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03 筋肉、メッセージ、キス、エッチ

※キスもエッチも話題に上がるだけで、しません。

「オジサン!」


 私がドアを開けると、後ろからマユちゃんの悲鳴が聞こえた。

 何故か後ろ向きに立ってるオジサンの背中にしがみつく。


「オジサン」

「オジサン、筋肉見せて下さい」

「はあ?」


 すぐ横でハナちゃんが言った言葉に、返すオジサンの声が裏返ってる。


「ハナ・・・ダメ」


 そう言ってオジサンとハナちゃんの間にコノハが割って入る。


「オジサン・・・よろしく」


 コノハが私を押し出して、部屋のドアを閉めた。



 オジサンは私を剥がすとこちらを向いて片膝をつく。


「どうした?」


 優しく抱き寄せてくれるから、首筋に顔を押し付けた。


「オジサン」

「うん」

「筋肉見せて」

「だから、なんなんだそれ?」


 両肩を掴まれて、また剥がされる。


「泣きながら言う事がそれ?」

「泣いてないもん」


 オジサンのシャツを(めく)ろうと、しゃがみ込んで裾を持った。


「見せて」

「一体どうしたんだ?何で筋肉なんだよ?」


 オジサンが抵抗する。


「見せてくれないの?」

「落ち着けって。友達に何か言われたんじゃなかったのか?」

「コノハがオジサンの筋肉見た事があるって」

「俺のを?」

「私、見た事ないのにコノハだけ」

「それであのメッセージか」

「メッセージ?」

「さっきコノハちゃんがリノを頼むって、メッセージを送って来たんだよ」

「オジサン、コノハとやりとりしてるの?」

「変な想像するなよ?疚しい事はないからな?自分の友達と俺を信じろ」


 そう言ってオジサンは私の頭を抱き締める。


「オジサンを信じてるけど、それとこれとは別じゃない」

「ほら、泣くなって」

「泣いてない。じゃあ見せて」

「じゃあってなんだよ」

「何で見せてくれないの?」

「ああ、体育祭の時のか」

「思い出したの?」

「今、コノハちゃんから教わった」

「今?!」


 オジサンを突き飛ばした。


「私を抱き締めながら、他の子とやりとりしてたの?」

「え?」

「・・・信じらんない」

「何でだよ?リノの事を訊いただけだろう?」

「どんなやりとりしてたのよ?私には言えない事?」

「そうじゃないよ」

「じゃあ私に直接訊けば良いじゃない!」

「ああ、そうか。悪かった。確かにそうだな」

「私の言う事じゃ、信じらんないの?」

「いや、信じてるよ」

「じゃあ見せて!」

「え?メッセージ?」

「何でよ?筋肉よ!」

「何でだよ?待てよ」

「そっちこそ何で?」

「いや、あのな、今日は友達が泊まりに来てるだろ?」

「ん?だからなに?」

「万が一、俺が変な気を起こしたら拙いだろ?」

「何でそんな話になるの?」

「こう、見られて興奮する事だってあるんだって」

「はあ?何で?」

「いや、何でかは知らないけど、でもあるの」

「コノハに見られて興奮したの?」

「んなわけあるか!それは中学生の時だろう?」

「コノハが中学だったの1年も前じゃないよ?」

「1年前ならリノに見られたって平気だけど、今は違うだろう?」

「なんで?なにが違うの?」

「1年前なら、俺が変な気を起こしたらリノに嫌われると思ってたから、我慢できた。けど今なら二人で盛り上がっちゃうかも知れないだろう?だからダメだ」


 顔がちょっと熱くなる。


「そうか。ゴメンね?オジサン」

「いや、分かってくれれば良いよ」


 頭を撫でてくれるオジサンに向けて、目を合わせた。


「みんなが帰ったら見せて」

「アホ」

「何でよ?みんながいるから盛り上がったらマズいんでしょ?」

「盛り上がったらダメなのは、いつでもどこでもだろう?」

「何でよ!」

「一線を越えるのなんて一瞬なんだからな?」

「そんなの、やった事ないから分かんないじゃない!」

「良し、決めた」


 そう言ってオジサンは私を抱き締めた。


「オジサン?」

「リノは絶対に本物のバージンロードを歩かせる」

「え?それって教会で結婚式を上げるって事?」


 願ってもないけど、急に?もちろん嬉しい!


「それまで手を出さないって事」

「え?」

「初めてのキスもその時だ」

「ええ?!キスくらい良いじゃない!」


 1位取ったらご褒美に思い出に残せる所に一緒に行って、貰う積もりなのに。


「アホ。キスは前戯の一種だ。キスなんかしたら充分その気になるんだからな?」


 オジサンの体を押して離す。顔を見て睨む。


 ゼンギがなんの一種なのか分かんないけど、キスが一線越える為のその気だとオジサンは思ってる。

 でもそうじゃないキスもある。目覚めのキスとか、挨拶のキスとか、キスシーンの次が必ずベッドシーンな訳じゃないんだから。


「そんなの、やってみなければ分かんないでしょ!」

「分かってからじゃ遅いって、何回言わせるんだよ」


 両頬を持たれて、あれ?オジサンの顔が近付いて来る?

 オデコがくっ付けられた。


「俺の言ってる事が正しいって、結婚したら分からせるから覚悟しとけ?結婚式でキスして、みんなの前でヘロヘロにしてやるからな?」

「ヘロヘロって私が?」

「ああ。キスで腰が抜ける事もあるらしいから、そうしてやる」

「腰?」


 驚いて腰を抜かすって事?

 オジサン、自分の事を下手って言ってたけど、下手過ぎて私が驚くんじゃないよね?

 逆に、凄くて驚くの?


「もしかしてオジサン、結婚式まで練習するんじゃないよね?」

「練習?」

「キスの練習。オジサンの中ではキスとエッチが繋がってるんでしょ?」

「キスもエッチだけど、キスの練習ってなんだよ?」

「だってエッチな事、自分で下手って言ってたでじゃない?」

「あれはタナカと比べて俺がヘタクソだって言われた話だ。リノは俺と誰かを比べる気は無いだろ?」

「当たり前でしょ?オジサンはオジサンだもの。誰とも比べる必要ないから」

「ああ。俺もリノを誰かと比べたりしない」

「でも前に私の事、世界一可愛いって言わなかった?あれは比べてるじゃない」

「もちろん比べる必要なく、リノは世界一可愛い」

「あ、うん。ありがと、オジサン」

「どういたしましてだ」

「でもオジサンは自分の事も人と比べなくて良いからね?」

「あ、うん。そうか」

「ヘタクソだって構わないから、他の人と練習したりしないでね?」

「はあ?当たり前だろう?そんなのしないよ。勘弁してくれ」

「だって、オジサン、隠れて努力とかしそうだし」

「それ、褒めてるのか?なんかの罠か?」

「揚げ物食べる為に走ったり、私と食べる時は揚げ物じゃなくて、私の好きなおかずにしてくれたりするし」

「それとキスやエッチな事を一緒にするなよ。それに走るのはともかく、リノの好きなおかずは隠れた努力とは関係ないだろう?」

「だって人間の三大欲求でしょ?夜も遅くまで私の勉強をみてくれるから、睡眠欲求もガマンしてくれてるよね?」

「まあそう見えるかも知れないけど」

「会社でお昼に揚げ物食べたり居眠りしたり出来るけど、エッチな事はチイ叔母さんと別れてからは相手がいないでしょ?」

「リノに直接欲望を向けないからって、他の人を身替わりにしたりしないよ。ちゃんとリノと結婚するまでガマンするから心配するな。それに言っとくけど、会社で居眠りもしてないぞ?揚げ物は食べてるけど」

「でも」

「あのな、もし今俺がリノに迫ったら、立場の弱いリノは断れないかも知れないだろう?」

「立場なんて関係なくても、断らないよ」

「たとえそうでもそうは思われないからだよ。リノが一人でも生きて行ける様になってから、敢えて俺と暮らす事を選んで欲しいの」

「そんな事しなくたって、オジサンを選ぶのに」

「色んな人と出会ってから、それでもやっぱり俺を選んで欲しいし、その選ばれる為の努力なら俺はするんだって」

「でも」

「でもじゃない」

「でもそれって私の事、信じてないって事でしょ?」

「リノの言葉は信じてるよ。何年リノを見てきたと思ってるんだ?そうじゃなくて、俺が自分を信じるのに必要なの」

「オジサン、面倒臭い?」

「面倒臭くて結構。言ったろう?俺の中の親心に、リノの相手として俺を認めさせたい。リノに釣り合う男になりたいんだ」

「え?私の方が釣り合って無いじゃない?」

「そんな訳ないだろう?俺のリノを馬鹿にすると、たとえ本人でも許さないぞ?」

「なにそれ?変だよ」

「リノが俺と結婚する為に勉強頑張ってるんだから、俺もリノと結婚する為に頑張るんだよ。そう言う事」

「それは、うん。分かった」

「そうか。良かった」


 オジサンは私の頭を撫でながら「ホント良かった」としみじみ言った。


「それはそれとして、筋肉見せてよ」

「振り出しに戻るなよ。結婚したらいくらでも見せるって」

「だってコノハには見せたのに」

「はあ。上半身ならリノにもみんなにも見せた事あるんだけど、ハナちゃんも見たがってたし、まあ忘れてるか」

「え?いつ?」

「幼稚園の時」

「え?みんなって誰?」

「リノ達4人」

「どゆ事?」


 オジサンは私達4人が、同じ幼稚園に通ってたと言う。

 驚いて部屋に戻ってみんなに訊いたら、ホントに同じ幼稚園だった。みんな驚いてた。


 何で黙ってたのかオジサンに訊いたら、昔の事を言うと私が子供扱いを怒るからって言われた。

 その判断が子供扱いじゃない?

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