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41.

 岩場の雑魚どもが食料集めのためにあちこち駆け回ったせいで、いつの間にか話は魔界中に広まっていて、会場にした草原には何故か獣たちだけじゃなく、森林地帯のオーガや沼地のオバケたちまで集まってしまった。

 ちなみに、草原地帯を会場にしたのは、単純に樹海の中は相撲ができるほど開けた場所がないからだ。あんな密林の中でザランの火魔法など使われたら大規模火災になる。


 流石に山岳地帯の巨人たちは出てきていないが、何故だか大集結してしまった子分たちを見渡して俺は途方に暮れた。こんな集まるなんて聞いてないから何の準備もしてないんだけど。


「俺は食料を集めろって言ったよな?」

 俺が睨み付けると、岩場の雑魚どもはギュウギュウ身を寄せ合って震え上がる。身を寄せ合っても雑魚は雑魚だし隠れられてもいないから意味はない。


「そうですが、我々だけでは食料など集まらなくてですね、他の連中にも手伝ってもらおうと思ったら……こんなことに……」

 こういう時に矢面に立たされるのは相変わらず蜥蜴男魔導士のシングーだ。別に岩場の代表者というわけではないのだが、岩場の他の連中が弱いだけでなく頭もよろしくないので、最低限でもまともに喋れるシングーが前に出るしかないのだ。もうシングーに岩場代表の肩書をくれてやろう。


 本当に岩場の雑魚どもに食糧集めを命じた俺が悪かった。元から食いっぱぐれているやつらの寄せ集めにそんなことできるわけなかった。


「フハハ! 我の勝利を祝うに相応しい場だ!!」


 今日の主役であるザランは良くも悪くも俺様な性格だから、当たり前のように自分のためにみんな集まったと思い込んでいる。まだ戦ってもいないのに大勢の前で勝利宣言するとは、こいつは慎重さというものを学ぶ必要があるだろう。


「流石はギルバンドラ様、大々的にダークエルフどもをコテンパンにして従わせようという作戦ですね」

「ちげーわ」

 草原の獣の中で一番冷静なガルドですらこれだ。再三親睦会だと言っているのに、ダークエルフを吊るしあげる会だと思い込んでいる。


 しかし、俺が企画して大々的な祭りを開いたと思い込まれているなら、今更そんなつもりありませんでしたと言い張るのも微妙だ。ここは魔王らしく「俺が一声かければみんな集まっちゃうんだよね人望があってまいっちゃうぜ」みたいな態度でいるべきだろう。魔界だったら人望じゃなくて魔望と言うのだろうか。


「はあ、しょうがない……そこに土俵造るからちょっと避けろ」

 何にも用意してなかったから、俺はとりあえず相撲の準備を始める。

 そうすれば集まった連中も各自で勝手に観戦の準備を始める。と言っても、テーブル代わりの板を置いたり、敷物らしきものを敷いて、テキトウな場所取りをするだけだ。

 岩場のやつらがせっせと作っているのは、たぶん俺の玉座だ。土俵真ん前の岩の上に立派な毛皮の敷物を敷いているだけだが、一番見やすいところを押さえているのはいい仕事だ。


 ゾンビやスケルトンたちが玉座の近くを整えているのはシクランの指示だろう。こういうお祭り騒ぎに一番無関心そうなシクランまで来ているのが意外だ。


「スケルトンたちが相撲を見たがりましたので」


 シクランはあくまで引率という顔をしているけれど、土俵の真横の見やすいところを陣取っているから、こいつも実は結構楽しんでいるのではないか。お淑やかな態度を装っても少女のような顔からしてワクワクを隠しきれてない。


 沼地の連中は普段あまり霧の中から出たがらないけれど、別に出られないわけではない。ただ、日差しの強い日などは陽の気が強くなるとかで苦手らしいので、昼間沼地から出る時は陰の気の塊のようなシクランが引率するという。

 夜ならば、ゾンビもスケルトンもゴーストも割とどこへでも徘徊している。夜中にどこからともなく聞こえてくる悲鳴は、運悪く夜道でオバケに出くわしてしまった魔物の声だ。

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