”鑑定”!
……
「はい! つまらない話しはこれまで。これでお終い! お腹減ったよぉ~~。カンイチぃ~~」
アールカエフの宣言で難しい国やら領地の話はお終いに。
カンイチも大分知識の補填が叶った。今後の判断材料になるだろう。
食事という事で昨日獲って来た松茸を思い出し、アールカエフにお裾分けすることに。
この世界の人々は食べるかどうかは知らないが。なにせ、人が入った形跡がなかったから。
「お? おおぉ!? これはマツタケだね! 随分と立派だね! 嬉しいよ! カンイチありがとう! こんなに沢山貰って良いのかい?」
カンイチの予測に反して、小躍りしそうなほど大喜びのアールカエフ。これだけ彼女が喜んでくれれば採って来た甲斐があるってものだ。
「うむ。結構獲って来たからの。アールよ、キノコ好きか?」
「そりゃもう! ほら、僕の髪の色だって緑だろ。エルフって”森の民”って言われてるのさ。故郷に帰れば、食事は木の実やキノコ、草ばかしだよ」
「うん? アール、肉食うよな?」
カエルも食べると言ってたし、猪肉も持って行った。しかも大量に。
「ああ! 大好きさ! 同族の連中には”肉食エルフ”やら、”血臭い””獣臭い”と揶揄われるけど、カビの生えた古い風習で肉の美味さを知らない連中に言われたくないね。あ~~可哀そう。肉食エルフ! 結構! 結構!」
――どこまでもアールはアールじゃ。
そう好ましく思うカンイチ
「うん? 何かね。よし、折角だし、焼いて食べようよ、カンイチ! 確か倉庫に炭と焼き網があったな。ほら、カンイチ! ぼさっとしてないで、出してきて!」
――ワシがか?
「なら、アールよ、キノコに詳しいじゃろ? 変わったのも色々採って来たんじゃが。見てもらえるかの? ワシの知識に無い物も結構あったで」
”収納”から色とりどりのキノコの入った麻袋を出していく。採りも採ったり。かなりの量だ。
「は? 何言ってんだい? カンイチ。キミ、”鑑定”使えるだろ?」
信じられないモノを見るような眼でカンイチを見るアールカエフ。
「”鑑定”……? 何じゃそれは? そういえばこの前も言っておったな……」
「はぁ? まったく……困った君だな! キミは! 誰もが欲しがる、すっごい恩恵だぞ? ……まぁ、良いや。カンイチだしぃ。そうだなぁ~~。その不明なキノコを手に取ってね。それでじっと見つめるんだ。そして真摯に、『神様、無知な私に教えてください! これって毒キノコ? 食べられますか?』 って聞いてみ?」
真面目な表情でカンイチに言い寄るアールカエフ。キノコを握りしめながら。
「は? はぁ? 神様に聞くのかの? キノコを……」
「そうさ! 答えてくれたらこれ以上の答えはないだろう? なにせ神様だぞ?」
「ま、まぁ、そうじゃがの。どれ。一つやってみるかの……」
訝し気にキノコを一つ取り、じっと見つめる。くすくす笑っているアールカエフが気になるが
「うむ……。では……。こほん。神様、無知なワシに教えてくだされ。このキノコは毒キノコでしょうか? 食べられるでしょうか? まだ死にたくないで……よろしくお頼み申す……」
アールの助言通り、神様にお伺いを立てるカンイチ。
”くすくす!”
と楽しそうに笑うアールカエフ。
何じゃ! とも思ったが……その笑顔に文句も引っ込むカンイチ。
すると脳裏に
・ユウカリタケ……食用。
「お?! おおお!? なんと! ユウカリタケとな? 食用じゃと?」
驚き、大声を上げるカンイチ。
「うんうん。見えたかい? そいつが”鑑定”さ。そのモノの正体や、価値を見破るスキルさ。ほら、神様が教えてくれてるようだろう? ま、態々、声に出して聞かなくともいいけどねぇ。くすくす」
「……それで笑っていた訳かの。アールよ」
「でも分かりやすかっただろう? ふふふ。何回もやってれば情報量も増える場合があるよ。あ、そうそう! 人には勝手に使っちゃだめだよ。争いになる場合があるから」
――うん?
「うん? アールよ、この前ワシに使ったと言っておったの……」
「何? そんな細かい事、まだ覚えているのかい? カンイチ?」
先ほど、争いになると言っていなかったかと。少々納得のいかないカンイチである。ならばと、
「アールよ。試しにお前さんを鑑定してもよいかの?」
「えっち!」
「……すまん」
アールカエフには全く敵わないカンイチであった。100歳とは言え、相手は1000歳だ。到底太刀打ちできまい。
アールカエフと二人で謎キノコたちを”鑑定”を使って選別。数々の異世界キノコの正体は分かったが、そのほとんどをアールカエフに取られてしまった。毒キノコも薬品等の調合実験に使うそうだ。もちろん、食用キノコも。その辺りは抜かりの無いアールカエフだ。
食用キノコにとても美味なもの、高価で変わったものもあったので早速それらのキノコを喰らう。
「うむ! この、オオムラサキフシタケというキノコ。味が良いのぉ~~美味い!」
「”はふはふはふ” うんうん。美味しいね! そのキノコ、標高の高いところにしかないから採るの大変なんだよ。うま! そうだ! カンイチ、肉も焼こう! 肉も!」
「うむ。バーベキューのようでいいの」
「ばべきゅー? 良くわからんけど、食べよう! カンイチ! どう? ”鑑定”はモノにできたかい?」
「うむ。おかげさまでの。これで出先でも使えるの」
「そうそう! いいね! 美味しそうなものもジャンジャン持ってきて! 僕は随時受け付けるよ!」
「ふむ。依頼かの。アールよ。くくく」
「何言ってるんだい? キミと僕との仲じゃあないか!」
「ほぉん?」
――一体どんな仲じゃ? 爺さんと婆さんの茶飲み友達……かの?
と少々疑問が浮かぶが、悪い気はしないと思うカンイチだった。




