第2話 不穏
※現在のアメリカ国土は北アメリカ及び南アメリカ大陸全土であり、光の人間達が住む北アメリカ大陸にクレイドルが存在し、南アメリカ大陸は闇の人間達が蔓延る危険区域に指定されている。
アメリカは国土が広い為に、拠点の管轄領域も広大になる。
中央拠点クレイドルは、国内最大の大きさを有したビルになっており、周辺には国民が住む住居が乱立している。
クレイドル周辺の街を中部、その周囲を東部・西部・南部・北部と名付けられた街が囲んでいる。
中部が一番安全という訳ではなく、各所の街には国の主力部隊が滞在している。
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アメリカ中央拠点クレイドル 中部
「凄いですねアメリカって……私外国って初めてなんですけど、やっぱり日本とは全然違いますね!」
フィリアは明るい橙色の髪を揺らしながら橙色の瞳を輝かせ、忙しなく辺りを見回していた。
「この国は日本とは文化が違うから、そう感じるんじゃないかな?この国の建物は、全てユカリが国民の要望に合わせて創造して出来ているんだ」
フィリアよりも少し遅れて歩いて来たレンは、街の中で日常を送る人々へ目を向けながら話をした。
「資料で見た事はありましたが……本当にこの建物を全てユカリが、一人で創造したんですか?」
フィリアの指差した先には大小様々な建物が乱立していた。
「前にも話したけど、繋がりを断ってしまえばユカリの創造した物は形状を維持したままその場に残す事が出来る……その証拠に建物の配列は均等に並んでいるんだ」
レンの説明通り、建造物の殆どは大きさに違いがあると感じるだけで、それ以外の変化を殆ど感じない程同じ形状をしていた。
「お久しぶりですね……レン」
周囲に意識を向けていた二人は、突然発せられた声に驚き、声のした方向に視線を向けた。
「まさか君が直接お出迎えに来てくれるなんてね……〝クライフ〟」
視線の先には、銀色の長い髪を後ろに束ねた女性が立っていた。
瞳の色は左右異なっており左の瞳は薄花色を、右の瞳は半透明な瞳をしていた。
(この人がアメリカ最強……人々が認める程の強力な水のマイナス属性を持つ女性)
フィリア自身はクライフと初対面ではあったが、ルミナ内にある資料で他国に関しての知識も学んでいた。
「そちらの方とは初めてお会いしましたよね?……初めまして、私はアメリカ中央拠点クレイドルの副長を務めさせて頂いているクライフと申します」
クライフはレンと握手を交わすと、隣に立っていたフィリアへと視線を向け手を差し出して挨拶をした。
「わ……私は新人のフィリアと言います。よろしくお願いします!」
フィリアはユカリと初対面で挨拶をした時と同じ緊張を感じ、挨拶と握手を交わした。
(この感じ……懐かしいな)
「……あれ?クライフさんは敬語でお話しされるんですね」
ふと当時の自分がユカリに言われた事を思い出し疑問を感じ質問した。
「まあ強制ではないからね。ユカリはあくまでも上下関係を無くす為に敬語を禁止としているだけで、クライフのように敬語で喋る事が自然になっている人も沢山いるからね」
レンの言葉に、クライフは小さく頷いた。
「他国との関係が緩和されている今では親しくなった人には〝さん〟を付かなくなりましたけどね。そういえばレン……最近は日本へ出向く事が出来ていませんが、ユカリとヒナは元気ですか?日本へ赴きたいとは思ってはいるのですが……現状闇の人間達の行動が活発になっていますから」
「ユカリとヒナは相変わらずだよ……それから、闇の人間達が活発になっている件は、僕らが今回アメリカに来た理由の一つでもあるから、これから互いに情報交換をしよう」
その時クライフと会話していたレンが気になったのか、今まで顔を見せない様にクライフの背後で隠れている少女が顔を覗かせた。
「あれ?その子は……」
視線の先には腰まで流れる真っ白な髪と紅蓮の瞳をした少女が腰から下程の位置から顔を覗かせていた。
少女は身体の節々に包帯を巻き、右眼に白い眼帯を付けていた。
「この子とは南方に位置する離島へ赴いた際に出会いました。 〝フェイト〟という名前だけは覚えているそうなのですが、それ以外の事は覚えていないそうです……念の為、属性の確認も行いましたが、属性はまだ開花していませんでした」
クライフの身に纏っている隊服を掴み離そうとしない少女は、二人を怯える様に出たり隠れたりを繰り返していた。
「右眼の眼帯についても覚えていないそうなのですが、外して確認しようとしましたが……嫌がられたので辞めました」
眼帯に手を近づけると、少女は無言のまま首を何度も横に振った。
「記憶を失う程の事があったんですね。私達は貴方が嫌ならそれ以上の事はしませんから、大丈夫ですよフェイト」
フィリアが微笑むと少女はクライフの背後に再び隠れてしまったが、すぐに顔を覗かせ二人に微笑み返してくれた。
「レン……この子は我が国よりも日本で保護して下さって頂いた方が安全だと思うのですが……宜しいでしょうか?」
クライフが少女の頭を撫でると少女は安心する様に微笑むとクライフの手に頭を擦り寄せた。
「分かったよ。でも彼女は君の事を好いている様だから、モニター越しにでも顔を見せてあげて欲しいな。君も、この国から離れる事が出来ないだろうし」
二人の会話に反応する様に、少女はクライフの背後からゆっくりと二人に歩み寄った。
「……あの……私、探している人がいるの……この世界で一人しかいない大切な人」
足元を見て震えている少女を見たフィリアは、少女に歩み寄るとゆっくりとしゃがみ込んだ。
「心配しないで下さい。私達が必ずその人を探して見せます」
フィリアの言葉を聞くと、下を見ていた少女は頭を上げてフィリアの瞳を見つめた。
「ありがとう!」
屈託の無い笑顔を向けた少女に対して、フィリアも同じ様に笑顔を返した。
(この世界が、こんな笑顔で溢れる世界になる為に……私は戦う)
クライフは笑顔の二人を静かに見つめ、改めて自身の願いを心に誓った。
「レン……ユカリに伝えて欲しい事があります」
二人を見つめていたレンだったが、近づいて来たクライフの真剣な眼差しを見たレンは、クライフの言葉に静かに頷いた。
「ユカリから事前に聞いていたけど……この国で起きる可能性がある問題の事かい?」
レンの問いに、クライフは小さく頷いた。
「我が国が……いや、ファイス様が危惧している……強大な力について」
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赤壁の街ヴァイス
「狂愛娘……そろそろ〝あいつら〟を起こして来い」
「え〜あんな量産品興味無い〜あの人が勝手に起こすでしょ?……それにメンドイ⭐︎」
「ウザい……あの人が今手を離せないのは知ってるだろう?……それに、お前がこの世で一番暇だ」
「女が勝手に私を決めないでっ!!過去に囚われてる奴に、私の一途な愛が理解出来る訳がないっ!……私は愛しき人を見つけたから今忙しいの。あぁ早く会いたい……会いたいよぉ〝ユウト〟 ♡」
「こいつまた……はぁ仕方ないか」
御拝読頂きありがとうございます。
今回のお話は日本の主力であるレンとフィリアがアメリカ最強のクライフと謎の少女フェイトと出会う物語でした。
次回はアメリカに迫り来る問題に関して語られると思います。
Twitterにて登場人物についての説明を画像を使いながら行なっていきます。
ゴシック@S.kononai
次回 第3話 脅威
お楽しみに!




