47.
これは親睦会だから、相撲以外で親睦を深めたっていいのだ。どうせメインイベントの相撲はキャンプファイヤーと化していて見えないのだから、無駄に大きな炎を有効活用したっていいだろう。
「じゃあ魚も焼こうぜ」
「スープも温め直そう」
続くようにオーガたちもわらわらと持参した食料を出してくる。酒を持ってきた時点でわかっていたが、こいつらは完全に遊びに来たつもりらしい。自分たちの分よりも多く食料を持ってきているのは褒めてやろう。
俺の結界でかなり熱は抑え込んでいるけど、結界の間近は高温になっているから、獣たちは手頃な岩に乗せた肉を木の棒で土俵際へと押しやる。オーガも木の棒を箸のように使って、串刺しにした魚を器用に土俵の周りに立てていく。その様はまさに石窯に食材を投入するがごときだ。
「イモも焼くか」
「豆もあるぞ」
更にダークエルフたちは「え? そんなことしていいの?」という顔をしていたが、次々に出てくる食料を前にして、自分たちも何か出さないと悪いと思ったのか兵糧を出してくる。こいつら意外と協調性がある。
さっきまで巨大な火柱にビビっていた連中が、あっという間に慣れて和気あいあいと料理を始めている。料理と言っても持ってきた食材を焼くだけだが、バーベキューと言われればそう見えなくもない。
そうして、土俵の結界の傍には串に刺した魚が立てられ、フライパン代わりの石の上に肉が並び、鍋やら壺やら耐熱性の器があるだけ置かれた。
獣とダークエルフの長同士の最終決戦が、すっかり竈扱いされている。炎に溢れた結界を中心にじゅわじゅわパチパチ食材が焼ける光景は、何の儀式だよとツッコミたくなるような奇祭になってしまった。
しかし、美味しそうな匂いの前には、些末な違和感などあってないようなもんだ。
「ま、いっか」
俺は酒を飲みながら、肉や魚の焼ける匂いに全部どうでもよくなった。親睦会でバーベキューを始めて、ちょっと乱闘しているやつもいる、それだけだ。なんの問題もない。
ダークエルフの持ってきた食材は完全に保存食だろうが、こうも肉魚ばかりが揃った状況ならば、イモやマメなど主食になるものを提供したのはグッジョブだ。
「そういえば、イモでも酒って造れるんだよな」
前世ではイモ焼酎とかあったけど、この世界でもあるのだろうか。イモがあるのなら作れると思うけど、如何せん俺は作り方を知らない。
それに、まず酒にするより食料にする方を考えなければいけない。
そこへ丁度、焼きたてのイモが俺に献上される。本当はバーベキューは焼く方も楽しくて好きなのだが、今の俺は一番偉いので、偉そうに部下が焼いて持ってくるものを待つのも魔王の仕事なのだ。
塩かけただけだがホクホクのイモ美味い。ダークエルフの村でも食べたことがあるけど、触感はジャガイモに似ていて大きさはサトイモくらいで、味は結構甘みがある。バターかけたら美味しいだろうなと思うけど、残念ながらそんな高度な加工食品はない。
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