃を放った。


 大出力の広範囲魔法を使う力はなくなったが、どちらも完全に魔力切れになるほどではなかったらしい。さっきまでのアホみたいな放出で、むしろ有り余る魔力が良い感じに発散できたようだ。

 ザランの放った複数の火の玉を、ヤオレシアは全て風の刃で切り裂き掻き消す。土俵の真ん中で火の玉が風に巻き上げられ、花火のように膨らんで弾けて消えていく。


「おおっ! 上手い」

「どんぴしゃだ!」

 キャンプファイヤーの周りでまったりモードだった周囲も、土俵内が見えるようになったら感嘆の声を上げる。


 でも、やっぱり飯と酒で良い感じに緩んでいて、最初よりも祭り感が増している。ボス戦だというのにみんな気が緩んでいるのか、からかいの野次も多い。いつも強者の顔色ばかり伺っている岩場の雑魚たちまで野次を飛ばしているから、やつらは後で地獄を見るかもしれないが、今は無礼講だから好きにさせておこう。


 ヤオレシアが放っているのは、原理としてはピーパーティンのウィンドカッターと同じだが、雑魚怪鳥のバタバタととにかく一直線に風を起こすだけの雑な攻撃とは全く違う。

 ピーパーティンのは精度が低いので、鈍刀で切られるように汚い切り傷ができるだけだが、ヤオレシアの刃は切れ味抜群、触れただけですっぱり四肢が切断される。命中精度も高く、舞う方向を自由自在に操れるらしい。


 対するザランは、魔法の操作はヤオレシアに劣るようだが、相変わらず器用なもので、魔法を繰り出しながらも俊敏に動いて物理攻撃も同時に繰り出している。

 デカいというだけでも脅威なのに、スピードも合わさるとえげつない攻撃力だ。それにそもそもの身体の強度が高いのか、ふさふさの毛の防御力が高いのか、ヤオレシアの風の刃を受けても致命傷にはなっていない。


 駆け回るザランに、ヤオレシアは縦横無尽に跳び回って応戦する。どんどんスピードも上がっているから、結局、結界内を覆う炎が無くなっても選手の姿は残像くらいしか見えない。


 だが、そこかしこで火の玉と風の刃がぶつかっては弾け飛ぶから、花火のようで見ごたえはある。キャンプファイヤーの後は打ち上げ花火、セオリー通りに祭りは進行している。


「というか、土俵の外へ出せば勝ちなのに、あいつら相手を屈服させることしか考えてないな」

 技術も威力も大したものだが、肝心の相撲のルールが疎かになっている。お互いに頑丈だから無事でいるものの、あれでは殺すのは駄目というルールも忘れている可能性がある。


「絶対に死ななそうだから良いんじゃないっすか」

 なんも考えていなさそうなピーパーティンの言う通り、ザランもヤオレシアも殺しても死ななそうだし、なんなら魔物だから死んでも復活しそうだ。

 しかし、俺の言う「殺すな」とは「殺そうとするな」という意味であって、どうせ死なないだろうから殺しに行ってもいいだろうという考えではいかんのだ。


 ピーパーティンは既に相撲観戦に飽きたのか、小鳥の姿になって延々と煎りマメを突いている。こいつは肉も魚も食うけれど、穀物が一番好きみたいだ。それにしても隣からポリポリポリポリうるさい。

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