表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
冒険者カンイチ フィヤマ編 中?
85/520

 …… 


 アールカエフの所でキノコパーティ。猪肉も焼き腹に納めたカンイチ。

 食休みも十分に取りアールカエフと別れる。散歩に誘ったが、腹が膨れたから昼寝をするそうだ。小柄で細身だが下手をすればカンイチよりよく食べる大食漢だ。さすがのカンイチも言葉にしないが。

 それにたくさん食べる女性は好ましいと思っているカンイチだ。何も文句はない。

 

 この後は犬たちの散歩と、クマたちを連れて今日は、東門、耕作地側の門を出る。

 農家の方々もカンイチを見かけると、片手を上げて挨拶。

 憎き兎を毎回大量に狩ってくれる、農家の英雄だ。カンイチも頭を下げて挨拶をする。その事も好かれる要因となっている。

 大抵の冒険者と呼ばれる人種は乱暴者、ならず者と相場が決まっているからだ。

 

 「ふぅむ。狩っても狩っても一向に減らないのぉ」

 額に手のひらをかざし、周辺をぐるり観察。散々捕まえて大分減らしたが、すぐ前の状況へと戻っていく。穴から顔を出すだけならともかく、人が居ようと堂々と出て来て作物を荒らす。

 「ああ。あの丘の向こうも広大な平原だからなぁ。そこにもうんと兎がおるで」

 そんなカンイチのつぶやきに、草を引いていた農民たちが応える。

 「そうそう。兎たちだって、畑や丘のすそ野の一等地が空けば、次々と押し寄せてくるわい」

 ため息とともに言葉を吐く、農民。

 

 「そっちの原の方は、耕作地にはせなんだのか?」

 再びののカンイチの問。原ならいっそのこと畑にしてしまえばよかろうと。

 「水の問題と、人手が足りん。整備する金ものぉ。領主様の方で頑強な柵を用意してくれればいいのじゃが……」

 「ああ。ワシ等じゃ大掛かりな設置は無理じゃな。金もない」

 「まぁ、ウサギ除けの柵すらも無い今じゃしなぁ」

 「熊が入ってこないんだ、問題なかろうと、取り合ってもくれん」

 と、農家の皆はすでに諦めているようだ。 

 「しかし、猪やら、鹿は入ってきてますよね」

 確かにまだ熊の痕跡は見えない。そうは言っても現状、猪や鹿の足跡や糞などの痕跡はある。森の恵みが減ったらいつでも熊も同じ道を通ってくることができるだろう。

 「うむ。熊だっていつ入ってきてもおかしくないんじゃがのぉ」

 「……困りますね」

 「ま、仕方なしじゃ。その時はその時じゃ」

 「ああ。自分の土地なら、収益もあがって設備投資も出来るのだがな。ま、小作のできる事なんか知れてるわ」

 ……。

 

 農民たちの実情を聞いたカンイチ。

 「ふむ……農地を開くとしても……どうやって自分のモノになるんじゃろか? 買うのか? 国のモノなのか……が、西の沼やらは一切管理しておらん。ましては山なんかも。ま、人が安全に住める環境じゃないがの」

 農地習得にどのような手があるのかを調べようと思うカンイチだった。役所……先ずはリスト辺りから聞こうと当たりを付ける。

 考えることに集中し、兎を剥く手も止まる。

 ”ぅおぅふ!”

 「お? おうおう。すまんの。今、剥くわ。しかし……今日も沢山獲って来たのぉ……」

 足下に山となった野兎たち。

 「せっせと剥いてクマたちに食わさねばの。もうちょっと待ってくれな」

 ……


 夕食前にギルドに帰還。数日分の兎の皮の納品を済ます。

 「うんうん。傷も無し。特上っと。肉はクマたちの餌でしたよね?」

 「うむ。何じゃ、ルックさん。欲しけりゃやるぞ。剝いてないのも結構あるでそれで良けりゃの。一家で食う分くらいは」

 「本当ですか? じゃ、買わせていただきます!」

 「うん? 5羽もありゃぁ足りるじゃろ。ええから持ってけ。持ってけ」

 「御馳走さまです! カンイチさん」

 今日は早番のドルの親方はもう帰ったらしい。ルックが査定し買取が行われる。ま、兎の皮の買取価格は知れているが。

 此処だけの話、鞣し屋に直接持って行けば3~5倍の値はつくのだが。


 ふと、この星に降り立ってからすぐに遭遇した大きな兎を思い出し、皮の処理を依頼する。

 「そういえば、この町に来る途中、大きな兎を仕留めての。敷き物に加工したいのじゃが?」

 「へぇ。敷物ぉ? 兎の? ど、どんな大物です?」

 書類への書き込みを中断。ペンを置くルック。興味津々カンイチの元に。

 「こいつじゃが、敷き物によかろ?」

 収納から丸めた大きな皮を出す。

 それを丁寧に広げるルック。”収納”のお陰で血の滴る新鮮さだ。

  

 「うん? ……! こ、これって牛兎ゴライアスラビット? ま、まさか……」

 毛の質を確かめる。大きいが確かに兎だ。

 「うん? 珍しいのかの。草原でばったり出くわしての。クマたちが仕留めたんじゃよ」

 「え、ええ。この大きさなのにものすごく臆病で。滅多に姿を現さないんですよ。逃げ足もとても速くて……。ここ数十年、持ち込まれた記録にないですね。うんうん、特上の触り心地ですねぇ。肉も大変美味とか。肉は?」

 「肉は食っちまったの。皮だけじゃわい。確かに美味かったの」

 「それは残念。ギルド長じゃないけど……めっちゃ高く買い取れますが?」

 「いや、敷き物にするつもりじゃ。冬に備えての」

 「了解です。しかし……ここで牛兎かぁ。毛皮加工依頼で良いですね? はい。承りました。一財産ですねぇ。おっと、これが預かり票です。料金は金貨3枚かかりますけど?」

 「うむ。じゃ、よろしく頼むの」

 「はい。御預かりします。お茶どうぞ。カンイチさん」

 「うむ?いただこう。ふぅ……」

 仕事の後の一杯を楽しむカンイチだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ