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エルフの里

獣人の青年達と出会ってから、更に二日後。


「...あ、あそこ、」


「ん?」


相変わらず適当に森の中を歩いていると、突然オリアがそう声を上げて遠くの方を指さした。


「んー、なるほど。確かになんかおかしいな。あそこ」


彼女の指した方には一見何も無いように見えたが、よく目を凝らすと少し遠くに小さな魔力の揺らぎが生じていた。


「...多分、入り口」


「入り口?里のか?」


オリアはコクリと小さく頷く。

彼女がそう言うのなら間違いないだろう。



俺たちはその魔力の揺らぎに近づいてみるが、その揺らぎはうんともすんとも言わない。

エルフの里への入り口はこれで合っているのだろうが、どうにかして開けなければならないようだ。


どうしようか悩んでいると、その揺らぎの中心に何かが引っかかっているのが見えた。


「お、これは…パズルみたいだな」


「...解けるの?」


「おう、任せとけ」


引っかかっていたものの正体は、知恵の輪のようなパズルだった。だが普通のパズルではなく、魔力で作られたパズルだ。

魔力の扱いに長けたものでないとまず見つけられないし、触れることもできないだろう。


そんなことを思いながら、慎重にそのパズルを手に取る。


前世の高校時代、俺はこういう知恵の輪のようなパズルが大好物だった。食事中に知恵の輪、風呂でも知恵の輪、授業中にも知恵の輪、知恵の輪の合間に勉強———だから俺は浪人することになったのか。


「ほい、ほい、ほいっと」


その魔力で作られた知恵の輪の難易度は低くもなく高くもなくといったもので、数分程度かけてそれを解くことができた。


まあ、あまり馴染みのない人間が解こうと思えば、かなりの時間がかかるかもしれないが。


「で、これが鍵か」


「...すごい」


その分解された部品のうち、明らかに扉の鍵のような形をしているものを手に取る。


「...それ、貸して」


「ん?おう」


その鍵をどう使おうか悩んでいたところ、オリアがそう後ろから手を伸ばしてきたので鍵を渡す。


「...」


その鍵を両手で持ったオリアは、集中するように目を瞑った。すると彼女の持つ鍵からは 一本の魔力でできた線が伸び、鍵穴らしきところへと差し込まれた。


え、すご。というか、鍵穴ちっさ!針の穴よりも小さいぞこれ。初見じゃ絶対に見つけられないな。


その後すぐにカチャリという音が聞こえ、俺とオリアの前には小さな円形の入り口が出現した。入り口といえどその中は真っ黒であり、先の様子を直接見ることは出来ない。


「......行こうか」


「...うん!」


いざエルフの里を目前にし緊張している俺に対して、オリアは久々の里が待ち遠しいのか少しウキウキしているようだ。


覚悟を決めた俺は、オリアと共にその空間へ足を踏み入れた。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「うわぁ...!!」


入り口に足を踏み入れた俺は、気がつくと先程までいた森の中ではなく、どこかの村の門の前に立っていた。門といっても王都にあるような石造りの立派なものではなく、木だけで作られた小さな門だ。


「ここが...エルフの...」


きっとここがエルフの里なのだろう。少しの感動を覚えながら、その内部へ足を踏み入れようとした——瞬間。


シュバババッ!!


「!?」


俺へ向けて、大量の何かが飛んできた。


「あ、ぶねっ!!」


高速で飛来するそれにギリギリで気がついた俺は、咄嗟に門の外へ出る。


トトトトトッ!!


すると足を踏み入れようとした地面には、数十本もの矢が突き刺さった。


おいおい、どういうことだこれは...

あまりにも突然のことに、俺はその場に立ち尽くす。



ザッッッ


その数秒後、立ち尽くす俺の正面に突如数人の美男美女が現れた。その美男美女達は顔つきは若干異なっているものの、どれも金髪に翡翠色の瞳をもち、耳の先は尖っていた。


「...人間よ」


それの一番前に立つ、長身のイケメンが口を開いた。


「どうやってここへ立ち入ったのかは知らんが、今すぐに立ち去れ。他言しないと言うのならその命、見逃してやろう。だが、引かないの言うのなら——」


「!?」


そこまで言うと、そのイケメンは体に大量の魔力を纏い始めた。更にはそれに呼応するように、周りの者たちもそれぞれ魔力を帯び始める。


おいおい、こいつら力づくで追い出す気満々じゃねぇか!流石に、この人数のエルフと正面から戦って勝てる気はしないぞ。


俺が巨大なプレッシャーを放つエルフ達を前に冷や汗をかいている一方で、背中からは嬉しそうな声が聞こえた。


「あ、じいじ!」




......じいじ?




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「本当にすまなかった!」


「は、はぁ...」


そんな気迫の篭った謝罪を受け、困った俺は微妙な返答を返す。


現在目の前では、先程まで敵意剥き出しであったエルフのイケメンが両手をついて頭を下げている。俗にいう土下座というやつだ。


あの後、オリアを送り届けに来たことを知ったエルフ達は俺を里の中へと招き入れ、村の中でも少し大きな家へと案内した。因みに、オリアは俺の膝の上に座っている。


「ぞ、族長!人間に頭を下げるなど...」


土下座イケメンの横に立つ女性が、その姿を見て焦るように言う。


あー、やっぱりそうか。

オリアはエルフの族長の孫っていう設定だったよな。まあ、100を優に超えているであろう族長がこんなに若く見えるのは予想外だったが。


「うるさい!相手は恩人だ!種族など関係あるか!我々は同胞とその恩人を殺めるところだったんだぞ!……その子は私の孫なんだ。愛しの孫を救ってくれた恩人に私たちは…なんと謝罪をすればいいか」


エルフの女性の言葉を受けて、イケメン族長は更にその頭を床に擦り付ける。おお、このままでは床を突き破ってしまいそうだ。


しかし流石はエルフの族長。エルフは高潔でプライドが高いものとしていた筈だが、ここまで真摯に謝られては怒るに怒れない。


「族長様。どうか顔を上げてください。なにも事情を説明せずに里に入ろうとした俺も悪かったですし、お互いに怪我もなかったので大丈夫です。気にしないでください」 


「おお、なんと寛大な......我々の不敬を許容した其方の心に感謝する」


その頭を上げたエルフの族長は再度小さく頭を下げた後、俺の方へと手を差し出した。


これで一件落着かな。そんなことを思いながら、俺が族長の手をとろうとした———そのとき、


「娘が帰ってきたというのは本当か!」


そんな大声を上げ、1人の青年が部屋に走り込んできた。


「パパ!」


その姿を見て、俺の膝に座っていたオリアがそう嬉しそうに声を上げる。その声に反応し、青年もまたこちらへ顔を向けた。

パパという事は、この人がオリアの父親か。これもまた凛々しい感じのイケメンで、それこそ族長を少しだけ若くしたような——


「娘を離せ!このクソ人間がぁ!!」


するとオリアの父親は勢いよく走ってきたかと思うと、そんなことを思っていた俺の頬へその拳を思いっきりめり込ませた。


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