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扉と指輪

「———!——!——!———!!!!!」


全身に炎を纏った巨大な鳥が声にならない悲鳴を上げる。そのまま地面へ墜落したかと思えば、やがてピクリとも動かなくなる。


「やっとか。あー、疲れた」


スタバの喉を潰してから戦闘を続けること更に数時間。やっとの思いで彼を倒すことができたらしい。


「回復力は低かったみたいだから喉が治されなかったのは良かった。だけど、体力が多すぎだ」


喉を潰されてからずっと怒り狂っていたスタバは何度も潰れた喉を酷使して叫ぼうとしていた。彼の回復力は知能と同様に高くはなかったようで、結局最期までその喉が治ることは無かった。

その反面、体力はかなり多く最後には俺の魔力とスタバの体力、どちらが先に底につくかの勝負になっていた。


「先にこっちの魔力が尽きていたらどうなっていたことか。想像もしたくないな」


こちら側としても魔力回復のポーションは尽きていたため、本当にギリギリの戦いだった。そんなことを考えながら、俺はスタバの亡骸に手を合わせる。なむー。


するとその亡骸は光の粒子となって消え、代わりに5層の中心に淡く光る扉が出現した。


「おお…如何にもって感じの扉だな。あとこれは…指輪か?」


その出現した扉の足元には、赤色に光る指輪が一つ落ちていた。


「流石に、戦闘中からずっとあったわけじゃないよな?」


そんなことを呟きながら、その指輪を手に取ってみる。銀色のリングに小さな赤色の宝石のようなものが一つだけ埋め込まれた、至ってシンプルなデザインの指輪だ。


「階層主を倒した報酬か?何にも覚えてない...まあ、せっかくだし身に付けてみるか」


試しに俺はその指輪を右手の中指に嵌めてみる。


「...特に変化なしか」


指輪をつけてみても、体や周囲に特に変化は起こらなかった。火属性の魔法に効果をもたらすアイテムかとも考えたが、今は魔力が枯渇寸前なので試すことはやめておく。


とりあえず赤い指輪について考えることを後回しにし、淡く光る扉について考えることにした。


「6層への道は他にある。そして、階層主が消えて出現する扉か。思い当たる節しかない」


この扉は多分、扉をくぐった者をダンジョンの入り口へ転送する扉だろう。小説でそんな設定の扉を作った記憶がある。


「まあ、とりあえず入ってみれば分かるか」


扉について大体の見当がついたため、特に躊躇することなくその中へと足を踏み入れる。ぐにゃり、と空間が捻じ曲がるような感覚があった後、予想通り、俺はカイナミダンジョンの入り口に転移していた。


「やっぱりか。ということは...」


一度振り返り今出てきた扉を再度くぐる。するとこちらも思った通り、5層の中心へと転移していた。


「つまり次から俺は、1層から5層はスキップして6層から攻略できるってことか」


これは非常に便利だ。前世の俺、よくこの設定を考えた。偉いぞー。


「よし、明日からは6層以降の攻略だ!身体とか魔力の扱い方にも慣れてきたし、今までの遅れを取り戻すぞー!」


ダンジョンの前でそう叫び、自分に喝を入れる。結局、5層までを攻略するのに4ヶ月も掛かってしまった。


まあそれだけの期間をかけた分、自身の力はヌレタ村にいたときのものとは比べものにならないくらい成長しているのだが。とはいえ、早くこのダンジョンを攻略して村へ帰らないと両親やセインを心配させてしまう。


このダンジョン攻略をできるだけ早く終わらせることができるよう、俺は6層以降についての対策を練りながら宿へと向かうのであった。

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