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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
冒険者カンイチ フィヤマ編 中?
93/520

裏のギルド?

 …… 


 案内された席に座り運ばれてきたワインでアールカエフと乾杯。

 「どうだい? カンイチ、この店は?」

 「うんむ。良い雰囲気じゃな。落ち着く。ワインも美味いの」

 「そうだろう! 僕とカンイチのお食事デートの店には丁度良いだろう? ねぇ?」

 「はぁ?」

 満更ではないカンイチ。さて、どう答えたものかと思案。

 そこにタイミングよくドアをノックする音が。

 

 ”こんこん”

 「うん? 来た! 来た! 入ってきて!」

 年の頃50にはまだ届かないであろうが、落ちついた雰囲気を纏う、がっしりな体つきの男が入って来た。そこらに居る冒険者なんかより、よっぽど冒険者に見える。

 「まさしく、アールカエフ様。お久し振りにございます。ようこそおいでくださいました」

 声も、家具と同じ重厚だ。が、その中に親しみの情を感じる。

 「うん? 随分と萎れたね……。君も……。はて、そんなに来てなかったっけぇ? 僕?」

 「この店には3年ぶりくらいでございましょうか?」

 

 ――おいおい。何が去年じゃ……

 

 「はっはっは! まぁ、こういう事もあるさ。なぁ、カンイチ!」

 

 ――無いわい。

 口を開けば思わず突っ込んでしまうだろうと、口をつぐむカンイチ。

 

 「で、そこのダンマリ男は、カンイチと言ってね。僕の友人さ。で、ここのオーナー兼シェフ長の……?」

 暫し流れる沈黙。

 「ハインツの……子孫?」

 

 ――おい! 知らんのかい!? ……それに言うに事欠いて子孫じゃとぉ!

 思わず叫びそうになるカンイチ。そして、同情の視線を向ける。

 が、さすがオーナーだ。何食わぬ顔でそのやり取りを眺めている。いや、楽しんでる風にも。

 普通の者なら苦笑を含んだ妙な表情になるだろう。

 

 「ふふふ。相変わらずでございますね。アールカエフ様。私はクラフトですよ。ハインツは、この店を出した時の先祖の名です。曽祖父に当たります。よろしくお願いします、カンイチ様」

 「カンイチです。こちらこそよろしくお願いします」

 「で、用事というのはね。ハイン……クラフト君! このレストランに食材を持ち込みたいのさ。色々とね。で、君に素晴らしい皿に仕上げていただきたい。このカンイチ細々と秘密があってね」

 「……ほう。最近、この町で騒がれている、魔猪でしょうや?」

 「うん! 流石だね! クラフト君! そうそう! カンイチは”収納”持ちだから、いろんなのが入ってるぞ。もちろん、卸も承ろう! 格安で。面倒なとこから仕入れ先を聞かれたら僕の名を出せばいい!」

 「なるほど……。その若さで”収納”を持ち、魔猪を狩る……か。ギルドで秘匿する意味も分かります」

 「お、おい、アール?」

 カンイチの言葉も了承も無しにアールカエフによってバンバン秘密が公開されていく。

 

 「言わないと秘密の隠れ家レストランにならないだろう? それに大丈夫さ。全ては僕を通るんだ。君は表に出ることはない」

 「ううむ……」

 「でも、実際、クラフト君、君の耳には今回の魔猪の話ってどう入ってるの?」

 「はい。カンイチ様の名前までは伝わっていませんが……。最近この町に現れた新人が狩ったと。久々の入荷。オークションも開かれるとか……」

 「だろう? 冒険者ギルドだって情報は駄々洩れさ。ちょっと調べりゃ、身バレするさ。リスト君がいくら口止めしてもね。そりゃぁ、あれだけ人を介するんだ。仕方ないって。いっその事、変わった獲物はここに持ち込んだ方が良いかもね。解体だってお手のものだろう?」

 「ええ。もちろんでございます。ここはレストランでございますれば。ギルドの職員には申し訳ありませんが、食材として適した処理を。ウチのシェフらに手による解体は最高の技術と自負しております。その肉の加工も承ます。勿論、販売についても肉、肉以外の素材にしても独自のルートでいくらでも流せます。全てお任せください」

 「なるほどのぉ。確かにこちらはレストランじゃ。食材の扱いは上じゃろうのぉ。でも良いのかの……」

 「あっちが先に情報漏らしてるんだ。立派な規約違反だろ? 身の危険に直結するんだゾ。カンイチの。リスト君には悪いけどね。安穏に生きていくためだよ? カンイチ?」

 妙に説得力と重みがあるアールの言葉。全てが金言に聞こえる。流石1000年の重みだ。

 「なるほどのぉ……でもこちらに迷惑が?」

 「大丈夫。大丈夫。ギルドだって表があれば裏もある。よくできてるよ。世の中は。ねぇ」

 「はい。万事お任せくださいませ。秘密にしても厳守いたします」

 優雅に腰を折る店主。

 「よし! そういう事で? で、カンイチ! 折角来たんだしぃ。出せるモノある? 何でも良いから」

 「そ、そうさなぁ。肉は魔猪の肉と、ドクサンショウウオじゃったか。野菜は菜っ葉とキノコ類じゃな」

 「素晴らしい……。出来ましたら、魔猪肉を卸して頂けると」

 やはり希少な肉。真っ先に求められる。

 その求めに応じたのはアールカエフ。

 「うんうん。そうだね。熟成期間を置くと、一週間くらい?」

 なにやら、カンイチの及ばぬ場所で商談が始まったようだ。

 一回当たり、20人前分を卸すとか? その都度、二人で食べに来るとか? 店主との折衝が始まっている。

 まぁいいか。アールにお任せだ。と匙を投げるカンイチ。

 

 「はい。ソテーにしましょうか。香草焼きもいい」

 「いいね! いいね! ほら、カンイチ! 肉出す!」

 「あ、ああ。了解じゃアール。クラフトさん、普通に寄ってもええかの」

 「はい。もちろんでございます。カンイチ様」

 アールに促されるまま、一回分の魔猪のロースを卸す。ついでにバラ肉も。今晩用にドクサンショウウオと、キノコ類を出して、料理を待つ。


 「いやぁ~楽しみだねぇ! カンイチ!」

 満面の笑顔の美少女? だ。カンイチだって悪い気はしない。

 

 ――ま、ええじゃろう

 と。

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