はじまり
この世界には人ならざるものが存在している。
日本に妖怪の、海外では悪魔の伝承が多く存在することもその根拠かもしれない。
だが確かに霊的な何かは存在していて、人を害している。それらは妖怪か悪魔か、はたまた神か。
答えはそのどれでもない。
呼び名はなんでも良いが僕たちは怪奇と呼んでいる。
怪奇は人の心から生まれる。
恐れ、悲しみ、絶望、愛情、喜び。あらゆる心から生まれ人に取り憑く。
奴らが何のために生まれ、何のために人を傷つけるかは分からない。だがそれらが存在しているのは事実。
怪奇に苦しむ人間は数えきれない。
だから僕は立ち向かうことにした。
全てとはいかないが、せめて僕の手が及ぶ範囲で助けようと思う。二度と下手を打たないためにも。
1人では無理だ。だから僕はとある少年を頼ることにした。
彼は鴉の怪奇に取り憑かれている。だがその怪奇を
己の力として扱うことができる。
彼は正義感が人一倍強く、真っ直ぐな心で人助けをしている。
彼はこれから数えきれない怪奇と出会うことだろう。
僕はそれを時に手助けし見守ろうと思う。それが彼をこの世界に引きずり込んだ僕にできる償いってやつだ。
でも僕が出しゃばりすぎてはいけない。それが彼の成長のためでもある。彼には1人で霊媒師として生きていけるようになってもらいたい。
それにこれは、彼と鴉の物語、いや、奇譚なのだから