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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
冒険者カンイチ アカリノ編
98/520

ようこそ。【従魔の友】へ!

 …… 

 

 暗くなってからアカリノの町に到着したカンイチ。

 街灯がともる町中を門衛に教えられた順路で進む。暗いがそれなりに人通りも多い。帰って来て一杯やってる冒険者のチーム。こっちのテーブルは家族連れだろうか。

 急ぎ足で門へと向かう冒険者の集団、夜の採取等もあるのだろうか。小腹が減ったがとりあえず宿を押さえねばと道を急ぐ。下手をすれば野宿となろう。

 

 そして、従魔も泊まれる宿として紹介された、その名も【従魔の友 アカリノ店】に到着した。

 

 「アカリノ店? チェーン店じゃろか……。まぁいいで。すいませ~~ん!」

 「はいはい。いらっしゃいませ。お、おお! 素晴らしい……。なんと美しい狼か……」

 店の店主だろうか。50過ぎの男性。カンイチそっちのけでクマとハナを食い入るように見つめる。触りたいのだろうが、ぐっと手を押さえ我慢しているようだ。

 

 「あ、あの……」

 「あ? ああ。すいません。お客様。あまりにも美しい魔獣で。思わず……。ははははは」

 クマたちが褒められたのだ満更ではないが

 「犬……なんじゃが。っと、今晩泊まれますか?」

 「ええ。大丈夫ですよ。空いてる部屋はと……。そうそう、従魔と泊まれる部屋もありますが。普段はどのように?」

 「外に繋いでいるが」

 「う~ん。大型のゲージ二つ……か。なら、上げちゃった方が安上がりかもしれませんね」

 「部屋に……か?」

 「ええ。そういうお客様は多いですよ。ちゃんと、生活の場は区切られていますし。いかがいたしましょう?」

 「じゃ、それでお願いします」

 「時間が時間ですので夕食の準備はできませんが?」

 「構わない。お願いする」

 

 料金は前金。身分証の提示も義務付けられている。手際よく処理し、主自ら、部屋まで案内してくれるようだ。

 従魔も泊まれるといったから、臭いやらが気になったが全く無く、ギルドの宿舎よりもずっと奇麗なくらいだ。

 狼型の残り香についても聞いてみたら、

 

 「この業界、上級の”洗浄”魔法が使えないと話になりませんよ。当店は何処よりもその点は重要視しております。他の街でも【従魔の友】を見かけましたら、是非によろしくお願いします」

 やはり、チェーン店のようだ。

 

 「どうぞこちらへ」

 ……

 

 案内された部屋は一階の奥。広い三和土たたき間があり、寝床もある。部屋も寝室、従魔の餌用か、小さなキッチン、そして、従魔と過ごす広い居間。

 

 「出来ましたら、”洗浄”をお願いします。もちろん、当宿でもサービスで行っておりますれば」

 「ではお願いできるか?」

 「はい。”洗浄”!」

 ホコリ塗れ、足など泥が付いていたが奇麗になった。

 

 ――ふむ。これが”洗浄魔法”か。なるほど。アールが風呂代わりに使ってるというが……。これじゃぁ寂しいの。やはり湯につかってこその風呂じゃな!

 礼を言い、多少の心付け(チップ)を。


 「ほほぅ。けっこう広いな。ま、宿泊費も高いがの。値段だけの広さともいえようか。そういえば、日本でも犬と一緒のホテルやら旅館も流行っておったな。まさか、こっちの世界で体験することとなるとはの。のぉ。クマ、ハナぁ?」

 ”ぅぉおふぅ” ”わふぅ”

 

 カンイチだって年数回。村のジジババと温泉行ったり、役場や、農協の研修と称した慰安旅行に同行したりしたものだ。その時は、近所の連中がクマとハナの面倒をみてくれていた。

 

 「うん? ちゃんと従魔用のトイレもあるのかの。恐れ入ったわい。しかし、日本のお宿とそう変わらんの。凄いのぉ。テレビがないくらいかのぉ」

 もちろん、カンイチの泊まった部屋は、”高級”の部類の部屋だ。大抵の魔獣使いは従魔は一頭。小動物ネズミ使いやら、鳥使いはその限りではないが。

 魔力を纏うクマ、ハナ共に大型の”肉食””魔物”系に分類される。すると大型従魔用の堅牢なゲージが二つ必要になる。その経費を考えると、こちらの方が少々安いというわけだ。

 

 クマとハナに水と、餌の肉塊を与える。今日は鹿肉だ。

 「どれ。ワシも飯を食って来るかの。大人しくしておれよ」

 ””ぅおふ!””

 クマもハナも腹が膨れたのか、ゆっくりと横になる。

 

 ――今日は予想以上に走ったから犬達も疲れただろう。ワシも心地よい倦怠感があるのぉ。良い運動だったわい。

 普通の”人”に比べれば”異常”なのだが。

 休憩をそんなに取らないので下手をしたら馬以上の速さだ。いくら若いカンイチでも無理だろう。これも***の魔改造の成果に他ならない。加護ともいえるが。

 犬達は、上位神の”加護”といったところか。


 早速と食事にと町に繰り出すカンイチ。先ほどから少し時間も過ぎ、人通りも減り、家族連れ等の姿はない。夜の町といったところか。

 

 ――ほほぅ。フィヤマも賑やかじゃったが、こっちも”冒険者の町”なんじゃろな。飲み屋や食堂やらは盛況のようじゃ。ふむ? あの女子おなごたちは娼婦か。まさに金を落す町じゃな

 そんな町だが、カンイチに声をかける者はいない。そりゃ、若造君だ。金だって持っていそうに見えない。装備だって軽装。冒険者と言っても信じてもらえないだろう。

 体は若いが、中身は枯れてるカンイチさんだ。そんなことはどうでもいい。とにかく、空腹を満たすために、食堂を物色中だ。

 

 ふと、懐かしい、一杯飲み屋の焼鳥屋風の店が目に入る。

 「ふむ。ここでいいか」

 「いらっしゃい!」

 適当に串焼きを頼み、蒸留酒をもらう。どうしてもこの世界、肉ばかり。モロキューが食べたいと漏らすカンイチだった。

 ……


 ……

 

 早朝。朝食の準備があったのでそれを腹に納める。もちろん宿泊客、”人用”のものだ。

 クマたちの分もあるとは驚いた。残飯じゃなく、専用の食事だそうだ。野菜も適度に入っていて、むしろカンイチが見ても美味そうだ。量も見合った分あり、ドライや、レトルトで売っていれば欲しいくらいだ。

 クマたちも美味そうに平らげた。

 

 「さて。と。世話になった」

 「はい。またのご来店お待ちしております。カンイチ様」

 そして、スタンプカードを渡される。

 「全店共通になっております。期限もありません故、是非ともご利用ください」

 

 ――まさか、他所の世界に来てまでスタンプカードにお目にかかるとはのぉ

 そう思わずにはいられなかった

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