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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
冒険者カンイチ フィヤマ編 中?
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散歩にでも行こうかい。

 …… 


 「どぅどぅ! カンイチ! で、わざわざお茶屋さんに何の用だったの?」

 今尚、仏頂面のカンイチ。よく考えれば有耶無耶? 子爵とアールカエフのお陰で何となく話がついてしまった。アールカエフの力と言ってもいい。それに納得のいかないカンイチだった。

 それでも、血を見てこの町から追い出されなかっただけ良しとしようと飲み込む。それがありありと顔に出ている。

 

 「ワシは馬じゃないのじゃが? 茶……のぉ。どんなお茶があるのかとの。口に合うお茶があればと思うたが……もう良いわい」

 「ふ~ん。どんなお茶が良いの?」

 「それが皆目わからん。片っ端から味見させてもらって選ぼうと思ったが……。興覚めじゃわい」

 「あらら。それは残念だったね! ふふふ」

 「うん。アールよ。一応、礼を言っておく。ありがとう。出来たら次はもうちぃと早く助けてくれると助かるがの」

 「おっけ~~おっけ~~。僕に任せてくれたまえ! はっはっは!」

 ダメだこりゃ。と一人思うカンイチだった。


 「今から外に出るが……で、どうじゃ? アールも来るかの?」

 そう。クマ達の散歩だ。少々早いがうっぷん晴らしには丁度よかろうと。ついでにアールカエフを誘う。

 「う~~ん。そうね。偶にはいいか。付き合おう! で、何しに?」

 「ウチの犬の散歩。食事もの」

 「ふ~~ん。おっけ。その前に、ドル君の所に寄ってお茶にしよう!」

 「うむ。いいのぉ」

 

 ギルドで先ほどの騒動話を茶うけにお茶を呼ばれる。ドルの親方がギルド長の名で抗議を入れよう! と大層お怒りだったが、面倒だし、アールカエフも灸を据えたから良しとしようと落ち着いた。

 確かによく考えれば、カンイチ個人よりギルドの面目丸つぶれの案件だ。次あったら先ずは一報と念を押された。

 

 犬を連れに宿舎へ。そのまま東門にむかう。

 「さすが、アールじゃな。顔パスか?」

 今、門を通って来たところだ。カンイチは規定通りギルド証を呈示し通過するが、アールカエフは片手を上げて終了だ。

 「うん? この髪の色だからねぇ。僕自身も目立つし? 認識もしやすいのだろうさ。もう僕自身が身分証みたいなものさ! はっはっは! ところで、何時も東門?」

 

 ――なるほどのぉ。それに”英雄”様とも聞くしの。町の方々もアールには頭を下げる。

 と納得のカンイチ。

 「大体のぉ。ここは、野兎が沢山いて、クマたちの餌場に丁度いいんじゃ」

 「なるほどねぇ。さぞかし丸々太って美味しいのだろうね!」

 「うん? アールも要るかの? 美味いぞ?」

 「そうだね。帰り貰って行こう!」

 

 門を出て駆け出すカンイチ。暫く走ったにもかかわらず、しっかりついて来るアールカエフ。

 「ふぅ、流石は”英雄”様じゃな。良く付いて来なさる」

 舞うように付いて来るアールカエフ。無駄な動きが多いように見えるが確かに速い。

 「はっはっは! ”魔法”のおかげさ。身体強化魔法と言ってね。魔力で体を押す感じ? 僕たちの中じゃ”風に舞う”っていうんだけどね」

 「ほう。便利じゃなぁ」

 確かに。風に乗っているその表現が適当だ。

 「まぁねぇ。しかし、カンイチ! 足速いね! この僕でもやっとだよ」

 「そうかの? 毎日クマたちと走ってるからかの?」

 「うん。確かに良い鍛錬になりそうだ。でも、そろそろ休憩しない? 少々疲れたかも?」

 「うん。そうじゃの」

 …… 


 「ふぅ。久しぶりに良い運動になったよ! 気持ちの良いものだね~~」

 「そうじゃろう。うん?」

 クマたちを放ち、深呼吸。アールカエフの方に目を向けると、毛皮を敷き、低いテーブルを出しお茶の準備を始めていた。

 カンイチは汗をかいているが、アールカエフは汗ひとつかいていない。さすが”英雄様”じゃ。と感心するカンイチ。

 「お茶にしよう!」

 「そうじゃの。では、ワシも」

 カンイチも昨日仕入れてきた漬物を出して刻む。

 カンイチの肩越しにひょっこり顔を出すアールカエフ。

 「おぅ……。凄い臭いだね、カンイチぃ。これは野菜の保存食かい?」

 「うむ。この辺りならそんなに合わないことも無いと思うがの。茶うけにの。試してみてくれ」

 「ふ~~ん。ではご馳走になろう!」

 

 アールカエフと共に畑の片隅でお茶にする。クマ達を観察しながら。

 更にその様子を窺う農民たち。カンイチの前に座っているお方は英雄様だ。こんな所で何をなさっているのかと。

 「なるほどぉ。この酸味も悪くないね。しっかし、凄いねぇ。もう魔物の域に達してないかい? あの犬。魔力纏っているように見えるよ?」

 「本当か。まぁ、この世界。色んな危険なものがおるからええがのぉ」

 「ふ~~ん。カンイチのいた前の世界は安全だったんだねぇ」

 「まぁ、身近なところじゃ、熊くらいは出たがの」

 遠くを見るカンイチ。そんなカンイチに優しく声を掛ける。

 「帰りたい……かい?」

 「さての。特に思い残すことも無し。帰ったところでの」

 孫や曾孫たちの事は気になるが、まぁ、もっとも、見守る時間だってあと数年だ。翌年会えるかもわからん。なにせ、地球では99才の老人だ。

 

 「そうかい。で、コレ、どうするんだい。カンイチ?」

 カンイチの下に次々と運ばれてくる野兎たち

 「そろそろ剥くかのぉ。ふぅ………」

 こんもりと積まれた兎の山。無意識にため息も出る。

 「手伝おうかい?」

 「大丈夫じゃ。アールは茶でも飲んでてくれ」


 手際よく兎の皮を剥いていくカンイチ。内臓も掘った穴にイン!

 「なかなかいい腕前だねぇ。ふふふ」

 ハナをモフモフと、モフりながらカンイチに声を掛けるアールカエフ

 ハナの毛並みを存分に堪能しているのだろう。

 

 「いままでもけっこう剥いてきたでの。後で持ってけ。あ! そうじゃ! そうじゃ! アールに聞きたかったんじゃ! こういった肉を持ち込んで美味しく頂ける店みたいのはないかの? ほれ、ワシが、魔猪狩ったのは内緒じゃろ? そういった事も関係なくの。知っておったら紹介願えんかのお!」

 「あ? ああ?! 僕の考えが至らなかったよぉ! すまないカンイチ! じゃぁ、魔猪たべていないのだね!」

 手振り身振りでその残念具合を現すアールカエフ。

 「大げさじゃ……アール。この前一緒にキノコと食ったじゃろうに?」

 「それだけのことだよ? よし! 僕に任せたまえ!」

 「ほぅ? アールの手料理……かの?」

 ちょっとだけ、ちょっとだけ期待をするカンイチ。

 「まさか! 僕が作れるわけないだろう! 僕は炙って塩位なものさ。良い店を紹介しよう!」

 「じゃろうのぉ。うむ」

 「うん? カンイチ! それが一番素材の味が分かってだな 「はいはい」 ! カンイチ?」

  ”うぉうふ!” ”わおうぅ”

 「良し。食っていいぞ」

 「聞いてるのかい! カンイチ! 僕の話を!」

 わいわい騒ぐアールカエフをよそに、クマたちの咀嚼音が畑に響く。

 

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