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49.

 それにしても、結界の中の炎が治まらない。


 イモの話しだけでも随分と盛り上がり、手探り農業の改善点がいくつか見つかったおかげで、すっかり相撲の取り組み中だということを忘れていた。

 目の前の炎はキャンプファイヤーではなく列記とした魔法バトルだった。しかし、バーベキューには良いのだが、そろそろ食材が焦げてきそうなので火力を下げてほしいものだ。


 そんな俺の気持ちが伝わったのか、最早白から青へと変わりそうだった炎が竜巻に掻き消されるように消失した。


「おっ! ヤオ様の風が勝ったか」

「いいや、あれは炎で巻き上がった風だ!」

 バーベキューに夢中になっていた獣たちとダークエルフたちも、ボスたちが戦っていたことを思い出したらしい。すっかり一緒に飯を食って意気投合している。


 炎のせいで何も見えなかった土俵上が見えてきた。初めは多少なり草の生えていた地面が真っ黒に焦げている。高温過ぎて煙も上がっていなかったけど、温度差で蜃気楼のように靄のかかる結界の中に三つの影が立っていた。

 一つは赤い毛並みの大きな獅子の影、もう一つはひょろりと背の高い人型の影、もう一つはぴょんぴょん動き回る角のある影。

 勿論、ザランとヤオレシアだ。どちらも疲労は見えるけれど傷一つなくたっている。

 あと、素っ裸のクーランだ。


「魔力切れか……あ、ズルい!」

 毎度恒例、服が焼き切れたクーランだったが、平然と審判業を勤めていたらしい。炎が明けると同時に土俵の外でバーベキューをやっていたことに気が付いて、近くに立てられていた魚の串焼きをひったくっている。審判なので結界から出ても問題ないが、食いながら審判をするのは態度に問題があると思う。


 毎度のことなのでクーランがすっぽんぽんになっても誰も気にしていないが、今日は服を着るという文化を持つダークエルフもいるのだ。ちょっと心配になったが、ダークエルフのみなさんも全裸のオーガに特にこれと言って反応はない。俺は一安心したけど、これは安心していい反応ではないな。今後の課題だ。


 ザランは元より火属性モンスターだから火に強いのは当然だが、ヤオレシアが全く焼けていないのにはちょっと驚いた。全力の風魔法を展開しながら結界で身を護っていたのだろう。衣服も焦げ一つないのは蜘蛛糸の毒染めで耐火や耐熱の効果を付与しているのだろうが、それでも無傷というのは凄い。


 ザランの金色の角が溶けそうな金属みたく光っているのを見れば、結界の中がどれほどの高温だったかわかる。そんな中でもヤオレシアは服だけじゃなく肌も髪も焼けていないのだから、防御魔法も並外れている。攻撃と防御を同時に熟して魔力切れはザランとほぼ同時ということは、魔力量はヤオレシアの方が上なのかもしれない。


 クーランについては、例の如く焼けた端から回復魔法を使って再生し続けていたのだろう。こちらも相変わらずの生命力だが、もう少し配慮とか繊細な魔法とかを覚えるべきだ。


「ハッ、魔力量だけは認めてやろう、魔力量だけは」

 ザランも魔力量だけはヤオレシアの方が上だと認めたが、そもそもザランは頑丈なので防御魔法など必要ない。炎の中で結界魔法を絶やさなかったヤオレシアのことを、貧弱だと馬鹿にしているようだ。


「そっちこそ火力だけは大したものだ、火力だけは」

 ヤオレシアもザランの炎の前では物理攻撃までこなす余裕はなかったようだが、それはザランも同じこと。防御を捨ててもヤオレシアの風魔法の前では距離を詰めることができなかったのだから、どれだけ火力があろうとも結界で防いでしまえば意味はない、とヤオレシアは嘲るように笑っている。

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