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45.

 次はいよいよザラン対ヤオレシア戦で、会場は最高潮に盛り上がる。とうとうオーガらへんからどちらが勝つかの予想ゲームが始まっているから、相撲の勝敗で賭けが行われる日もそう遠くはないだろう。


「ギルバンドラ様はどちらが勝つと思います?」

 ルビィが面白そうに隣から聞いてくる。第一子分らしく俺に酌をしている、と見せかけてちゃっかり自分も飲みに来ているだけだ。こいつは酒もいける口だし、たぶん賭けの概念を知っている。


「賭けはしないぞ」

 先手を打っておくと、何を企んでいたのか知らんがルビィは舌打ちする。今は酒を飲むために黒猫ではなく少女の姿をしているから、どうにも絵面が悪い。


「うーん、戦闘慣れしてるからザランが勝ちそうな気がするけど、和睦を進めるためにはヤオに勝ってほしいし、でもあいつも調子乗りそうだから、やっぱザランが勝ってもいいかな」

「結局どっちでもいいんじゃない」

 先手を打たなくても賭けにならなかった。ルビィは詰まらなそうに言うけれど、俺はどっちが勝っても負けても構わないのだ。なにせこれは親睦を深めるための相撲大会であって、雌雄を決するのはオマケでしかないのだから。


「ちょっと土俵を広げるぞ、どけどけ」

 ザランとヤオレシアが土俵に上がると、最初に設定した土俵が随分と小さく見える。特にザランは大きいし範囲魔法も使うから、結界を少し広げることにした。ヤオレシアの魔法はあまり見たことはないが、こちらも風魔法を使うというからフィールドは広い方がいいだろう。


 俺の声にみんな素直に移動する。オーガとスケルトンが協力して皿を運んだり、ダークエルフと獣人が声を掛け合ってテーブルを運んだり、同じ飯を食うと親睦が深まるというのは本当らしい。

 ゾンビとゴーストは少し離れた風下に固まっている。ゾンビは単純に臭いし、ゴーストが近くにいるとどうしても辛気臭い空気になるから、やつらなりに気を遣っているのだろう。


 広くなった土俵に赤い獅子と銀髪の戦士が向かい合う。なかなかに絵になる組み合わせだ。しかも火魔法の使い手と風魔法の使い手というなら、共闘すれば相性は抜群なのではないか。あいつらがいがみ合っているのは勿体ない。


「図体がデカいだけの猫が」


「ひょろひょろの引き籠りめ」


 勿体ない、けど向かい合っただけでバッチバチに睨み合い空気は一瞬で張り詰める。代々の因縁というか、お互いにプライドが高い似た者同士だから、同族嫌悪なのかもしれない。


「本当に勿体ないやつらだな」

 俺は改めて作り直された魔王用の席にふんぞり返る。最初に座っていた岩も土俵の中に入ってしまったが、なんでも有りの魔界流相撲は土俵内の障害物を有効活用するのも有りだ。

 今日はザランがいないので、フカフカの毛皮の絨毯とクッションで我慢している。岩がないとみんなと同じ高さになるが、別に高いところに座らなくても俺が魔王であることに変わりはない。


「両者、準備はいいな」

 あの張り詰めた空気の中にも入っていけるから、やはり審判はクーランに任せて正解だった。


「よーい、初め!!」


 気合の入った声と同時に、土俵の中に大きな火柱が立った。


 結界の天井も高くしておいてよかった。ザランが放った火魔法が、ヤオレシアの放った風魔法で増幅されて結界中が火に包まれたらしい。

「……魔法の相性とか考えろよ」

 俺は呆れ顔で巨大な炎の柱を見上げた。結界は俺が張っているからこれしきでは破られないが、外側で観戦していた連中も思わず悲鳴を上げたり後ずさっているやつもいる。

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