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これがお仕事・・・・・・

 初めての依頼から数日後。

 まだ私はゴブリン退治の件を引きずっていた。

 夜、部屋で一人になると、あの死体の顔を思いだして眠れない。

 唯一、1日おきでの事務所のソファーではちゃんと眠れた。


(何が違うんだろう?)


 私は寝不足気味でフラフラになりながらも、なんとか事務所のソファーに座っていた。


「調子悪そうだな、きちんと眠っているか?」

「・・・・・・いいえ、魔物の死体を見たのは初めてで」


(でも、あの程度のことで眠れなくなってたら冒険者になんてなれないんだ!)


 帰りの馬車で聞いたのだが、ゴブリンというのは、少し武器の訓練を受けた大人でなら倒せる、くらいの強さらしい。

 ただ、数が多いので囲まれると危険な魔物だそうな。


「そういう時は・・・・・・」


 セローさんは、後ろの鍵付きの小さな金庫を開けて金属の箱を取り出す。

 金庫には札束がチラリと見えた。

 箱の中から三角に折られた紙を取り出す。数は3つほど。

 よくある風邪の時に飲む薬が入ってるやつだ。

 私は受け取って、スカートのポケットへ入れる。


「眠れないときに1つずつ飲むといい。数時間、よく眠れる」

「ありがとうございます・・・・・・」

「慣れないことをしたときによくあることだ。気にするな」

「仕事もこねーし、気晴らしに街でも歩いてこいや」


 ジェスタさんが気をつかってくれているらしい。

 お言葉に甘えて、少し外を歩いてこよう。

 私が立って、外に出ようとすると、


「今日の給料をあげるから、それで色々買って、ついでに部屋に置いてくるといい」


 ありがたく頂戴して、私は部屋に必要な雑貨を買いそろえて部屋に置いてきた。

 これで当面の買い物はいらないだろう。

 私が事務所に戻ると、


「そろそろ今年もやるんかね?」

「やるんじゃないのか、実力試験」


(なんの話だろう?)


「金はいいけどな~、演技するのがめんどくせぇ」

「戻りました」

「おかえり」


 そうして、私はまたソファーに座ってうつらうつらと船をこぐ。


「レイチェル、帰っていいぞ」


 セローさんに肩を叩かれ、帰宅を促される。

 どうせ眠れないのだから、今日は貰った薬を飲んで寝てみよう。

 シャワーを浴びて、寝巻に着替えてから布団へ入って目を閉じる。

 やはり眠れない。

 薬を1包、水で流し込む。

 数分後には強烈な眠気で、私は意識を手放していた。


(よく眠れた! すごい!)


 朝日が当たると同時に起きて、歯を磨いて、顔を洗って、服を洗って、干して、支度をして部屋を出る。

 いつぶりかのとても晴れやかな朝を迎えた。

 適当な店で朝食を摂った。私はスキップ交じりに仕事場へ向かう。

 

「おはようございまーす」

「おはよう」


 ジェスタさんが挨拶を返してくれる。

 セローさんは羽ペンを使って書き物だ。


「おい、次の依頼が来たぞ」

「なんですか? 私、調子がいいのでなんでもできちゃいそうです」

「昨日まであんな調子だったのによくいうぜ」


 セローさんが書き物を終えたらしく、


「来週、ギルド対抗の実力試験前の前座に俺たちが出ることになった」

「はい?」

「3対3の戦いで、対戦相手は・・・・・・ 王国騎士団5番部隊」


(なにそれ? 騎士団の人たちと戦うの?)


「もちろん出場するのは、この3人でだ」

「・・・・・・私、人に向けて魔法を使ったことないんですけど」

「別に負けるから、人数合わせで誰でも構わん」

「えっと、負けるってことは、斬られたりする?」

「ああ」


(無理、無理、無理、痛いのはやだ!)


「報酬金は一人、10000ゴールドだ。今回は全額、お前らに渡す」

「やる、やりま~す」


 私は目の色を変えて返事をする。


(ちょっと斬られるだけで3か月は暮らせるお金!)


 私たちは王国騎士団との模擬戦をすることになったのだった。

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