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創造した物はこの世に無い物だった  作者: ゴシック@S_kononai
第1章 光の導き手
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第16話 光の切り札

 ルクス内が静まり返る中、ユカリのいる最上階へと各々が階段を登っていた時、突然周囲の空間が歪むと同時に全員意識を失った。


―*―*―*―*―


 気が付くとルクス内にいた筈の四人は、ルミナの転移エリアに倒れていた。


「こ……ここは?」


 最初に目を覚ましたユウトは、周囲を見回しながら掠れた声を発した。


「ど……どうやら、ルクスから強制的に転移させられてルミナに戻ってきたみたいだね。どんな方法で転移させたのかは、僕にも分からないけど」


 次に目を覚ましたレンは、ゆっくりと立ち上がりながらそう言うと、近くに倒れていたヒナに駆け寄った。


 レンは転移が不可能になっているルクス内で負傷し意識を失っていたヒナを抱え、最上階に向かって階段を登っていた時に強制転移させられていた。


「ユカリは大丈夫か?」


 レン達の様子を確認したユウトは、近くに横たわっていたユカリに声を掛けた。


「……ユカリ?」


 ユウトからの声掛けに対して、ユカリから反応が返って来る事は無く、数分経っても目を覚ます気配すら感じない程安らかに眠り続けていた。


「怪我はしていない。もしかして……内臓を損傷したのか?」


 (ユカリなら傷付いた内蔵を創造して回復させる事が出来る筈だが……)


 ユウトは少し疑問を感じながらユカリに駆け寄り、内臓の回復を始めようとした。


 だが、傷付いていないユカリを何度創造してもユカリが目を醒すと事は無かった。


「なんでユカリは目を覚さないんだ?……俺の創造が機能していないのか?」


「いや、きっと君の創造が問題では無いと思うよ」


 振り返ると先程までヒナの様子を見ていたレンが、ユカリの治癒を行なっていたユウトの隣まで歩み寄っていた。


「ほら、微かだが服の背に穴が開いている。背中からの攻撃を受けたユカリが、咄嗟に正面から致命傷を治したんだろう。恐らく、相手の攻撃に何か含まれていたんだろうね」


 ユカリの様子を確認したレンは、その時の状況を推測で述べた。


「攻撃をした犯人が未だルクス内に残っている可能性はある。だけど、再突入するにしても僕とユウトの二人だけで乗り込むのは危険だし……」


 レンが頭を抱えていると、四人のいる転移エリアの扉を開け、橙色の髪を揺らしながら一人の少女が入って来た。


「「フィリア!」」


 レンとユウトは意外な人物の来訪に驚き、同時に少女の名前を呼んだ。


「あれ?ユウトとフィリアは初対面じゃないのかい?」


 (と言うよりも……なんで転移エリアを訪れたんだろう?)


 複数の疑問を抱えたレンは、頭上に多数のハテナを浮かべながら首を傾げていた。


「お久しぶりですレン。ユウトとは、数日前に出会って一緒に勉強と鍛錬をしていたんですよ」


 フィリアは軽くお辞儀をして挨拶した後に、レンから投げ掛けられた質問に答えた。


「レン……事の端末は扉越しに聞こえていました。私もルクスに同行させて下さい!」


 力強く詰め寄られたレンは、転移エリアに来たフィリアに対する疑問を残したまま、フィリアの言葉に対する返答に意識を向けた。


「フィリア。気持ちは嬉しいけど、新人の君を危険地帯と化したルクスに連れて行く訳には行かないよ」


「ユウトだって新人じゃないですか!」


 レンがフィリアの同行を拒否すると、フィリアはユウトを指差して反論した。


「私は新人ですけど、ユウトと全力の手合わせをするくらいの実力はあります!……お願いします!」


 必死に自身の実力を訴えたフィリアは、レンに深々と頭を下げ同行を懇願した。


「レン。フィリアは十分強かったよ……もし危なくなったら俺達で守れば良いだろ?」


「君ねえ。そんな簡単に…………はぁ」


 ユウトの言葉を聞いたレンは、少し考えた後に小さく息を吐き渋々頷いた。


「フィリアの実力は、手合わせをしたユウトの方が理解しているだろうから……ユウトの意見を信じよう。だけど、その責任は重大だ……危険が迫った時は必ず君がフィリアの事を守るんだよ」


 レンはそう言うと、右拳をユウトに向けて差し出した。


「当たり前だろ」


 レンから差し出された拳に、ユウトは軽く拳を当てて微笑んだ。


 (ユウト。私の事、しっかり見ていて下さいね)


 フィリアは心の中でそう願いながら、ユウトに視線を向けていた。


―*―*―*―*―


 意識の戻らない二人を治癒室に送り届けた三人は、再びルクスに向かう為に転移エリアへと訪れていた。


「ユカリに強襲を仕掛けた敵は、もしかしたら銃を使用したのかも知れませんね」


「そうだね。確かにあの穴の大きさは、弾丸が貫いたような大きさだったからね。銃を使う敵とは、僕の戦術と相性最悪だ」


 フィリアの推測を聞いたレンは、自身の拳を見ながら苦い顔をしていた。


「それじゃあ、僕が相手をしようか?」


 ユウトは、聞き慣れない女性の声がした方向に視線を向けたが、その場所には苦笑いをするレンが立っていた。


 (……あれ?)


「レン。変に高い声出すなよ」


「え?僕は高い声なんか出してないよ?」


 レンは唖然とした表情で、ユウトの言葉に返答した。


「あれ?確かに女の子みたいな声がしたんだけどな……」


「きっと私の声だよ!」


「うーん。まぁ……そうなのかな?」


 何故か嬉しそうに反応するフィリアに対して、ユウトは煮え切らない反応を返した。


 (フィリアの声にしては、少し低かったような)


 疑問を感じているユウトを他所に、レンは転移エリアの近くにあった機械モニターを操作し始めた。


「分からない事に関して話していても意味がない。先ずはルクスに行って、現場の状況を確認しよう」


 その言葉に二人が頷くと、レンは転移エリアを起動させ再びルクスへと転移した。


―*―*―*―*―


 ルクスに転移した三人は、ルクス内部を見て唖然としていた。


 フィリアは自身の知っているルクスと構造が異なっている事に驚いていたが、以前カイ達との戦闘の為に一度訪れた経験を持つ二人は、再び変化していたルクスの構造に驚いていた。


 以前は何一つ存在していなかった空間に、障害物となる黒い机や棚が無造作に置かれていた。


 入り口付近まで歩み寄った三人は、障害物の影から人の気配を感じ取った。


 姿は確認出来ないが、数十人の敵が潜んでいる事を建物の外から確認する事が出来た。


 敵の位置を確認した三人は、安全な経路からルクス内に侵入しようとした。


 その時、ルクス上階から声が聞こえてきた。


「やっと来た!ユウト、待ってたよ!」


 三人が上階を見上げると、カイが待っていた最上階とは異なり、十階程の高さから女性のような声が発せられていた。


「早く上がっておいでよユウト!そこにいる雑魚共は他の奴に任せてさ!ぼ……俺は今すぐにユウトと殺し合いがしたいんだよ〜」


「……だそうだよユウト」


 上階からの声を聞いていたレンは、隣に立っていたユウトの背後に周り軽く背中を押した。


「……レン?」


「ご指名だよユウト。一回層にいる敵は僕に任せて、上階にいる敵は君に任せたよ」


「勿論、私も一緒に行くからね!ユウト!」


 会話をしていた二人の間に割って入ったフィリアは、ユウトに真剣な表情を向けながら力強く告げた。


「私だってユウトと鍛錬して強くなった……だから、私にもユウトの背中を護らせて。足手まといには、絶対ならないから!」


 フィリアの発した言葉から強い意志を感じたユウトは、迷う事なく頷いた。


「分かったよフィリア。ユカリの為に、俺と一緒に戦ってくれ!」


「……うん!」


 ユウトの言葉を聞いた瞬間、フィリアの心に微かに影が差したが、気持ちを切り替えユウトと共に階段へと向かった。


 階段へ向かう最中、物陰に潜んでいた敵が姿を現し二人に向けて攻撃を仕掛けたが、二人は向けられた攻撃を軽々と避けると何事も無かったかのように階段を駆け上がって行った。


―*―*―*―*―


「……ふぅ」


 階段を登り行く二人を茫然と見つめる闇の人間達を、遠目で見ていたレンは小さく息を吐いた。


「僕がまた、寄せ集め集団を相手にする事になるとはね」


 レンは拳に炎の属性を纏わせ、階段前に群がる敵に向けて手招きをした。


「光栄に思いなよ。日本を代表する、光の主力に倒される事をさ!」


 レンの言葉を引き金に、闇の人間達は武器を構えてレンに向かって駆け出した。


 静かだったルクス一階は、騒々しい声に書き換えられていった。

 御拝読頂きありがとうございます。


 今回は、新たにフィリアが戦力に加わり二度目のルクス転移をし、レンが再び一階に置いていかれる所までのお話でした。


 レンは二回連続で雑魚の相手をしていますが、実際の実力はヒナ以上です……今後の活躍にご期待ください。


 次回はルクスで待ち構える少年との対決になるかも?


 次回 第17話 Dual wield

 お楽しみに!

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