表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
冒険者カンイチ フィヤマ編 中?
94/520

フォークとナイフ。

 …… 

 

 待つこと暫し。運ばれてきた料理はいずれも美味。

 この店の今日の料理の前菜やらが運ばれてきた。そしてフォークとナイフも。

 そういった洋食の食事に慣れていないカンイチ。どうしても”かちゃかちゃ”と手間取ってしまう。大正生まれのカンイチだ。食器と言えば箸! 孫や、曾孫たちと行くファミレスは箸があるから問題なかったが。

 そんな様子を見ていたアールカエフ。

 

 「いいんだよ? 好きに食べれば。そのための個室だし。誰も見てないし? マナーに気を使ってたら味分かんなくなるよ」

 「うむ……恥ずかしいことじゃろうか?」

 と、一番見られたくないアールカエフに見られて少々凹んでいるカンイチ。

 「はっはっは! 関係ないってそんなの! でもフォーク、ナイフ使わないって……うん? じゃあ、カンイチの所って手掴み? 随分とワイルドだねぇ! はっはっは!」

 「まさかな。箸と言っての。これ位の先のとがった二本の木の棒で食べるんじゃ」

 「へぇ。面白いね! 何だったら作ってもらえば? 慣れ親しんだ食器の方がいいだろう? ほら、木なら木工所。毒対策で銀で作ってもいいね。なにもこっちの作法に従う事もないって」

 「うん? その手があったな。マイ箸ブームもあったのぉ。銀製の箸か……ありがとう! アール。明日にでもダイの親方の処に行ってみよう!」

 「いえいえ。どういたしまして。ふふふ。じゃ、楽しもう! カンイチ! ほら乾杯! 乾杯!」

 「うむ! 乾杯じゃ!」

 ……

 

 料理も進み、本日持ち込みの一品目。

 キノコのオイル焼き。アールカエフと鑑定した時の、エリンギに似た”豚の耳”というキノコ。彼女曰く味はイマイチと聞いたが

 この皿のキノコは魔猪のラードで揚げてあり、噛めば噛むほど旨味が出る一品に仕上がっていた。

 

 「”こりこり” これは美味いな。魔猪の脂、極上じゃな。キノコの歯ごたえも何とも……。キノコとも思えんのぉ。こりゃ、もう肉じゃな! 肉!」

 「ふふふ。キノコがしっかり脂を受け止めてるね。普段、硬いだけのキノコだけど。併せてこの旨味! こりゃ、恐れ入ったわ!」

 

 そしてメインの一皿。

 ドクサンショウウオの香草焼き。サンショウウオは鰻というより、鶏肉に近い食感だった。水っぽい鶏肉。が、臭みは全く無く、ハーブの風味も良い。

 「うむぅ、なるほど……こうなるのか。見た目と違って美味じゃな。この脂、サラリと獣とも、魚とも違う」

 「うんうん! 香草の取り合わせが絶妙だ! さすが! また獲ってきてね。カンイチ!」

 「おう! これだけ美味いとの。そうじゃ、ヌシ……あのでかい奴は大味じゃろうか?」

 ふと、群のボス。大きな個体を思い出す。倒すには陸まで引き上げる手段が必要だが。

 「いや、たぶん、長く生きて魔力も貯めこんでるから、これ以上の美味だと思うよ! 魔石もあるかもしれない! ま、無理は禁物。死んじゃったらつまらないだろう? 美味しいものも食べられなくなっちゃうよ?」

 「そうじゃな。アールもいくか? 狩りに?」

 「ええ~~めんどぉ~~い! めんど~~い! パスで!」

 アールの駄々こねモードか炸裂す、その場でじたばた。

 「だろうのぉ。グラス倒れるぞ」

 「おっと! 危ない、危ない。ふふふ。美味しいねぇ。カンイチ」

 「……ぅ、うむ」

 アールカエフの笑顔を見て、こういうものも良いものだと思うカンイチだった。

 

 今回のもう一皿の肉の皿は牛肉の鉄板焼きのようだ。魔猪に関しては熟成期間を置くらしい。

 もちろん出て来た牛肉も絶品。うま味が強く、”肉”を食っていると感じる一皿だった。

 カンイチが出した菜っ葉もスープや、付け合わせとして大活躍だ。

 こういったコース料理に慣れないカンイチでも十分に楽しめる食事だった。

 しっかりデザートまで頂いた。

 良い店を教えてもらえたと、余韻を楽しむカンイチであった。

 

 「ふぅ。美味かったのぉ……あ。料金」

 アールカエフと二人。夜の町に。これから、アールカエフを送っていくところだ。

 「任せてくれたまえ! 卸した魔猪で釣りが出たよ?」

 「うん?」

 

 ――という事は……ワシが奢ったということじゃなかろうか?

 

 「あ? そうだね。こりゃ、カンイチのお金だったわ。はっはっは!」

 笑いながら金貨を手渡して来るアール。

 「食事代だけど」

 「いいさ。御馳走するよ。アール。が、親しき仲にも何とやらだ。お金はしっかりしよう」

 「そうだね! ご馳走さま! うん? ならば僕がカンイチの奥さんになれば面倒ごとは一切合切、解消か?」

 「ぶふっっ!」

 「冗談、冗談だってカンイチぃ! はっはっは!」

 

 ――ふ~~む。アールであれば……ワシは満更嫌でもないのじゃがの。どうしたもんかのぉ婆さんや。

 長年連れ添った、30年前に死別した妻の顔を思い出し、空を見上げる。その最後の言葉も。

 

 「ワシはそれでもいいがのぉ……」

 カンイチのつぶやきは雑踏の喧騒に消えていく

 「うん? 何だい? カンイチ?」

 「い、いや、また来よう」

 「うん? 来週も来るよ? 一緒に魔猪食べに。折角預けたんだしぃ?」

 「そ、そうじゃったな」

 ……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] わんこ?2頭が頼もしくもカワイイ [気になる点] ホークは鷹 調理器具や食器はフォークだと思うのですが [一言] 今後も楽しみに読ませて頂きます
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ