初めての仕事
「おい、ゴブリンの巣を壊滅させろって依頼が来たぞ」
戻ると、ジェスタさんにそう言われる。
セローさんは留守らしい。
「ゴブリン?」
「小鬼だよ。そんなことも知らないのか?」
「・・・・・・知りません」
(巣を壊滅ってことは、ネズミとかみたいなやつかな?)
「そういえば、お前、冒険者志望なんだろ? カードは持ってんのか?」
「昨日、作りましたよ」
「見せてみ」
私はジェスタさんへカードを渡す。
「お前、レベル3って・・・・・・そりゃゴブリン知らないわけだわ」
私の手にカードを放ってくる。
(なんか馬鹿にされてる!)
「そうは言いますけどね。私だって魔法が使えるんですよ!」
「へー。すごいすごい」
(なんかイラっときた)
「じゃあジェスタさんはレベルいくつなんですか!?」
「71」
「へえ。ずいぶん偉そうに言うんですね!」
「お前、71レベルっていうのはな」
そこでセローさんが背負い袋いっぱいに荷物を持って部屋へ入ってくる。
「ちょうどよかった、レイチェル、依頼がきたから君も同行してくれ」
「もちろん、お手伝いします」
(色々やって、とにかく経験を積まなきゃ)
セローさんは、手際よく荷物を仕分けしていく。
今回の依頼に使う物なんだろう。
「あのー、私はなにをすれば・・・・・・」
「馬車で食べる食料と、行動食を買ってきてくれ」
セローさんが100ゴールドの硬貨を放ってくる。
「釣りは君が防具を買うといい。動きやすい革のやつがいいだろう」
「食べ物は干し肉とかでいいですか?」
「それでいい」
「わかりました。行ってきます」
「君が買ってくるころには他の準備が終わっているはずだ」
私は日持ちする食べ物を買いに行く。
干し肉、干し魚、乾パン、漬物とかを30ゴールド分くらい。
(残りで革の鎧を買えばいいんだっけ?)
私は防具を売っているお店で、
「すみません、ゴブリン? を倒しに行くので、革の鎧が欲しいんですけど。予算65ゴールドで!」
そう言って軽くて動きやすいやつを見繕ってもらった。
簡素な革でできた胸当てだ。
お代は限界いっぱいの65ゴールド。ついでに自費で着替えを1セット買った。
今着ているシャツの上から着られる防具だから楽だ。上半身だけだから、腰に差している短杖の邪魔にもならないし。
買い物を終えて事務所へ戻る、大体昼前だ。
「戻りました」
「じゃあレイチェル、出かける準備はできているか?」
「たぶん行けると思います」
「では行くとしよう」
私たち3人はそれぞれの荷物を持って馬車乗り場へ向かう。
私は全員分の食料と着替えに防具。
ジェスタさんは大き目の背負い袋だけ、セローさんは背負い袋と短い両刃の剣を鞘に入れて腰に差している。
「目的地はコビの村、ここから馬車で半日と近い」
「そんなに近いのに、誰か他の人がやらないんですか?」
「手間のわりに報酬金が少ないから、みんな受けないんだとよ」
セローさんは馬車の交渉へ向かっていた。
私はジェスタさんと話がまとまるのを待っている。
「これって面倒な依頼なんですかね?」
「いんや。どうせいつものやつやるだけだし。ウチは真っ向勝負なんてしねぇから」
「まとまった。すぐに出発してくれるそうだ」
セローさんが早足で戻ってきて告げる。
初めての依頼へ出発だ。
馬車に揺られること半日くらい。
道中休憩をはさんだりして、夜遅くに村へ着いた。