34.私、すでに食べられてたのね
先代国王陛下の時代、私の祖父もお告げが下った場にいたと聞く。国王陛下、先代ソシアス公爵、教会の教皇猊下が揃った場へ、光が降り注いだ。外にいた者は声が聞えなかったが、3人はしっかり聞こえたらしい。
――1人目のソシアス公爵令嬢が……王の花嫁になった時、世界は満ち足りて輝くであろう。
この迷惑な予言じみたお告げの後、私が生まれた。誰もが期待した絶世の美貌や明晰な頭脳はなく、貧相な老婆に似た髪の女児に、国中の貴族が落胆する。それでも祖父が生きていた頃は良かった。私は公爵令嬢として最低限の生活を与えられたから。
祖父が亡くなり、何もかも取り上げられた。薄暗い部屋に押し込められ、使用人からも無視される日々。食事も満足に与えられず、死ぬことを望むような扱いだった。実際、死んでも構わないと思われていたと思う。両親はそのつもりだった。
でも直接お告げを聞いた、国王陛下と教皇猊下は違う。国王陛下は「王の花嫁」の王を息子と解釈して、私をイグナシオ王子の婚約者に据えた。それが不満な両親や義妹がどう動いたか、裏の事情は知らないけれど。最終的に入れ替えは国王陛下に認められたのでしょうね。
お告げの娘が間違っていた、とか。そんな理由を付けて、もっともらしく装った。
神殿の騎士が私に槍を向けたのだから、教皇猊下も私を邪魔者と認識したのよね。その理由は何かしら。あの人にとって、誰が花嫁でも関係ないはず。守護神と崇める古代竜の機嫌を損なわなければ……。
「どうした?」
「えっと、理由が分からないの」
口調はだいぶ砕けてきた。そのたびに嬉しそうに笑うギータ様を見ながら、ひとつ深呼吸して一気に吐きだした。
「前回のお告げを捻じ曲げた理由よ。ソシアス公爵家は分かるわ。邪魔な養子より、可愛い愛娘を選んだだけだもの。だけど、国王陛下や教皇猊下はどうして……」
「ふむ。そういった政治面は、一度目にも経験しなかったか?」
「……そこまで知ってるの?」
前回を知っているのは分かる。古代竜であるギータ様の谷に落下したし、願いを叶えてくれたなら私の死を巻き戻したのだから。でも一度目は誰にも話していない。私だけの秘密だったのよ。
「前回、お前は俺の上に落下した。その死体を食らい、血から記憶を得たんだ。怒るなよ? 必要な措置だ」
「別にいいわ」
あの時の私は恨みで真っ黒に心を染めていて、きっと美味しくなかったと思う。逆に「お粗末様でした」と口にして、大笑いされた。一頻り笑った後、彼は楽しそうに口を開く。
「なら教えてやる。あの醜い連中の考えは、お前の想像を超えるぞ」
ギータ様の瞳孔が縦に割れる。これって、爬虫類っぽいわね。一度目の人生で蛇を見た時は怖かったけど、今は平気だわ。違う、そうじゃない。金色の光が縦に集約して、とても美しく見えた。




