13.襲った黒幕の影がちらり
「色々考えたんだけど、無罪放免は難しいわよね」
過去に学んだ法の知識を引っ張り出し、検討してみる。彼らの境遇は同情するし、野盗に身をやつしたのもメルカド子爵家のせい。そこは事実として認定できるけど、平民が貴族を襲った時点でアウトなのよ。
野盗のボス、セサルもそこは納得した。彼が持ち出した交渉材料は、自分が命じて無理やり農民を従わせたことに出来ないか、というもの。代わりに罰を一人で背負う気ね。
当然、他の野盗から大反対された。これに関しては、私も反対だわ。いいように利用されて、全員処罰される可能性が高かった。貴族ってのはね、本当に汚い生き物なの。騙し討ちなんて日常よ。
「いっそ、私が傷物になれば……その事実を隠匿する代わりに恩赦を。うーん、無理ね」
余計に拗れる気がした。未来の王子妃なわけで、王家の面子丸潰れだもの……ん? そこで引っかかった。王宮と公爵家の屋敷の間は、森が広がっている。でも治安はいいはずよ。
「ねえ、セサルさん。どうして公爵家の馬車を狙ったの?」
「は? 俺らが紋章なんざ区別つくわけねぇだろ。ただ、高そうで金持ってそうな馬車だったんで、襲っただけだ」
「なら、あの森を襲撃地点として選んだ理由は? 普通は王家と高位貴族の屋敷の間は警備が厳しくて、巡回の騎士がいたりするのよ」
「……そういや、何でだろ」
セサルは真剣に考え始めた。元農民達は口々に、襲撃前の状況を思い出しては口に出す。その中で、気になる名前が浮上した。
「レグロが話を持ってきたんじゃねえか?」
「ああ、そうだ。飲んでたらアイツが」
「そういや、レグロの奴を最近見かけねぇな」
荒い言葉にたびたび登場する「レグロ」、その名前は知っていた。イグナシオの弟である、テレンシオ王子の侍従の使う偽名だ。
テレンシオ王子の母は、筆頭侯爵家の一人娘だった。そのため、侯爵家の跡取りは不在になっている。テレンシオ王子が王太子にならなければ、侯爵家を継ぐはず。
前回も王位を狙って、私を攻撃した。事故を装って殺そうとしたり、夜会の後で暗がりに連れ込まれそうになったり。今考えると、結構危険だったわね。洒落にならないわ。最終的にバレて、王太子はイグナシオに決まったんだけど。
前回の記憶を手繰り、今回の動きが早すぎることに眉を寄せた。なぜかしら。私の王子妃教育が終わるまで、前回は静観してたわよね。変更するだけの理由があるはずだわ。たとえば、もうすぐ王太子がイグナシオに決まる――とか?
「そんで、お嬢ちゃん。何かいい案は出たかい」
「無理すんなよ」
私を気遣う彼らに微笑んで、思いついた中で一番安全そうな案を提示した。




