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4.

 生後0日で二匹の魔物を倒したことになるが、収穫は二匹の子分と、風を吹かせる魔法とエロい夢を見せる魔法を覚えただけ。


 ぜんぜんダメだ。まさかここにいるやつら全員こんなヘッポコじゃないだろうな。

「次、そこの黒いローブの……誰でもいいから来い」

 魔物らしいやつは一旦置いておいて、俺は黒魔導士に声をかけた。見るからに魔法を使いますよと言う外見がただの見掛け倒しだったら、ここでの力試しはちょっと考え直そうと思う。


「待ってください、我々は肩身の狭い魔導士なのです、人間界では神聖魔法以外は邪教として弾圧され、力が第一の魔界では魔法を極めるものなど軟弱とされ、追われた者たちが寄り集まってできたのが魔導士組合なのです、力無き我らは魔王様におんぶ、いえ魔王様のお力になりたく……」

 ローブから蜥蜴っぽい顔が覗く魔導士が低い腰で訴えかけてくる。爬虫類の歳なんてわからないが、声からして年配っぽいからこいつが黒魔導士のリーダーなのだろうか。

「わかったわかった、全員まとめてかかってこい」

 別に取って食いやしないからそんなに怯えられても困る。それに弱者を気取るならもう少し慎ましくあるべきだ。俺におんぶに抱っこで守ってもらおうという魂胆を隠せていない。まったくもって強かで潔いやつばかりだ。


 黒魔導士どもは本当に遠慮もなく全員で岩の舞台に上がって来た。二十人ほどで、どいつもこいつもローブで顔を隠しているけれど、人間界で弾圧されたというからには人間か元人間もいるようだ。

 岩の上だけでは少々手狭なので、俺は円を舞台の外側まで広げた。


「それでは魔王様にご覧に入れましょう、我々の最強魔法!! 大魔神召喚!!」


 さっきまで弱弱しく背中を丸めていた黒魔導士どもが、全員で輪を作り、大声で何やら呪文を唱え始めた。

 発動に時間がかかるのは実戦では致命的だが、今は戦いが主目的ではないから、俺は突っ立たまま大規模魔法の見物に専念した。ようやくまともに見られる強力な魔法だ。

 黒魔導士たちの輪の中に複雑な魔方陣が浮かび上がる。世界中を見渡す魔法、力を量る魔法、空間を繋げる魔法に対象を縛り付ける魔法、成程、その名の通り大魔神を召喚しようとしている。

 大魔神の定義はわからないが、とにかく力の強いやつを呼び出して首輪を付けて従えるつもりらしい。強いやつに全部任せようという魂胆が一貫している。


 しかし、高みの見物を決め込んでいた俺は、突然落とし穴に落ちるように足を引っ張られた。


 次の瞬間には、黒魔導士たちの輪の中心に立っていた。


 そりゃあ、手近にいる一番強いやつと言えば、俺だ。

「成程、召喚したやつと戦わせると見せかけて俺を縛る作戦だったのか」

 全身を見えない紐で縛られるような感覚がある。召喚された時点で召喚主に絶対服従となるのは、召喚術の基本だ。これを応用して俺に言うことを聞かせるつもりか。


 だが、巧妙な作戦に唸っている俺の傍で、黒魔導士の誰かが「あ、やべ」と呟いたのが聞こえた。周りのやつらが肘で突いて黙らせているけれど、口にした時点でもう誤魔化せない。

 俺を召喚しちゃったのは不測の事態らしい。感心して損した。

「ふ、ふはははは、掛かったな! これで魔王も我々の意のままよ!!」

 リーダーの蜥蜴男が気を取り直して最初からこれが狙いだったことにしようとするが、魔王を拘束するつもりだったのなら、契約魔法が甘過ぎる。

「召喚魔法で呼び出せるのは格下の相手だけ、だからこそ契約魔法も効力を発揮する、俺が今召喚されたのは気を抜いてたせいと、あと、たぶん近過ぎたせいかな」

 だから、誤って格上の相手を召喚してしまうと契約魔法が効かず召喚主は殺される可能性がある。


 俺はサクッと契約魔法を解除した。黒魔導士どもはギョッと目を丸くしている。どうして魔王を支配できると思ったんだ。こいつら結構自信家なんじゃないか。

「負けました~~!! 御見それいたしました~~!!」

 最強魔法がサラサラ呆気なく消えていくのを見送って、魔導士たちが勢いよくその場に土下座した。

「我々は魔法の研究が趣味なだけの取るに足らないムシケラなのです魔王様の覇道のお邪魔はいたしませんからどうかどうかこのムシケラどもにご慈悲をどうかどうか」

 俺を召喚した時にちょっと調子こいてしまったから、蜥蜴男は弁明に必死だ。魔王を召喚できただけでもかなりの実力だと思うから、そこまで自分を卑下することもないだろうに。

「まあ、いいよ、合格」

 あまりに哀れなので追い出し辛い。魔法には詳しそうだからたぶん使えるだろう。




 他の奴らは似たり寄ったりだった。

 どいつもこいつもはぐれものらしく戦闘力は低かったが、これだけ多種多様な雑魚が集まれば、そこそこ色んな魔法や特技が見れて勉強にはなった。


 最終的には一発芸大会みたいになって、俺に気に入られるために魔物たちはなりふり構わなかった。

「可愛いものになれます!」

「俺も可愛いものになります」

「私も」

「オラも」

 そう言って次々に変身していくが、猫や兎や小鳥になっても、目がギョロギョロしてたり、手足が多かったり、皮膚が生々しかったりして、小さくなるだけで可愛さをぜんぜんわかっていない。ピーパーティンとルビィは実はかなりの実力者なのかもしれない。


 果ては、二足歩行の黒い鼠みたいなものとか、青い狸みたいなものとか、オーバーオールを着た白猫みたいなものとか、変てこな生き物になるやつらも出てきた。どれもこれもなんだか見覚えがある。

「うっ……前世の記憶に靄が……何らかの規制がかかっているように……」

 よく思い出せないけれど、何故だか明確にわかることは、どいつもこいつも何かのパチモンのようにクオリティが低いということだ。


「もういい、みんな採用だ、今日から全員俺の子分な」

 こうして俺は大量の子分を手に入れて、少しは魔王らしくなってきたと思う。

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