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オリアの両親

オリアの父親だからって油断した。


俺は回避力には自信があるが、耐久力は全くのカスだ。エルフの本気の拳などまともに食らってしまえば一発で気絶してしまう。


というか、小説でセインはどうしてたっけ。

確かオリア父の拳を片手で受け止め、弁明の後に誤解を解いていた気がする。あの不意の一撃を止めるとか、やっぱりセインは——


「化け物、だな.....」


「...英雄様!」


「おい、英雄様が起きられたぞ!誰かあのバカ息子を連れてこい!」


ゆっくりと目を開くと、俺の胸の上に乗ったオリアが心配そうにこちらを見つめていた。視界の端では、族長が付き人達へとなにやら指示を出している。


「痛たた...くない。あれ、誰か治療してくれたのか?」


「...私がした」


殴られた左頬をさすってみるが痛みを感じなかったので尋ねてみると、なんとオリアが魔法で治療してくれたのだとか。流石はエルフ。あんな怪我を治療するなどお茶の子さいさいなのだろう。


「そうか。ありがとうな、オリア」


「...うん」


褒めて欲しそうなオリアの頭を撫でると、彼女は気持ち良さそうにその目を細めた。


「その、汚い手で娘に触れるなぁ!」


するといつのまに部屋へと入ってきていたのか、拳を構えたオリアの父親がまたもやこちらへと迫ってきていた。


あー、分かった。多分こいつはバカだ。

だが、どうしようか。俺は今、上半身を起こしているだけで膝の上にはオリアがいる。まともに動くことのできる状態ではないし、あの拳を避けることは厳しいだろう。ああ、また気絶お眠りコースか...


そう2度目の気絶の覚悟を決めたとき、


「貴方はバカなのかしら?」


「へぶッ!」


突如オリア父の後ろから飛び出してきた女性が、その頭に手加減のないチョップを食らわせた。それの直撃を受けたオリア父は床に倒れ、ピクリとも動かなくなった。


あれ、死んでないよな?


「ママ!」


その女性の姿を見たオリアがそう声を上げる。あれはオリアの母親か。


「うちの旦那がすみませんね。あの人、いつもはもう少しちゃんとしてるんですけど、娘のことになるとバカになっちゃうので...」


「は、はぁ」


数秒前に恐ろしい威力のチョップを放ったオリア母は、何事もなかったかのように話しかけてきた。

なんだろう、めちゃくちゃ美人なんだけど、すげー怖い。


「貴方が娘を救ってくれたっていう子ね?娘を救ってくれてありがとう。お名前は?」


「は、はい。俺はアルトと言います」


「そう。本当にありがとう。そして、旦那がごめんなさいね」


「い、いえ、き、気にしないでください」


オリア母に正面から見つめられ、緊張から体が少し強張る。この世界に来てからある程度美人には慣れたつもりだったが、エルフの美しさは人間のそれとは少し系統が違う。

こんな美人に見つめられて、平常心を保ったまま会話するなど俺には無理だ!


「本当に優しいのね。......それに貴方、魔力がとても綺麗ね。娘がここまで懐いている理由が分かるわ」


相変わらず膝の上で大人しくしているオリアを見て、オリア母は言う。


確かに、エルフは魔力の動きに敏感だからな。

もしかして、オリアが俺に懐いているのは魔力が関係しているのか?


「あ、オリアをお返しますね」


あの父親にオリアを渡すのは少々危ない気がしたが、この母親なら大丈夫だろう。


俺は膝の上に座っているオリアを持ち上げようとする。が、


「...や!」


「いや、そう言われてもな」


何をしようとしているのかを悟ったのか、オリアは俺の手を避けて膝に強くしがみついた。


「ふふふ、この子は本当に貴方を気に入ったのね。貴方さえ良ければ、娘が満足するまで一緒にいてくれないかしら?」


そんなオリアの様子に、オリア母は笑いながらそんなことを言った。それは親として大丈夫なのだろうか?


「そ、それは...」


「ああ、あの人なら私が黙らせるから大丈夫よ」


オリア母はあの人、と言いながら未だ伸びているオリア父を指差す。


「...ふしゅー!!」


膝のオリアの方を見ると、彼女は膝にしがみついたままこちらを威嚇している。なんでしがみついている相手に威嚇してるんだ。


「はぁ、分かりました」


俺はオリアを引き剥がすことを諦め、オリア母の提案を受けることにした。

まあここに来るまで彼女とは結構長い間一緒にいたし、もう慣れたから特に問題はないが。


「決まりね!じゃあそれまで、貴方はうちに泊まっていきなさい!」


「へ?」



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「ムッスー」


「...」


「貴方?反省してないのかしら?」


「い、いやー、よく来たな!ははは、娘を救ってくれてありがとう!ゆっくりしていくといい!あははは!」


「あ、はい...」


オリアが満足するまで大人しくすることに決め家へと招かれた俺は、天敵?である彼女の父親と対峙していた。


「さて、なんで君は家にまで来たのかね?さっさと帰ればいいのに...」


「は、はぁ。オリアさんが離れてくれなくてですね...」


「なんだ君は!娘のせいだと言うのかね!だったら私が娘を引き取ろうじゃないか!」


その言葉にお怒りになったオリア父は立ち上がり、膝の上に座っているオリアの前に屈んだ。


「ゴホンッ......久しぶりでちゅね〜?パパでちゅよ〜?そんな臭い人間よりも、パパの方がいいでちゅよね〜?こっちへいらっしゃ〜い?」


「!!??」


するとオリア父は、その容姿からは想像もできないような猫撫で声でオリアへと喋りかけた。控えめに言って、ドン引きだ。


「.....................ぷい」


「——!!」


そんな父親の様子を真顔で見つめていたオリアは、長考の末に顔を横に背けた。


そんな娘の反応にオリア父はショックを受けたのか、屈んだ体勢のまま真っ白になって動かなくなった。


「この人は放っておいて、みんなでご飯にしましょうか」


そんなオリア父に対して無慈悲にもそう言い放ったオリア母に従い、俺たちは3人で夕飯を食べるのであった。

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