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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
冒険者カンイチ アカリノ編
99/520

冒険者ギルド、アカリノ支店

 …… 


 「うんむ。なかなかに良い宿だったの。お値段相応ともいえるが」

 

 クマ達を連れているので選択肢の少ないカンイチだから仕方がないが、ホテル【従魔の友】は高級ホテルとして名高い。どんな従魔にも対応し、寛げる住空間を。提供される食事も専属のコックがいる力の入れようだ。

 従魔連れだけではなく、一般客も宿泊することができる。衛生環境も全く問題ない。凄腕の”洗浄”使いを雇ってるというのもある。一部屋自体の作りが広いので小金持ちには結構人気がある。

 

 カンイチのような大型の狼、魔獣を使役する『動物使い』『魔物使い』は少ないが、犬や狸、狐のような中型の従魔や、鳥、魔鳥を使役する『鳥使い』は、結構多い。『鳥使い』は、伝書鳩のように通信に使われたり、狩りの補助にも需要がある。

 

 クマ、ハナにしっかりと手綱を付けて、とりあえず朝の町を散策する。大きな通りの両わきに立つ野菜売りや、狩人だろうか。干し肉や、鞣した毛皮も売っている。なるほど、彼らは冒険者ギルドには属していない、生粋の狩人なのだろう。

 鹿肉のジャーキーが美味そうだったので、大きな麻袋で一つ求める。スープの出汁用のジャーキーもあり、塩も薄く、香辛料が使われていないのでクマ、ハナのおやつ用にこちらも麻袋で二つ購入。

 

 しばらく歩き今度は美味そうなパンが並ぶパン店の前で止まり、パンを求める。

 「まぁ、売ってる物に大差ないの。同じ国、隣町だしのぉ。が、この店のパンはフカりとして美味そうじゃわい」

 この星に来てからすっかりパン食に慣れて来たカンイチ。日本にいる時は週に数回、村の若い衆の焼いたパンを求めたが、基本米食だった。だが、こちらではパンが主食だ。

 

 そのまま、朝市を見て回る。大広場は屋台も多く出ていて中々に盛況だ。串焼きの屋台、小麦粉を水で溶いて肉を入れ鉄板で焼いたお好み焼きのような屋台。大鍋で煮込まれたスープの専門屋台。十分に楽しめる。

 

 変わった豆を見つけたので一山購入。帰ったら茹でて食ってみようと。背負い袋に仕舞う。後で”収納”に移すつもりだ。

 

 「良く懐いた狼だな。あんちゃん!」

 「犬なんじゃがの」

 元々ハスキー犬は狼に近いとされるが、流石にこう、毎回言われると。それに日々大きくなってるような。狼と洗脳されつつあるカンイチ。

 クマの首をモフる

 ”ぅおふ!”

 

 ぶらり、ぶらりと散策。特に見るべきものもなさそうだ。折角なので、この町の冒険者ギルドに寄って情報を仕入れていくこととした。戻るにしても進むにしても情報は重要だ。何か面白い依頼があれば受けても良い。特に、変わった果実やら、そういった採取依頼を。

 思い立ったら吉日。市の屋台で串焼きを購入。ついでにギルドの場所を教えてもらう。

 ……。

 

 「ほう。リストさんとこよりも随分と立派じゃなぁ」

 

 フィヤマの倍近くある立派な石造りの建物。大きなガラスの窓も嵌っている。フィヤマよりオープンな雰囲気があり、好感が持てる。

 入口には大きな来客用の馬車の停車場まである。従魔も連れて入ってよいらしい。

 「同じ国なのにこうも違うモノかの」

 

 とは言うものの、領地、小さい国のような物だ。領主の意向が大いに反映される。アカリノの町はフィヤマの町に比べ”冒険者の町”としては後発なので、その辺の施設の充実に領主も力を入れてるのだろう。冒険者を多く呼べればそれだけ儲け、税収も上がるというものだ。

 

 ”ぎぃ”

 ドアを開け中に。

 広々としたロビー。掃除も行き届いてる。このギルドには、建物内にも飲食できる場所があるようだ。まだ早い時間だが、数組のチームが酒を楽しんでいる。

 最初は、こんな朝っぱらからと思ったカンイチ。

 

 「そういえば、閉門間近に出ていく連中もいたのぉ。そういった連中なら、今が仕事のあがりかのぉ」

 その考えに至る。どのみち余計な世話には違いないのだが。

 

 「いらっしゃいませ!」

 が、受付嬢は一緒。厚化粧で少々ケバい。この辺りの品位は、相手にする冒険者のせいだろう。

 特に用事もないので、おおきな依頼票が張ってある掲示板の方へ行く。クマたちも大人しく足元に。

 

 「ふむぅむ。雑用と採取か……ゴブリン云々の話は出ていないのぉ。まだ秘匿されてるのかのぉ」

 ”討伐”やらの依頼も無し。未だ領主間での調整が出来ていないのだろう。

 そのまま、”採取”依頼に目を向ける。果物やら野菜の”採集”が多い。収穫の手伝いかとも思ったがこっちの山にはそういった産物が多いのだろうか。

 

 ――ほう。ベリー系の木であればそのまま欲しいところだな

 もう少しこの町に泊まって、採取でもやろうか……そう悩んでいると、のカンイチとそう歳の違わない、冒険者のチームが寄って来た。剣士風の3人の若者だ。

 

 「おいおい! 来てみろよぉ! 狼連れたガキがいるぞ!」

 「おお! 良いな! おい! ガキ! そいつ俺らが買い取ってやるぞ!」

 

 ――うるさいのぉ。わっぱ共が

 そのうちの一人は、常識人か。仲間の二人に苦言を呈する。

 

 「おい。止めておけよ。これって従魔だろう? 問題ないだろ。それに人に絡むなよ」

 「はぁ? これ見たことも無い狼だぞ! きっと高く売れるさぁ!」

 「おい。いい加減にしろ! その高く売れる狼をいくらで買うって言うんだ? お前は? 金なんかないぞ!」

 

 わいわいがやがや……

 他の冒険者やら、職員が寄って来た。ベテラン勢にしてみればルーキーの小競り合いはいい安酒のつまみだ。良い芽があれば、己のチームにスカウトしてもいい。

 ギルド職員にしたら、死人が出ないか冷や冷やだ。備品などは弁償させればいいが、人命となると大ごとだ。

 

 「ちゃんと従魔票も付いてるし、大人しくしてる。問題ないだろうが。すまない。仲間が余計なことを」

 「うむ。謝罪は受けよう。ワシらは放っておいてくれ」

 「はぁ? 生意気なクソガキだな! おい! イザーク!」

 「くっそ生意気なガキだな! おい!」

 

 ――ふむ。何故に絡まれねばならん? この姿か?

 確かにカンイチは小柄だ。まだ、肉体は15。成長期でもあるが。この世界は西洋人種。特に冒険者をやってるような連中は大きい体躯の者が多い。

 

 「おい……。いい加減にしないと、チームも”解散”だぞ。余計な面倒ごとは要らない。それにお前ら、絡んで何がしたいんだ?」

 「くっ!」

 仲間の二人もイザークの”解散”という言葉で引き、彼の後に渋々ついていく。

 

 ――やれやれ。やっと終わりか……。思い立ったら吉日……。そう思って来たが、とんだ厄日じゃわい。さっさとこんな所出よう。

 と出口に向かうカンイチ。だが……   

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