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噂と生徒会

七魔仙の1人である“知識”の魔人コネサンスを倒してから、1週間が経過した。


魔人が現れたことは王国中に知れ渡り、魔王の復活を国民全員が知ることになった。

またコネサンスを倒したセインは国王から直々に感謝状を貰い受け、瞬く間に国の英雄となった。



一方の俺はというと、


「あれが噂の...」


「異常者...」


こちらを見た上級生が避けるように道を開ける。

俺は廊下を歩けば誰もが道を開け、学園内の全員から注目される存在となっていた。


あの日のことはそれはもう一瞬で学園中に知れ渡り、この特徴的な見た目も相まって、現在の俺は学園中の全員から敬遠される存在へと進化した。


一応殺したのは魔人という手前、嫌がらせの類は一切ない。しかし魔人といえど人型の生命体をなんの躊躇もなく殺すことのできる存在は恐ろしいのか、俺に話しかける者は誰もいない。なんなら、教師ですら目を背ける始末だ。


「はぁ...」


周囲から向けられる恐怖と嫌悪を含んだ視線に、深いため息をこぼす。入学以降、様々な視線に当てられてきたが、今回のものはそのどれよりも居心地が悪い。早く冬休みに入らないかな...


今かと待ち侘びる終業式は1週間後。まだまだ肩身の狭い生活は続きそうだ。


「アルト!」


今も向けられている嫌な視線から逃れるように自室へ戻ろうとすると、後方から名前を呼ばれた。


「イヴェルさん...」


「久しぶりだな。少し、話せないか?」


その声の主は、先日の学園内選挙で生徒会長に就任したイヴェルだった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「イヴェルさん、生徒会長就任おめでとうございます」


「ああ、ありがとう」


「シエルさんも、副会長就任おめでとうございます」


「ありがとね〜」


俺はイヴェルに連れられ、久しぶりに生徒会室へとやってきた。ここに来たのは、1ヶ月ぶりくらいだろうか。

最近は生徒会の仕事が忙しかったようで魔法の練習会は行っていなかった。

因みに現時点で生徒会室にいるのは俺とイヴェル、シエルの三人だけだ。


「ところで、お話というのは...」


「ああ、例の噂のことだ」


早速本題について尋ねてみると、イヴェルから予想通りの返答が飛んできた。やはりそうか。


「アルト君、あの噂は本当なの?私、あまり信じられないんだけど...」


「ええ。どのように伝わっているのかは分かりませんが、大体合っていると思いますよ」


シエルの確認を、誤魔化すことなく肯定する。

ここで嘘をついたところで仕方がない。二人から蔑まれることになろうと、俺は真実を話そう。


「そうか...アルト、お前には幻滅した」


手を組んだイヴェルが静かに口を開く。

その隣に座るシエルもどこか残念そうな顔をしている。

...この2人との関係もここで終わりか。少し寂しいが仕方ない、か。


「まさか...まさかお前が———女装癖のある変態だったなんて!」


「は?」


ん?脈絡というものがどこかに飛んでった気がするぞ?


「は?じゃない!お前は女装をして街中に繰り出し、同性を装って女性を口説こうとしているらしいじゃないか!学園中で噂になってるぞ!」


「いやいやいやいや、待ってください!それに関しては完全に誤解です!」


「え?でもさっきアルト君、認めてたよね?」


「いや違います!俺はてっきり———」


俺は暴走し出したイヴェルを止め、彼女達の誤解を解くため自分の思っていたことをすべて話した。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「ははは!そんなことで私たちが幻滅するわけがないだろう!」


「そうだよ〜!その場にいたら私でもアルトくんと同じ選択をしてると思うよ?」


俺の弁解を聞いたイヴェルとシエルは、その内容を理解するや否や腹を抱えて大笑いした。ここまで爆笑されるとなんか悔しい...でも、可愛いからいいか。


「はぁ〜、お腹痛い。そんなことよりも私たちはアルト君が変態だったことに驚いて、ねぇ?」


「ああ、そうだ。本当に一瞬、アルトには失望したぞ」


「だからそれは誤解ですよ...」


多分、女装云々の噂は俺の評判を貶めるために捏造されたものだろう。誰がそんなことをしたんだか。暇な奴もいたものだ。


「そうだよね〜、女装自体は個人の自由だとは思うけど———自分を偽って異性と触れ合おうだなんて、変態がすることだもんね!」


「うぐッ!?」


「ああ、全くのその通りだ。すまないな、アルト。一瞬でもそんな変態だと疑ってしまって。」


「あがッ!?」


悪気のないシエルとイヴェルの口撃に、俺は深いダメージを受ける。自分を偽って異性に近づく変態........何も言い返せない。


「?、どうしたんだ?アルト」


「アルト君、顔色悪いよ?」


「ははは...なんでもありませんよ...誤解が解けたようで何よりです...」


不思議そうにこちらを見る2人に、俺は平静を装い返事をする。この2人には、俺がミケだと言うことは絶対にバレてはならない。


まじで、本当に、バレてはならない!絶対に卒業まで隠し通す!


「ところで、本題なのだが」


改めてそう心に誓ったところで、笑うのを止めたイヴェルが再度その口を開いた。


「え?今のが本題じゃなかったんですか?」


「そんな訳あるか。あの話だけだったら、わざわざここまで呼び出すことなどしない」


「まあ、本題に入る前の確認って感じ?」


そう言うイヴェルとシエルの2人は少し真剣な顔つきになる。

さっきのは本題じゃなかったのか。じゃあ本題ってなんなんだ?


「アルト=ヨルターン。私、生徒会会長イヴェル=ラーシルド並びに生徒会副会長シエル=ハースエル両名は、君を生徒会役員に推薦する。アルト、生徒会へ入らないか?」


「へ?」


イヴェルの射抜くような視線と共に紡がれた言葉に、俺は思わず聞き返す。


「生徒会に入らない?って聞いてるんだよ〜」


続いて、イヴェルの隣に立つシエルが軽く言う。

な、なるほど?


「ええっと、なんで今、俺がなんですか?」


「元々、前期の頃からアルトには目をつけていた。だが、勧誘するタイミングが中々無くてな。ここまで引き延ばしてしまったのはすまないと思っている」


「イヴェルちゃんったらまたまた〜、勧誘する勇気が出なくて時間が過ぎてっちゃっただけなのに〜。誘うタイミングならいくらでもあったよ?」


「シエル、うるさい」


そう注意するイヴェルの顔はほんのりと紅くなっている。図星なのか。


「ええっと、今からでも入れるんですか?先日、選挙がありましたよね?」


「それに関しては問題ない。生徒会長と副会長の二人の推薦があれば、生徒会に加わることができるという規定があるからな」


「で、でも、俺は今、学園中で酷い噂を立てられてるんですよ?生徒会の評価とか...」


「女装の噂は嘘なんでしょ?なら、気にすることは何にもないよ〜」


「で、ですが...」


「アルト」


更に言葉を続けようとする俺を、イヴェルが一言で止める。


「外聞や世間体など関係ない。私はアルトが欲しい。ただ、それだけだ。勿論、お前の意思は尊重する。だからアルトが生徒会に入りたいか、否か。それだけで判断してくれ」


イヴェルは俺の目を真っ直ぐに見据え、はっきりとした口調で言った。


「もう、それだけはっきり言えるならもっと前に勧誘すれば良かったのに〜」


「う、うるさい」


そうシエルに茶化されてはいたが、イヴェルの言葉はめちゃくちゃカッコ良かった。彼女にそうとまで言われて、断ることのできる者がいるだろうか。


「...そうですね。生徒会入会の話、ありがたくお受けします。これから、よろしくお願いします」


1年生としての学園生活を終える1週間前、俺は生徒会への入会を決意した。






だが、本来の小説の通りであれば、生徒会へ入会するのは俺ではなくセインだ。

この違いがこれからの物語にどのような影響を与えるのか。このときの俺には全く想像もできなかった。

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