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【完結】古代竜の生贄姫 ~虐待から溺愛に逆転した世界で幸せを知りました~  作者: 綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢をよろしく
本編

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82.国は神による統治で豊かに

 一度壊した仕組みを構築するのは大変。でも既存の仕組みを変更するのも、改革が中途半端になる。一長一短だけど、今回は壊して正解だった。


 元貴族は、読み書きや計算が出来る。逆に言えば、職人のような作業は不可能だった。どちらが優れているか、迷うまでもなく……農民が一番だ。食べ物を作り出す彼らを下に見てきた職人や貴族は、考えを改めた。


 互いの能力を認め合えば、協力もスムーズである。貴族令嬢や夫人だった彼女らは、学校を作った。子ども達だけでなく、希望する大人にも読み書きや計算を教える。代わりに現物支給で、人参や麦を受け取る。


 農民は古代竜の加護が厚い土地を耕し、豊かな実りを新たな神殿へ捧げた。そう、新しい神殿を作ろうと決めたのは私。神官はいらないけれど、掃除の人はお願いした。寄進された金や食べ物は祭壇から、リカラが回収する。


 祈る神官は不要だけど、人々は直接神に祈るようになった。ギータ様は夢に現れ、人々に災害や吉兆の知らせを齎す。リカラが直接出向いて、人々を危難から救った。


 信仰する人々には、回収したお布施や食べ物を分け与えていく。神による直接統治だった。元貴族の男性は文官となり、他国との外交や商売に勤しむ。職人達は献上品を作るのだと意気込み、以前より熱心に打ち込んだ。商人は他国から様々な品物を運び、貨幣に相当するコインが使われ始める。


「ふむ、だいたい整ったか」


 アデライダとの昼食に釣られ、壊れた橋や道を直しまくったリカラは、今日もご機嫌でアデライダを膝に乗せる。


「あーんして」


「あーん」


 繰り返してパクりと口を開けるアデライダへ、果物を食べさせて頬を緩めるリカラ。彼女の膝の上では、呆れた様子のペキが欠伸をひとつ。ペキもすっかり大きくなり、先日は黒猫に言い寄られていた。猫パンチで退けたけど。


「フランカ」


「あーん」


 名を呼ばれて口を開けた私は、甘い葡萄を噛み締める。じわりと果汁が溢れて、溢れそうになった汁をぺろりと舐めた。残念そうな「あーあ」が聞こえ、ギータ様が肩を落とす。どうやら舐め取りたかったみたい。


「あーん」


 催促して待てば、すぐに次の粒が入ってきた。それを噛んで、少しだけ口の端から溢す。見えるように首を傾けたら、すぐにちゅっと口付けされた。その後ゆっくり舐めとられる。


「めちゃくちゃ羨ましい」


 リカラの悔しそうな声が聞こえ、私はふふっと笑った。こうやって甘えて甘やかされて、数年も経てば慣れてしまう。人に見られても、恥ずかしいと思わなくなった。


「そろそろ三年か」


 何を数えて三年なのかしら。横向きに抱っこされた姿勢で、ギータ様を見上げると……口に葡萄の粒が押し当てられた。聞くなってこと? 素直に口に含み、よく噛んで飲み込む。今年の葡萄の出来は極上だった。


 ギータ様とリカラが二人で統治するようになり、この国は一気に栄えた。年に1回だった収穫は複数回になり、災害も減る。だけど災害がゼロにならないのは、すべて意味があるから。


 洪水は土地を豊かにするし、土砂崩れも栄養豊かな山の土を畑に供給する。森の木々も抜けたり燃えることで、世代交代や新陳代謝を促す。事前に夢で知らせるため、今は人的な被害はなくなった。


 当初は安い木造の家が多かったけど、徐々に石造りや煉瓦造りの家も増えている。他国からの侵略はリカラが退けた。このまま平和が続けばいい。


「お姉様、花冠を作りましょう」


 久しぶりの誘いに「いいわね」と同意して、ギータ様の腕を叩く。下ろしてと要求したら、名残惜しそうに緩めた。滑り降りて、アデライダと手を繋ぐ。


 安心して。見える場所で作るから。すぐ目の前の赤い花を摘んで、編み始めた。出来上がったら、ギータ様にあげよう。

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