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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
冒険者カンイチ フィヤマ編 中?
87/520

お漬物

 ……


 「はっはっは。ソイツは災難だったなぁ!」

 「くっくっく、許されよ。冒険者殿。こんな盗賊だって見向きもしない貧乏村でもなぁ」

 ”はっはっはっはっは”

 ギルド証を提示し、先ほどの騒動を門を護る衛士に報告したところだ。無駄に騒がせたかと。

 門衛も真面目で、困った表情をしたカンイチに好意をもち、お茶を出してくれた。 

 「いえ。ただ騒ぎになっちゃったかなぁ、と」

 「ま、大丈夫だろうさ。ははは」

  

 門衛と談笑していると、先ほどの農民がやって来た。

 そしてカンイチの顔を凝視しぽつりと漏らす。

 「本物……じゃったか?」

 「……」

 どうやら、”不審者”の報告に来たようだ。

 事情の説明に来てよかったと内心で思う。次に寄ったら不審者で捕縛されかねないと。

 「おう。来ちまったか。ああ、ナッツさん、この方は、本物の”銀”の冒険者さんだ。鑑定石も問題ない」

 「安心するように村の皆に言っておいてくれ。わざわざ疑われてるかもと、説明に来る真面目な男だ。散歩? ついでに立ち寄ったらしい」

 「了解じゃ。すまんかったな。若いの」

 「いえ、用心深いってことはいい事ですよ。備えは大事です。こちらこそ、不用意に騒がせてしまって」

 ぺこりと頭を下げるカンイチ。

 

 実際騒ぎにはなったのだ。盗賊の斥候。何とも真実味のある話ではないか。実際、他所の村の周辺をウロウロしていた不審者には違いない。

 

 「うんむ! 気に入った! 若いの! 飯食っていけ! 飯! ここは貧乏村! 菜っ葉しかないけどのぉ!」

 「そうそう、貧乏だから賊だって来ないって」

 「おいおい。どうしたんだ? いきなり、ボケたかナッツさん」

 「なにを! ボケとりゃせん! 良いから飯食ってけ! 若いの!」

 

 折角だから頂いていくことに。このナッツという老人。どうもこの村の”村長”のようだ。

 歓迎と先ほどの非礼の詫びにと村の鶏が潰されそうになったが、カンイチの方から兎を供給し、鶏の命を救う。なにも通りがかりのお騒がせ冒険者の為に潰すことも無い。貴重な財産だ。

 

 「なんか悪いのぉ。招待しておいて、兎、いただいて……」

 「なぁに、気にせずに。わざわざ貴重な鶏を潰すことも無い」

 

 そんなこんなで、村長宅で昼食を頂くことに。メインは兎のローストだが、そのほかの皿は野菜。野菜。

 ショウガとニンニクで炒めたものや、カンイチの好きな『おひたし』。嬉しいことに、サラダ感覚の浅漬け。

 そして保存食! そう! 漬物があった。風体から香り、漬かってる野菜迄、まんま野沢菜漬け。それと大根の塩漬け、白菜の塩漬け、ニンジンや見たことも無い野菜の塩漬けや、麦麴漬けにしたもの……

 

 ”しゃりしゃく”

 「うん。いい風味じゃ……。美味い……」

 未だ、米、白米は見つけていないが、先に漬物を得ることができるとは。もちろん、作物の目途がつけば、己で漬けるつもりであった。

 が、しかし、ここは、住民用か、収穫の最後かにいっぺんに大量に作ってるのであろう。大量漬けの利点がある。個人の小さい容器で作るのと違う。均一で、こなれた風味。

 

 「うまい……」

 漬物を齧りながら漏れる、カンイチの心……

 「そうじゃろ。そうじゃろう。そいつは、春に山で採ったヨッパド草と言うんじゃ。よう漬かってるじゃろ? 今が食べごろじゃな。で、こいつが、ワラシウリじゃ、こいつの風味も良いぞ。摘まんでみろ」

 「爺様、若いのには……」

 「大丈夫じゃ! カンイチならわかってくれよう!」

 「どれ、”こりかりこり” おぅ……。歯ごたえと言い鼻から抜ける香りが最高じゃな。”こりこり” こりゃぁ、上等な瓜じゃな!」

 「じゃろが! こっちも摘まんでみぃ」

 「……冒険者の兄ちゃん。爺ちゃんみたいだな」

 「こ、これ!」

 村長の孫に指摘されるも好物の漬物がずらりと並ぶ光景を前にそんなことは些事。

 カンイチの脳内ではどうやったら分けてもらえるかに思考を回すだけであった。

 

 食後、厚かましいとは思ったが、”漬物”を譲ってもらえるように交渉を開始。

 「すいませんが、この漬物、譲っていただくわけには……もちろん、購入させていただきます」

 「うん? そいつはありがたいの。こっちからお願いしたいくらいじゃ」

 「おお! では!」

 「臭いのもあるがみてみるかの?」

 「ぜひ!」

  古漬けかと思いきや、ザーサイによく似た作法の漬物だった。漬け汁を舐める。うむ! うまい!

 「勿論、いただいていきます!」

 ……


 ずらりと並ぶ、樽やら桶。片っ端から、”収納”に仕舞う。

 「ふむ。”収納”か、”マジックバッグ”か知らんが、そいつが、カンイチの”銀”の証かの。こんなに買ってどうするのかとも思ったが……」

 「あ……」

 漬物に夢中になってて、完全に失念していた。バッチリ”収納”に仕舞う様を目撃されてしまった。

 「なぁに、別に他言なんかせんわい。お前たちもの」

 「うん」「はい」

 「よいな。そういうものを持ってても、それを”護れる”冒険者殿ということじゃ。それを忘れるでないぞ」

 「はい」

 息子であろう、次代の村長、その妻、孫たちも一斉に頭を下げる。

 「すいません。何だか騒がしてばかりじゃな……ワシは。好物の漬物で舞い上がってしまったようじゃ」

 「はっはっは! 嬉しいことを言ってくれる。それだけあれば当分持つじゃろが、無くなったらまた来るといい」

 「うむ。近くに来たら寄らせてもらう」

 

 バレたことだし、野菜、リンゴもついでに分けてもらう。

 ここにもう一ヶ所、カンイチの癒しの場が出来たのは言うまでもない。


 こうなれば、白米は無理でも是非とも緑茶が欲しい! ウーロン茶に似たものはあるが物足りない。紅茶じゃ渋すぎる。やはりここは緑茶だ。

 

 「茶ノ木……かぁ。産地に行くのがええが……。遠けりゃ自生するのを探すしかないのぉ。が、樽に植えたくらいでは量は知れとるしの。う~~む」

 と、帰りの道中”緑茶”に思いを馳せるカンイチ。どうやら彼の次の目的は”緑茶”のようだ。

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