01 お泊まり会
※シリーズ化に伴い、「叔母さんの元婚約者と二人で暮らす事になった」で掲載した後日談を切り出しただけです。内容は一切変えていません。
※細かい描写はありませんが、性に関する表現があるのでR15にしています。
今日はウチでお泊まり会。
メンバーはいつもの3人を招待。
マユちゃんは同じクラス。
コノハとは中学が一緒。
ハナちゃんはコノハと同じクラスの子で、マユちゃんとは同中の幼馴染み。
2クラス合同授業でコノハとハナちゃんも一緒になるから、自然と仲良くなった。
お泊まり会の名目は、テストお疲れ様会。一応、みんなで答合わせをしようって事になってる。
今日終わったテストの結果が出るのは来週だけど、結果が出てからだと楽しめないかも知れないからね。
「そう言う割にはリノは楽しみにしてるんじゃない?」
そうマユちゃんが言う。
「リノったらテストが1科目終わる毎に、キメポーズしてたんだよ?」
「なに言ってんのマユちゃん?そんな事してないよ」
「高得点・・・確定」
コノハがそう言うと、マユちゃんが「そうなの?」と言った。
「中学でもやってたの?」
「やってた」
「そんな事やってないって。それより答合わせ始めようよ。ほら、ハナちゃんも。ハナちゃん?」
床に座ってベッドに上半身をうつぶせにしてるハナちゃんが、「うん?」と弱々しい声を出した。
「大丈夫?ハナちゃん?」
「う~ん?」
「部活、疲れた?」
「う~ん」
返事がどっちか分からないけど、お風呂出てからハナちゃんはずっと眠そうだった。
「今日じゃない日が良かった?」
「う~うん、今日は軽めだったから」
「寝ろ・・・ほら」
コノハがハナちゃんをベッドに押し上げようとするから、私も手伝う。
「ハナなら床で寝ても、明日には元気になってるよ?」
「マユちゃん、ハナちゃんに冷たくない?」
「ハナに心配しても無駄って学んでるから」
「なるほど」
そう言ってコノハが手を放す。
「ちょっとコノハ!」
ハナちゃんがベッドからズレ落ちて、私が潰されたじゃない。
なんとかハナちゃんをベッドに寝かせて、3人でテストの答合わせ。
答が分かれても2対1で多数派に入る事が多いので、私の点数は大丈夫そう。1位が取れるかどうかは分からないけれどね。
「リノ、凄くない?」
「そう?そうかな?」
「リノ・・・別人?」
「コノハ、別人はないでしょう?」
「でも最近は授業で当てられても、まともな事を答えてるじゃない?」
「マユちゃん?今までの私がまともではないと?」
「なかったでしょう?」
「リノ・・・お笑い命」
「なに言ってんのよコノハ?」
「なんで?コノハちゃんの言う通りでしょう?授業で指される度に、笑いを取ってたじゃない」
「取ってない!」
「無意識・・・天然」
「天然ゆうな!」
「リノが天然か養殖かはどうでも良いけど、成績が上がったのはオジサンのお陰なんでしょう?」
「それは、うん」
「照れちゃって、可愛いね」
「個人授業・・・蜜満月」
「私も欲しいな、オジサン」
「え?あげないよ!」
「リノのオジサンは取らないよ」
「借りて・・・返さない」
「貸さない!」
「からかいすぎだよ、コノハちゃん」
「私も・・・欲しい」
「え?コノハ?」
「リノから奪うの?コノハちゃん?」
「オジサン・・・便利」
「便利って何?」
「確かに、オジサン、便利よね」
「だから、便利って何よ?」
「だって勉強教えてくれるし、学校のすぐ近くに住んでるし、おいしいご飯作ってくれるし、何でも買ってくれるし」
「何でもじゃないよ。それに私もご飯作ってるし」
「どこにでも連れてってくれるし」
「買ったり連れてったりは、1位にならないと何でもじゃないから」
「好きになれるし」
「ダメよ!あげないってば!」
「だから取らないってば。リノが思いっきり好きになれるって言ったの」
「なになに?コイバナ?」
ベッドからハナちゃんが口を挟む。
「ハナちゃん、起きてたの?」
「今起きた」
「ね?もうハナ、復活したでしょ?」
「少し寝ただけで?」
「うん」
「休み時間・・・爆睡」
「そうそう、ハナって教室でよく寝てるよね」
「教室で?恥ずかしくない?」
「何が?」
「寝顔みられたり」
「別に?」
「机に俯せになって寝てるから、ハナの顔は見えないし」
「イビキとか」
「どうだろう?」
「無音・・・不動」
「死んだ様に寝てるもんね」
「ヨダレとか」
「ハナは顔の下にタオル置いて寝るから」
「あれ枕代わりだよ?ヨダレなんか垂らさないって」
「食後・・・垂れてる」
「あ~、午後は垂れるかも」
「朝もでしょ?朝練の後に食べてるんじゃないの?」
「あ~、そうかもね。でもそんなの気にしてたら寝られないよ」
「そんな色気を捨ててるハナが、何でコイバナに反応するのか」
「捨ててないよ」
「不足・・・補充」
「なるほど。ハナにないからこそ必要って事ね?」
「そうそう、そんな感じだね」
「え?それで良いの?ハナちゃん」
「え?良いよ?無いもの。だからリノ、聞かせてよ」
「そんな、話すほどの事はあまりないけど」
「なんで?いつもノロケてるんでしょ?」
「ノロケてないってば」
「ううん・・・ノロケてる」
「うん、惚気てるよね」
「ほら、やっぱり」
「違うってば」
「分かったから、ノロケでなくて良いから、オジサンのこと話してよ」
「そう言われても、何を話せば良いのか」
「オジサンとの出会いでも、今日のオジサンでも」
「出会いは幼稚園の頃だから覚えてないし、今日はみんなも見てたでしょ?」
「え~出し惜しみ?」
「リノが出し惜しみするのは、オジサンを取られないか心配だからだよね?」
「そんな事ないけど」
「ホント?でもさ、ねえ?ハナもオジサン欲しくない?」
「あげないってば」
「分かってる分かってる。私もコノハちゃんも、便利だから欲しいなって言ってたんだ」
「好きな人が欲しいんじゃなくて、オジサン本人?」
「あげないからね?」
「要らないかな?」
「何でよ!」
「え?何で?こっちが何でなんだけど?何でリノが怒るの?」
「良かったじゃない。リノはあげないんでしょ?」
「そうだけど、要らないって言われると、なんか」
「複雑・・・乙女心」
「世界中の人が要らないって言っても、リノはオジサンが好きなんじゃないの?」
「それはそう、だけど」
「だったら良いじゃない」
「値取ったもんね?」
「それ、マユちゃんが言う?」
「ゴメンゴメン、怒らないでよ」
「事実・・・寝取った」
「寝取ってないってば」
「マユもコノハもからかうのは止めなよ。リノだって好きで寝取れてないんじゃないんだから」
「え?」
「そうね。一所懸命に寝取ろうとしてるんだものね」
「頑張っても出来ない事ってあるし」
「向き不向き・・・タイミング」
「確かに、リノはタイミングも悪そうだよね」
「別にタイミング悪くないよ。それに寝取ってはないけど、オジサンはもう私だけのオジサンだからね?」
「リノ。そうやって自分を誤魔化すのはダメだよ」
「え?」
「そうよリノ。ちゃんと寝取っとかないと、誰かに取られちゃうから」
「え?」
「マユ・・・言い過ぎ」
「そんな事ないでしょ、コノハちゃん?リノは色気控えめだから、積極的にいかないと、オジサン、逃げちゃわない?」
「え?」
「そうだね。リノは色気、絞り切っていかないと」
「絞り出してでしょ?絞り切ったらダメじゃない」
「そう?まあそこはリノの好きな方で良いよ」
「リノ・・・大丈夫」
「え?何で泣きそうなの?」
「リノ、ゴメンね?言い過ぎた?ごめんなさい」
「だって」
「リノ・・・大丈夫だから」
コノハが傍に来て頭を抱き締めてくれる。
誰かにオジサンが取られる?取られたら会えなくなる?
そう思うと胸の奥がギュウっとなる。