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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
閑話 カンイチ事件簿 
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カンイチ事件簿 交渉人編ー8

 …… 

 「よし! これで、攫われた子供らは全部という。後は暴れるだけだな! カンイチよぉ!」

 「……まぁ。そうなるかのぉ。……捕まえなんでいいのかの」

 「こいつら、プロの人攫いだかってのたまっていたんだろう?」

 「”交渉人”の女はそう言っておったがの……」

 「じゃ、俺もこの町を護るプロだ! 遠慮は要らんな! それにどうせ喋らねぇ。変な貴族とでもつながってたら身受けされて無罪になっちまう」

 「遠慮? 最初からしておらんじゃろが……。まったく。ま、こんな屑共を生かしておく道理はないの」

 「ま、そういう事だ! 行くぞ! カンイチ! 手伝え!」

 「了解じゃ!」

 

 金物屋の娘を地下牢へと送り届け、再び馬車の陰に。未だ死体は見つかっていないのか。大きな騒ぎにはなっていない。 

 視界に入る連中は細々な作業をしているものがほとんど。下っ端なのだろう。

 女たちと騒いでるのも一部。あの辺りが、幹部と言ったところか。もちろん先に始末した奴も幹部クラスだったのだろう。

 「じゃぁ、行くか! カンイチ!」

 「おいおい。先ずは数を減らそうかい……」

 

 …………


 ……

 

 ……死屍累々。

 

 「ふぅ……。しかし、やるもんだなぁ……カンイチよ。心配して損したわ」

 自前の剣が歪んだか、集めた人攫い共の剣を物色中のハンス。

 「人でなし、畜生共に手加減など無用じゃろ。のぉ」

 ハンスの足下、す巻きにされた商人風の男に目を向ける。

 

 この場で生きている人攫いの仲間はこの男のみ。

 

 先ずは下っ端を馬車の陰に引き込み殺害。数を減らす。

 飲み騒いでいた連中にハンスが躍り込み、剣を振るう! 逃げようとしたものは順にカンイチに喉を裂かれ息絶えた。

 頭目と思しき、大男。賊の中では体も大きく腕力もいかんなく支配に使っていたのだろうが、上には上がいる。更に一回り大きいハンス。その豪剣にて一太刀で頭を割られ果てる。

 こうなれば忠誠なんてない賊の集まり。正に烏合の衆だ。バラバラと逃げ出すも、一人一人カンイチとハンスに斬り捨てられる。

 

 粗方落ちついたところで馬車も全て検められる。方法は至極簡単。カンイチが一台一台”収納”に入れていくだけだ。隠れていた者も全裸で転がり出る。そこに鬼神の顔を張り付け、血刀を握るハンスがお待ちかねだ。一人残らず斬り殺される。

 秘密の”収納”だが、最初から誰一人生かしておく気はない。であればバンバン使う。

 全ての馬車、テントを収納。周囲の様子、地下牢の方にも生き残りが居ないかの確認に。

 クマの元に一人来たようだ。もちろん、喉を食い破られ息絶えていた。

 ……

 

 「ひ、ひぃ! は、放せぇ! 放せ!」

 もぞもぞと芋虫のように身を捩る男。作りの良い服を着ている。商人だろうか

 「で、なんでそいつだけ生かしておくんじゃ? ハンスさん?」

 カンイチの問いに、じろりと足下の男の顔を睨みつけ応えるハンス。

 「ああ、こいつも普段、一般人のフリしてのうのうと俺たちの町で生きていた野郎だ。ちっ!」

 ”どがぁ!”

 「ぐへぇ! いぃい!」

 ハンスの蹴りが芋虫男の腹部に刺さる。

 「……お怒りは結構じゃが、さっきのハンスさんの言う通り、仲間やら貴族らに身受けされるんじゃないのか?」

 「ま、それでもかまわん……但し! ここで洗いざらい吐いてもらうがなぁ! どんな些細な事でもな!」

 ハンスの表情を見て確信する。こいつを生かしておく気は無さそうだ。と。

 「ひぃ! わ、ワシは知らん! 知らん! 何も知らん!」

 「なるほど……多少手荒でも、のぉ。しかし……ここに居て何も知らん! は無理があろうよ」

 「だな。証言じゃなくてもいい! この後の調査に役に立つ情報であればな! そう簡単に……死ぬなよ?」

 「ふぅむ。ワシも手を貸そうかのぉ……。指一本一本切断して塩でも摺り込んでやるかの。いや、指の先の肉を寸刻みで削ぎ落していくのもええかのぉ。耐えがたい痛みと聞く。ま、畜生には丁度良かろうがのぉ……」

 「ひ、ひ、ひぃ! た、助て! 助けてぇ!」

 まだ何もやっていない。が、生き残りの顔は真っ青だ。

 「ふん。とりあえず知ってる事を話しやがれ!」

 ……

 

 プロが聞いてあきれる。爪を1~2枚剥がした時点で全てを吐いた。

 

 「よ、よくも……こ、こんなことを……訴えて……訴えてやる!」

 爪の剥がされた右手を抱き、吠える生き残り。

 「……随分と都合がいい脳みそじゃのぉ。のぉ。ハンスさん」

 「ああ。本当だ」

 ”すらり!”

 気に入った剣でも見つけたのだろう。歪み無い、直剣が鞘から引き抜かれる。

 「へ? は、ハンス隊長? ハンス隊長ぉ!?」

 じろりと商人を睨むハンス。商人も訴えてやると息巻いていたが、剣、そしてハンスの顔を見、数分後の自分の姿を想像する。

 「ま、待て! 待て! ま ”どばぁああ!” ……あ、あぐぅ……そ、そんな……そ……」

 「ふん! 屑は死ね! 苦しんでな」

 「うむ」

 肩口からザックリと袈裟に斬られた商人。

 

 商人もまさか斬られるとは思っても居なかっただろう。口は割ったし、降伏もした。それにハンスは法の下の衛兵だ。生きていられれば、知り合いの貴族の嘆願で無罪放免。それでなくとも情報を売って……などと考えていたが……。

 が、そもそもは誘拐犯。確認が取れた時点で斬首で問題はない。


 「で、大体のところは分かった。後はこっちで引き受けよう。いいか? カンイチ?」

 「うむ。そうしてくれ。ハンスさんの仕事じゃもの。ワシは飯を奢ってくれたらそれでええ」

 「覚えてたか」

 「後はハンスさんの手柄にすりゃええ。報奨金も要らん」

 「よし! じゃぁ報奨金が出たらぱっとやるかぁ!」

 「無理することもあるまい。腹をすかせた子が3人おるのじゃろ? くくく」

 「……今、それを言うなよ……。現実に引き戻されたわ……。さっさと子供達を連れて町に帰ろう!」

 「じゃな。一刻も早く親元に返してあげたいの!」

 「応!」

 

 ここにまた一つ、犯罪組織が潰された。

 商人の証言で関与する一つの商会に一息になだれ込み、身柄と多くの証拠品を手に入れたという。が、貴族や、大店に繋がるものは一切なく、口も堅く、自害するものも出た。引き続き取り調べは行われるというが情報を知るであろう者は既に自死。進展は望めないだろう。

 クマが反応した北門の衛兵はこの犯罪組織から金をもらい、情報流出や、判定石逃れをしていたようだ。こちらは、即、斬首が決定される。    <完>

 


 

 クマ、ハナには誘拐されていた子供の親たちからたくさんの肉が献上される。

 そして、ハンスの小遣いもカンイチの胃袋に全て……。

 

 が、心配ご無用! 襲撃した賊の拠点の貯め込んだ金貨、馬やら馬車の物資はカンイチとハンスで折半だ。かなり良い稼ぎとなっただろう。

 ハンスはそれに加え、昇級と金一封が。来月から小遣いも少しは増えるだろう?

 

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