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創造した物はこの世に無い物だった  作者: ゴシック@S_kononai
第1章 光の導き手
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第20話 ハナミズキ

 ※心の中では「」と()の意味が逆転しています。


 「」 心の声  () 会話

 (本当に、フィリアとは相性が悪いなぁ)


 ユウトが無数の弾丸を放てば紙一重で避けられる。


 そんな事を何度も繰り返したが、目の前のフィリアは疲れさえも感じさせない面持ちだった。


「貴方と私では、勝敗は決しませんよ?……早く男のユウトに替わったらどうですか?」


「人の実力を勝手に判断するのは良くないよ?」


増殖する結晶弾(グロウス・スタレット)


 シュウの時と同じ構えをすると、そのまま踊るように弾丸を連射し始めた。


 弾丸は曲線を描き、互いにぶつかり合いながら無数に増殖し始めた。


「幾ら弾丸が増えても……無駄だって言ってるでしょう!」


 フィリアは刀を地面に突き刺すと、地面を這うように電撃が伝わり、弾丸に目掛け鋭い稲妻が放たれた。


 弾丸を壊すことは出来ないと考えているのか、掠めるように当てることで弾道を晒し、弾丸自体がフィリアを避けるように飛んで行った。


 (このままの戦い方だと、確かに拉致が開かないね)


 そう考えたユウトは銃を一丁消滅させると、もう一丁の結晶銃(スタリエット)を両手で構え、銃口をゆっくりとフィリアに向けた。


「〝shot〟」


最後の引き金(ラスト・ディスドール)


 照準を定めた瞬間、一発の弾丸がフィリアに向けて放たれた。


 (あの弾丸はシュウの光線を凍らせた……私が一発の弾丸に当たるとでも!)


 フィリアは少し横に移動し、紙一重で弾丸を避けた。


「あんな弾……当たると思ったんですか?」


 弾丸を避けたフィリアから向けられた瞳は、光を感じない冷たい眼差しだった。


「甘いね」


 ユウトがそう口にした瞬間、フィリアの背中に先程避けた筈の弾丸が背中に命中した。


「なっ……!」


「僕がさっき撃った弾丸は、僕の超必殺技みたいな物なんだよ?簡単に避けられると考えたのが運の尽きだったね!」


 (その分回数に限りがあるし……追尾する標的に狙いを定めないといけないけどね)


 フィリアが被弾した背中から、徐々に結晶が広がり始めた。


「う……うぅ」


 (私は、ここで諦めるわけにはいかない!ユウトに……ユウトに認めて貰うまでは!)


―*―*―*―*―


 恋を、してはいけませんか?


 初恋、手の届かないような人との恋。


 私の事を、相手が意識していなくても。


 相手に、想い人がいたとしても。


 想いを、胸の奥に隠しながらの恋になってしまっても。


 その想いが大きくなって、一方的な、重い、押しつけるような恋になってしまっても。


 いつ死んでしまうか分からない、こんな世界で、叶うことのない儚い恋をしてはいけませんか?


―*―*―*―*―


 ルクスに所属していた当時の私は、陰ながら剣術においてカイ以上の実力があると周囲から言われていた。


 私自身は強くなる為だけに剣術を磨き続けた。


 この世界で死なない為に、生き続ける為に、誰かの為じゃなく自分が生きる為に。


 私の存在が計画の邪魔になると考えたカイは、行動が制限されてしまう新人として私をルミナに転属させた。

 

 配属場所が変化しても、鍛錬が出来ればそれで良いと考えていた私は、ユカリ達からの説明を受けた後に鍛錬の準備を整え修練場に向かった。


 そこへ向かう道中で、私は妙な少年に声を掛けられた。


「ごめんなさい……修練室ってどっち……にありますかですか?」


「ぶふっ!」


 思わず笑ってしまう程、間違えた文章をスパッと言い切った少年は、真剣な眼差しで私を見つめていた。


「しゅ、修練場ですよね?私もちょうど向かっていたので一緒に行きますか?」


 私の言葉を聞いた少年は、嬉しそうに微笑み何度も頷いていた。


 (小さな子供のよう……こんな人も隊員に所属してるんだ)


 それから私は少年と関わる時間が自然と増え、修練場で鍛錬をしながら少年に勉強を教えるようになっていた。


 時には、新人離れした豊富な知識に疑問を抱かれる事もあった。


「フィリアは俺と同じ新人なのに詳しいね」


「勉学は、配属以前からしていたので」


 そんな時、私は嘘をついてルクスに所属していた事を伏せていた。


 ユカリが目覚めるまでの三日間、短い期間ではあったけれど、自分でも気付かない内にユウトの事をいつも意識するようになっていた。


 ユカリ……貴方は、ユウトがどれだけ努力したか知っている?


 制御出来ない属性の暴走で何度も傷付いて、今のように創造で回復する事も出来ない状況でも、必死に属性を制御する為に傷つき続けて。


 どれだけ秘められた能力が飛び抜けていても、彼は勉学も鍛錬も欠かす事はなかった。


 ユカリ……貴方は、ユウトにどれだけの力が眠っているか気付いている?


 貴方の全てを受け継いで創り出されたユウトには、創造主の貴方さえも超える可能性が秘められている事も。


 ユカリ…………私の願いは、この恋が叶う事じゃない。


 想いを全て打ち明け、この成就する事のない恋を終わらせる事さえ出来れば、たとえどんな結末になろうとも構わない。


 全てを打ち明ける事で初めて、嘘偽りのない私自身の気持ちで貴方の力になる事が出来ているのだと……信じられるから。


―*―*―*―*―


「お願い……私の……邪魔をしないで!」


 炎と雷の属性が入り混じり、フィリアの身体を包み込んだ。


 フィリアは解除する事が出来ない結晶化を、少しでも遅らせる為に属性を身に纏っていた。


『替わってくれ』


 声を聞き入れたユウトの身体に、突如ヒビが入ると身体を形成していたであろう結晶は砕け散り、中から男のユウトが姿を現した。


「ユウト……待ってた……貴方を」


 フィリアの表情は少し明るくなったが、戦闘態勢は維持し続けていた。


「見ていたよ……ずっと、〝心の中〟から」


 創造した結晶刀(クリスタリア)を構えると、ユウトの周囲に冷気が広がり始めた。


「その首輪が、原因なんだな?……弾丸を避けている時、首輪に向けて放たれた弾丸にだけ異様な程早く反応していたから分かった」


「……この首輪だけじゃないよ……これは、私の意志でもあるから」


 フィリアはゆっくりと刃を下すと、刀身に炎と雷の属性を纏わせ始めた。


「俺は、ユカリを護ると誓った」


 ユカリという言葉に、フィリアはピクッと柑子色の刃を揺らした。


「それだけじゃない……導き手という巨大な名を背負うユカリの隣に立つ存在になりたいと……あの日誓ったんだ」


 ユウトは、初めてレンと会話をした資料室での決意を思い出していた。


 両者の属性は徐々に強さを増していき、その影響で属性の範囲も広がり始めていた。


「なら……私を納得させて下さい!貴方の、ユカリを想う意志の強さを!」


「ああ!この一撃で納得させるみせる!……そして、フィリアを首輪の呪縛から救い出す!」


―*―*―*―*―


 心の中


 見える景色が全て白く塗り潰された空間に、二人の少女が存在していた。


 その世界では、降り止む事のない雪がしんしんと降り積もっては徐々に消えてを繰り返していた。


 (さっきから煩いんだけど?)


 (あらら、起きちゃった?)


 (あいつ、剣術なんてまともに出来ないでしょ?私が替わった方が良くない?)


 (駄目に決まってるでしょ!ここは、男ユウトに任せようよ)


 (……はいはい、分かったわよ。任せれば良いんでしょ?任せれば)


 (あれ?素直だね……今日は)


 (寝起きだからめんどくさいだけ!)


 (……そう言うことね)

 御拝読頂きありがとうございます。


 20話のタイトル〝ハナミズキ〟の花言葉は、「私の想いを受けてください」と言う意味でした。


 フィリアの関わるお話に関してはこんな感じで、花言葉がタイトルになっています。


 そしてユウトの変化する話にもある関連性が……。


 次回 第21話 Xuehua

 お楽しみに!

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