第21話 Xuehua
※心の中では「」と()の意味が逆転しています。
「」 心の声 () 会話
ユウトは結晶刀を創り出すと両手で柄を握りしめ正眼の構えをとった。
(今の俺じゃ、どんなに全力でぶつかってもフィリアに敵わない。けど、この戦いはフィリアを倒す為じゃなく助ける為の戦いだ)
ユウトは一つの覚悟を決め、身体の内に秘められた属性力の解放を試みた。
(一瞬で良い……フィリアの属性を超えるんだ。未熟な俺に、まだ伸び代が残っているのなら……今ここで、成長しなくて何の意味があるんだ!)
覚悟を決めた瞬間、ユウトにある変化が見られた。
(あれは……翼?)
ユウトの背中に、結晶で構築された大きな〝片翼〟が創り出されていた。
(この戦いも……終幕の時ですか)
ユウトに応えるように、右手に携えた刀に意識を集中させたフィリアは、自身の有する全ての属性を刀身に込めた。
「私の出す事が出来る全てを……貴方への想い全てを、この一撃に込めます!」
「ユカリへの誓い、想いの強さ、この一撃でフィリアに証明してみせる」
両者は決意を宣言した後、意識を刀身に集中させた。
そして静寂に包まれた空間を破るように、二人は同時に距離を詰めた。
接近したユウトは、フィリアから放たれる斬撃を全て避けながら、目標を狙える好機を待った。
(くっ!フィリアに隙が無いのなら、こちらから創り出すまでだ!)
パキィィィィン
両者の間に結晶の方翼が差し込まれ、フィリアの刀身は甲高い音と共に結晶の翼によって防がれた。
「っ!それならっ!」
片翼の生えた右側とは逆方向へと移動し、身を潜めている筈のユウトに向けて切先を突き刺した。
「え?」
フィリアの突き刺した切先は、本来であればユウトが存在する筈の虚空を貫いていた。
(ユウトが、いな——)
その直後、フィリアの首輪に向けて渾身の斬撃が放たれた。
ユウトは創造した方翼で姿を隠し、反対側に回り込むよう移動をして首輪に向けた一振りを放っていた。
(この首輪、想像以上に脆い!……これなら!)
「こんな首輪……さっさと砕け散れぇ!」
ユウトが力強く叫んだ瞬間、氷の属性を受けた首輪は徐々に全体が凍てついていき、完全に凍結すると同時に音を立てて砕け散った。
(これが……ユウトの想いの強さ)
首輪から解放されたフィリアは、糸が切れたように意識を失った。
「おっと!」
ユウトは、その場に倒れかけたフィリアの腕を引き寄せ、優しく抱きとめた。
(フィリアの想いは……ちゃんと伝わったからな)
―*―*―*―*―
心の中
(決着、着いたみたいだよ?)
(あんな紙一重の戦いするなんて、やっぱり向いてないのよ)
(その為に僕らがいるんでしょ)
(……はぁ、それにしても何で私がユウトを〝名乗らない〟といけないのよ。私達は別にユウトじゃないのよ?)
(しょうがないじゃん、名前がないんだもん。僕らはユウトの中で生まれた存在なんだからユウトって名乗っていれば良いんじゃない?)
雪景色の中、二人の少女は空に浮かぶ外の景色を眺めながら話しを続けていた。
(ん?この感覚は……)
(どうかしたの?)
(少しあいつと替わってくる)
(良い雰囲気なのに?)
(は?失恋後の雰囲気が良い雰囲気な訳ないでしょ!)
怒声を上げた少女は、雪景色の中にある光りの円柱に入り静かに目を閉じた。
―*―*―*―*―
(ちょっと、邪魔!)
「え?」
ユウトが聞き覚えのない声に驚きの声を上げた瞬間、ユウトの身体全体を結晶が包み込み単結晶化すると、数秒後には甲高い音と共に身体を覆っていた結晶は力強く砕け散った。
結晶の中から現れたのは、以前の女ユウトとは容姿が異なり、白い衣服に身を包んだ雪のような美しい白い髪をしたアパタイトのように煌めく瞳をした少女だった。
「ここにいると危ないわよ?」
入れ替わった際に地面に横になったフィリアを乗せるように床との間に結晶の板を創り出したユウトは、その結晶を軽く蹴りフィリアを階段付近まで移動させた。
「っ!」
その直後、ユウトに向けて強烈な斬撃が放たれた。
ユウトは斬撃を紙一重で避けると、斬りかかってきた者に鋭い視線を向けた。
「……」
そこに立っていたのは、黒衣に身を包み深い海のような長い青髪を左右にまとめた少女が、紅の瞳でユウトを見据えていた。
「いきなり攻撃してくるとか……」
ユウトは、突然斬りかかってきた少女に対する憤りを漏らした。
少女は両手に五十センチ程の刀を持ち、左は紅蓮の炎、右は蒼炎を纏っていた。
どちらも黒く淀んでいたが、属性の識別が出来る程度には色が残っていた。
「……」
「何か喋ったらどうなの?」
静かにこちらを見つめているだけの少女に苛立ちを覚えたユウトは、鋭い眼差しを向けたまま問い掛けた。
「……貴方の今の実力を確かめさせて」
少女は、その言葉を言い終えると同時に姿を消した。
少女が姿を消した時には、既にユウトの懐に入り込み斬撃の構えをとっていた。
(早っ!)
『結晶爆弾』
ユウトは自身と少女の間に、炎を結晶で包んだ物を創り出し強制的に爆発させ、少女との距離を離した。
「これ結構痛いんだから!あまり使わせないでよね!」
ユウトは爆発によって吹き飛びながら怒りの叫びを発すると、両脚を地に着けた瞬間に右手を前に翳した。
そして右手に創り出された刀は、結晶刀とは違い刀身が白くなっており、周囲を小さな雪の結晶が舞っていた。
御拝読頂きありがとうございます。
今回は、謎の青髪ツインテール少女が新しいユウト(女)の小手調べを始めたところまでのお話でした。
ちなみに、ユウトの中にいる二人の登場はフィリア戦で同時にする予定だったので少し遅いくらいの登場でした。
次回 第22話 力の差
お楽しみに!




