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27.

 森林の方でもやることは草原地帯と同じだ。

 戦闘員は狩りをして飼育できそうな生き物を選定、非戦闘員は採集して栽培できそうな植物を選定だ。

 ついでに森林地帯のオーガは動物の皮を鞣す技術はあるから、革製品の考案も命じている。今のところ鞣し皮はそのまま腰巻にしかしていないからな。


「相撲しようぜ!!」

 森林地帯に踏み込んだ途端、クーランが土煙を上げる勢いで走ってきた。魔王を出迎える姿勢はいいが、彼にはもう少し落ち着きを持ってもらいたいものだ。

 しかし、これは最早毎度恒例、挨拶みたいなもんになっている。


 予想外に、というか戦闘狂のオーガなら予想できたことだが、森林地帯では空前の相撲ブームになっている。何かしら決をとる時や、喧嘩になった時や、暇な時、オーガたちはとにかく相撲を取っているらしい。

 更に予想外な効果として、相撲が流行っているおかげで殺し合いが格段に減ったという。今までは喧嘩や決闘は死んだ方が負けというルールしかなかったが、土俵から出た方が負けというルールが導入されたことで、死ぬまで戦う必要が無くなったのだ。

 これは非常に良い傾向だ。俺の魔界文明化計画には殺し合いの禁止は必須、このまま少しずつ殺し合いを減らしていければ法整備も楽になるだろう。


 それはそれとして、俺はクーランの申し出を却下した。

「まずは仕事だ」

 子供のように相撲しよう相撲しようと騒ぐクーランを無視して、俺は森林地帯に改めて踏み込んだ。クーランは背後で膨れ面をしているが無視だ。魔王は遊んでいる暇はないのである。


「前回の狩の成果はこちらに、牧場の進捗は順調ですが、畑の開墾は……」

 クーランに代わって側近の大きな黒鬼のズーロが真面目に説明してくれる。こいつは大きくて荒々しい外見をしているが、たぶんオーガの中で一番繊細で真面目なインテリ系のオーガだ。魔物を見た目で判断するのはいけない。クーランなんて顔だけ見れば爽やかイケメンだけど、性格は一番暑苦しくてガサツだ。


 森林地帯は、元からオーガが狩のために狼や猛禽類などを飼育していたノウハウがあるから、牧畜は結構進んでいる。

 肉が美味いという牛みたいな魔物やイノシシみたいな魔物を一か所に集めて飼育を試みている。しかし、魔物は魔物なので気性が荒いのが難点で、柵で囲ってもすぐに壊してしまう。

 今は戦えるやつらが交代で見張りに立ち、大人しく飼育する方法を模索中だ。なので柵の中では常に魔物が走り回り、オーガが追いかけ回し、投げ飛ばしたり投げ飛ばされたり、闘牛みたいなことが繰り広げられている。

 だが、これも意外なことに、俺が喧嘩は控えろという命令を出したことで力が有り余っているオーガたちにとって、家畜との格闘が良いストレス発散になっているらしい。

「今は殺さずに戦意を挫く方法を探しています」

「そうか」

 まるで牧畜らしからぬ台詞だが、魔物の飼育はまだまだ手探りなので仕方がない。


 一方の農作物の栽培については難航していた。

 なにせ森林地帯はその名の通り木々が生い茂っているから、畑を作るにはまず木をどうにかしなければならない。それに丘陵地だから、水を引くにも高低差を考えなければならなかった。

「やっぱり、草原地帯は農業、森林地帯は牧畜にした方がいいのかな~……」

 草原地帯ならだだっ広い平原だから、耕せばどこでも畑にできそうだ。でも、森林地帯の方が植物の種類が多いから土壌は良いんじゃないかと思うが、木だって立派な資源だから無暗に伐採するのは勿体ない。

 なんにせよ、せっかく地形も気候も違う地域が隣接しているのだから、同じ方法で植物を栽培することもないだろう。何か果樹とかキノコとか、森林地帯では森林をそのまま畑にするような方法を考えればいい。


「とりあえず牧場はこのまま頑張ってくれ」

「わかりました」

 俺は第一次産業なんぞテレビで観たくらいの知識しかないから、いい方法なんてぜんぜん思い浮かばない。そもそも魔物とか魔法とかある世界で、前世の知識が通用するかもわからないし、地道にやってりゃ子分たちがなんかいい方法を思い付くかもしれないしな。


「話は終わったか、相撲しよう」

「終わったかじゃないんだよ、おまえがボスだろうが」

 本当はこういう報告をするべきはボスのクーランなのだが、今やこいつはただの相撲馬鹿だ。ジト目で睨みつけてもどこ吹く風、広い場所に嬉々として土俵を描いている。オーガは飛行はできないから地面に円を描くだけで充分なのだ。


「クーランは一番獲物を捕まえてますし、牧場にしている更地も、クーラン一人で木々を根こそぎひっくり返して作ったんで」

 ズーロがフォローしてくれる。一応、ものすごく大雑把だがクーランも仕事はしているらしい。ザランと言い、ボスはとにかく力だけが取り柄になってしまうのは、魔界だからしょうがないのだろうか。それでも、ザランはまだ俺がいる時くらいはボスっぽく振舞っているぞ。


「一回だけだからな」

 俺は仕方なく土俵に立った。

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