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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
冒険者カンイチ フィヤマ編 中?
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北に。

 …… 


 「おはようございます」

 身分証を渡しながら門衛に挨拶。普段の光景だが今日は少々異なる。カンイチは北門にいた。

 「その年で”銀”? ……本物だな」

 「ほら、隊長。ハンス総括と……」

 「ああ。この前のか。世話になったなカンイチ。で、用事は?」

 「周辺の情報収集を、様子を見ながら、犬の散歩をするつもりです。夕方までには帰ってきます」

 「なるほど犬の散歩か? ふむ……」

 その視線は、クマ、ハナに向けられる。

 「隊長、もういいでしょ。従魔票も付いてるし。問題ないですよ」

 「問題なくとも興味がある。……うむ。俺の名は、トッドだ。この周辺で揉めたら俺に知らせろ」

 「はい。よろしくお願いします」

 と興味津々なトッド。クマ達にも興味の目を向ける。

 本当に目を掛けてくれたのか? 特に賄賂とかの要求も無し。ま、良いか。何かあればハンスさんに相談すればいいし。と、その様子に少々尻込みするカンイチ。

 後でわかるのだがトッドは無類の犬好きだった。

 

 北門を出る。こちらが王都に対する正門。王都にへと至る街道となる。心なしか南に比べ道の整備もされてるような気がする。道に雨が降る度に、ぬかるみになる窪み等も見当たらない。

 

 「よし! 行くかぁ! クマ! ハナ! ほれ!」

  ”ぅおおぅふ!” ”わわふぅ!”

 毎度のことながら手綱を外せば弾丸のように駆けていく。犬達を追いカンイチも走る。

 ”ひひひぃぃん”

 馬車の馬がクマ、ハナに驚き嘶く。

 

 「す、すいません!」

 謝りながら走り抜ける。そりゃ、後方から恐ろしい速さで迫る猛獣だ、馬も驚く。クマたちに命じて街道から外れ、草原を往く。

 暫く走り、犬たちもトイレをすませば、ひと段落。カンイチの回りでじゃれるように走る。

 「それじゃぁ、もうちょい行ったら飯にしようかの。今日は鹿肉にせよう!」

 

 休憩するに丁度いい川の傍の開けた場所にでた。キャラバンだろう馬車も3台停車し休憩してるようだ。焚火の後も点々とあり、休息地や野営地になってるのだろう。 

 その一角で、クマたちにシカのモモ肉、水をやり、カンイチも軽く腹に納める。

 休憩がてら、街道を通る”モノ”に目を向ける。早い時間もあってか、ほとんどが荷馬車。しかも驚くことに護衛を連れていない。

 

 「ふぅむ。北門~王都間は安全なルートなのじゃろうか。行商というても、日用品を積んで売ってるようなのから、麻袋……穀物じゃろか。どのみち、物流は馬しかないようじゃな。折角の魔法がある世界じゃ。もっと魔法で、こう、びゅ~~~~ん! と、あってもよさそうなものじゃがの」

 

 この世界。天界で***が言う通り夢の”魔法の世界”ではあるが、そもそも普通の”人種”で使えるものは少ない。エルフやドワーフ等の、魔法に特性のある人種や、魔物が使える程度だ。

 まぁ、カンイチに知る由はないが。

 

 しばらく進むと街道が二つに分岐した。一方はそのまま王都の方に。もう一方は、内陸に向けて。内陸に向いてる方の道は少々、傷みが激しい。おそらくは、近郊の村に至るものだろう。その証拠にそちらに行く馬車はいない。

 そう当たりを付け、整備が行き届いていない内陸の方の道を進む。カンイチ。

 30分も走った頃か。木の柵と家々が見えて来た。畑も見える。結構な広さの畑だが、きちんと柵で囲まれていた。

 

 「ここはしっかりした柵があるの。作ってる作物は菜っ葉……うん? 果樹、リンゴじゃろか」

 カンイチの夢の菜っ葉畑。しかも果樹園も併設されている。紅い果実がたわわに実る。

 「ええ……のぉ……」

 と、立ち尽くし、ぼそり。

 柵の外から村の様子を羨まし気に観察していると農民が語り掛けて来た。

 「兄ちゃん。何しに来たんだ。そんだけ堂々としてるから盗賊の斥候じゃないだろうが」

 カンイチを睨み、頭の先から靴までじろりと。

 「あ、すいません。良い菜っ葉の出来と思いまして」

 「ふ~~ん。農民……には見えないがな」

 どうやら怪しい者、不審者になってしまったらしい。

 どうした、どうした、と、他の農民も集まって来た。中には鍬を手にした人まで。

 「畑に関心があるようには見えんが……」

 村民たちの疑いの視線がカンイチを捉える。

 

 カンイチにしてみれば関心モリモリ。経験者なのだが。

 この世界、どうしても下に見られてしまう農業従事者。彼らから見れば、農業に関心のある若者なんか皆無だ。実際、彼らの子達も長男以外(長男すら)好機があれば家に残らず村外に出て行ってしまう。

 

 「怪しいものじゃないです……よ?」

 と、言ってみたものの十分怪しい。

 

 ――うん? 怪しい者が、そうじゃないと言っても説得力無いのぉ……そ、そうじゃ!)

 懐から、銀色に輝くギルド証を取り出す。

 「私は、冒険者です!」

 「ふ~~ん。で、その冒険者の坊主が何しにこんな、何も無いところに来たんじゃ?」

 「おいおい。坊主は失礼だろが、相手は”銀”の冒険者殿だぞ」

 「ああ。立派な狼だな。狼使いかい?」

 「ふん。本物かどうかもわからんわい!」

 

 ――う~ん。ワシから見ても怪しさ全開じゃわい。ここはさっさと退散じゃな。

 と、撤退を決める。

 

 「あ、いいですよ。とにかく、何をするわけでもないですし。通りすがりと言いますか。お騒がせしました!」

 ぺこりと頭を下げ、そそくさと農民の前から退散。

 

 「一応、門衛さんに一声かけてくか……。騒がせてしもうたで。入れれば野菜買っていこ」

 すごすごと村の門に向かうカンイチであった

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