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【完結】古代竜の生贄姫 ~虐待から溺愛に逆転した世界で幸せを知りました~  作者: 綾雅(りょうが)魔王様コミック発売中!
本編

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49.子どもっぽい神様のケンカ

 結果から言えば、災害は起きた。私が予想する形ではなかったけれど。


「古代竜であられるギータ陛下を蔑ろにする者らに、天罰が下りましたぞ!!」


 大喜びする神殿の神官達には悪いけれど、手放しで歓迎する状況じゃないわ。表向きは……ね。ランヘル公爵領は、大規模な洪水に襲われた。不思議なことに、他領に被害が出ない形で。


 川はくねっている。曲がった部分の外側は大きな力がかかり、水によって土手が削られるため決壊しやすかった。これは前の世界での一度目の人生で覚えた知識よ。その知識で判断するなら、明らかに誰かの意思が働いていた。


 川を挟んでランヘル公爵領と接する伯爵領側に、被害は一切出なかった。大きく曲がった川の外側でも、まったく浸水はない。逆にランヘル公爵領は、引き込み用の水路から決壊して畑はすべて水没した。もちろん民の家も例外ではない。少し高台にある公爵家がかろうじて残っているが、水が最大に溢れた時は1階は水没したとか。


「やりすぎではありませんか?」


「人命は奪ってないぞ。俺を信仰する民には、ケガ人も出さなかった」


 にやりと笑うギータ様は、言葉通り水を巧みに操った。畑は水没して今年の収穫が出来ない。しかし来年は、流れてきた山の土で肥沃になった大地は豊作が期待できるみたい。それってエジプトのナイル川? どこかで聞いた話を思い出した。


 前夜にギータ様は己を信じる民に、夢でお告げを出した。昼過ぎに決壊するから、家族と一緒に逃げるように、と。水没しない安全な小高い丘を示し、そこで古代竜が光を浴びる神々しい演出までした。得意げにそう語ってくれた。


 家や財産は流れたかもしれない。今年の収穫は得られない。だが、神は命を全てお救いくださった。そう考えた民は、わっと公爵家に押し寄せる。その勢いに押されて、籠城したランヘル公爵は逃げ出した。今も発見されていない。


「あの公爵領の忌々しい神殿も流れたし、これで縄張り主張はおしまいだ」


 ギータ様は機嫌よく笑った。自分の領地と決めた範囲に、他の信仰や神が入り込むと力を削がれる原因になる。徐々に蝕んでいくから、人の病気みたいなものね。気づいたら、他の信仰が染み込んでいることもあるらしい。陣取り合戦、縄張り主張、どんな言い方しても子どもっぽいわ。


「神になれるのは、少なくとも3千年は生きた種族だ。互いにケンカを売ることはないんだが」


 呆れたと言いながら、ギータ様は首を傾げた。長寿になるほど、他の種族に興味が薄れていく。眠り続けたギータ様のように、庇護する気はないが勝手に神に祀られるパターンも多いと聞いた。己の眠るお気に入りの土地が無事なら、他の領地に手を出さない。


「暗黙のルールを破った侵略者に、手痛いしっぺ返しをくれてやった」


 ギータ様は満足そうだった。拠点となる神殿を壊し、ランヘル公爵領の民の憎しみが注がれる。それは柔らかな粘膜へ、小さな針が刺さるような不快感を与える。


「ざまぁみろ」


 神様って神殿で崇められる存在なのに、俗物よね。子どもの仕返しじゃないんだから、大人げない。そう思う反面、このくらい人間っぽい方が親しみやすいと笑った。私も結構毒されてるわ。

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