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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
冒険者カンイチ フィヤマ編 中?
82/520

国、領地、この町…1

 …… 


 日が傾きかけた頃にはフィヤマの町の南門に到着。

 住民用の審査の列に並ぶ。

 この住民用検問は外来用の検問に比べ、審査も緩く、一々判定石も触らなくともいい。が、それを悪用する罪人も居ることも確かだ。本来なら全員に実施すればいいのだが、判定石、その燃料である”魔力”はとても高価だ。それに、人の出入りが多いこの町。夜になっても仕事が終わらないだろう。


 「おう! お帰り! 無事のようだな! で、どうだったカンイチ?」

 「ただいま戻りました。ヨルグさん。良い運動になりました。今回は特に変わった獲物はないですよ」

 「運動……って。まぁ、カンイチだから良いか」

 どういう意味? そんな顔のカンイチであった。

 

 「それはそうとハンスさんはゴブリンの方ですか?」

 「ああ。どうも、小さな集落が見つかったらしい。領主様と交渉中だ。人を動かすには金がかかるからなぁ。一番の安上がりは領兵だが、ここは冒険者が多いから、兵自体が少ないんだよなぁ。かといって有事の時、依頼を出すとなると高くつく。”氾濫”なら、協定で冒険者を戦力として数えられるが……。さてどうなる事やら」

 「うん? そこまでケチでせこいのかの? ここの御領主様は……」

 「まぁなぁ。死んだ前領主のオヤジさんは、まぁ、そこそこ真面まともだったんだがなぁ。血筋や出生云々は言いたくねぇが、今の領主様は妾の子だ。おっと。不敬罪になっちまうわなぁ」

 「なるほどの。面倒な事じゃな」

 「こればかりはなぁ。流石に”義勇軍”やら、”緊急徴兵”の募集は無いと思うがな。そこまでやればさすがに王も黙っちゃいまい。領地を召し上げる良い口実になるからなぁ」

 「そうじゃったな。その上にまだ親分がいるんじゃったな」

 「ああ。今の王はそこそこやり手と聞くが……。どうかねぇ。下々の俺にはわからんわ」

 「ふむ。ここの領主を替えたければ、失政を待つ……か」

 「おいおい。カンイチよ。ま、言うほど悪い領主様じゃないさ」

 「だと良いがのぉ」

 

 ――下らぬ指揮官のせいで、気の良い仲間が死ぬのはの。ワシに何かできるだろうか……

 ……。


 

 「……という訳じゃが。アールはどう思う?」

 翌日、なんとなくアールカエフの所に来たカンイチ。情報も多く持っているだろうと推測しての行動だ。

 早速、ヨルグから聞いた話と己の思ったことを語り意見を求める。特に”氾濫”についても。

 

 「う~~ん。カンイチがわざわざ僕を頼ってきてどんな話かと思ったら……。そんな事? 僕には関係ないしぃ? つまんない」

 と、カンイチの手土産の茶菓子を口に放りそっぽを向くアールカエフ。表情にも『つまらん!』とおもいきり書いてある。

 カンイチじゃなければ追い出されていただろう。

 そんなアールカエフの顔を窺っていたカンイチ。

 「つまらん……。そうかの」

 「そんな顔しなさんなって。カンイチ。生きててなんぼだろ? キミの言う通り、義理で手を貸すのもいいだろうが、結果、領主の掌の上だよ。只でラッキーってさ。益々付け上がっていい方に進展なんてないね! それに、甘く考えすぎなんだよここの領主様は。とっとと替わった方がいいね。恐らくだけど、町が半壊するまで王も手を出さないと思うよ? この領地、実入りが良いから欲しがってる貴族多いし。順番待ちでもしてるのだろうさ。うん? この茶菓子、美味しいねぇ。流石だ! カンイチ!」

 カンイチにしてみれば茶菓子どころではない話だ。町が半壊と

 

 「おいおい。人あっての町じゃろが。半壊したら……」

 立て直すだけでも多くの時間と金がかかるだろう。人の命も失われて。”無能”一人除くだけの為にはあまりにも大きな犠牲だ。

 

 「それが一番手っ取りばやいだろ? 一応、領主は王国伯爵様だし。それくらいの大ポカしないと簡単には除けないって。半壊すればその責任の所在は誰の目にも明らかだろう? 自分の領地、守れないってことだから。他の領主やら、将軍なんかと懇意にしていれば助力も得られるだろうけどぉ。今の領主様はそういった営業活動していないようだし? 一応、宰相派と言われてるけど。実際、その宰相さんがここ狙ってるとも聞くし? なにせ、子飼いの貴族ががわんさかいるからねぇ。正に魑魅魍魎が跋扈する魔窟だねぇ。王都は。はっはっは。まぁ、他所の領地見てあ~~だ、こ~~だ。自分の方が、私の方がって騒いでる連中は皆、同列だろうけどね」

 「失脚を待つという事か……。やけに詳しいな、アールよ。国の内情までも……」

 「僕には精霊様がついているからねぇ。ふふふ。ってのは冗談。精霊たちには、とんと、つまらない話さ! 王都の友人から聞いた程度。僕の知ってる精霊たちは、皆、カンイチに夢中さ」

 くつくつと笑うアールカエフ。お茶のカップを傾けながら。

 

 ――それも困るんじゃが

 独り言ちるカンイチだった。    <つづく>

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