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月の雫
ただ、見せてみようと思っただけだった。そこに深い意味は無い。
フィデリオが尋ねたから、ちょっとした話の種だ、と思いザイラはロケットペンダントを差し出した。心臓の位置まである長いチェーンで、普段は見えないこのペンダントを、ザイラは肌身離さず付けていた。
それは、夏帆がザイラとして目覚めてからも変わらない習慣だった。
幼い頃に亡くなったという母の記憶は、殆ど無い。
それが、皇子と側近のレオと呼ばれる鷹の目の男は、鏡に映ったロケットの装飾を見て、その目の色を変えた。
一体それが何なのか、ザイラは予想も出来なかった。
マルガリテス——それだけ呟くと、フィデリオとレオはザイラの方をじっと見つめている。
呪文じゃあるまいし……——
一言呟いてこちらを見られても、ザイラには返答のしようがない。
ザイラは皇子と側近を交互に見ながら、一体何をしているのか出来る限り汲み取ろうとしていた。




