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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
閑話 カンイチ事件簿 
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カンイチ事件簿 交渉人編ー4

 …… 


 「そりゃぁ、残念じゃったなぁ」

 細身の短剣を握り、ゆらりと姿を現すカンイチ。

 

 「な!」

 「ガキ!?」

 「ふん!」

 気合いと共に投擲された、ダイの親方に打ってもらった逸品の短剣が、見事にカンイチ殺害の依頼に行き、後から来た男の胸を貫く。切先は背に抜けているだろう。完全に心臓を串刺しだ。

 

 「あぐぐぅ? いてぇ……いてえ……? 何これ? 姉貴ぃ?」

 ”ごとり”

 「な! 何をぉ! セッダ! やっちまいなぁ!」

 女が金切り声を上げる。

 「応! このぉクソガキがぁ!」

 「何を? じゃと。そいつはこっちの台詞じゃ!」

 

 女の前に立ちふさがり、武器も抜かずにカンイチに掴みかかる男。小柄なカンイチに対し、体格差を生かした攻撃なのだろうが……武器くらいは手にするべきだ。

 

 カンイチを舐めている証拠だ。少し思い出せば、今しがた仲間が一撃で屠られている。もう少し注意すれば、他の仲間は? 更にもう少し知恵が回れば、雇った暗殺者たちは?

 が、この男はカンイチの姿でその一切を思考から排除したようだ。

 

 ブン! と振られる手。掴みかかったその手を躱し、相手の股間を思い切り蹴り上げる。

 ”ばちゅ”

 「おぐぅ!」

 股間を押さえ、膝からストン崩れる男、

 「せやぁ!」

 その顎に右膝を側面から思い切り叩き込む!

 ”ぼきゃり!”

 首の骨が砕け、首の筋の張力により、おかしな角度に。顎が上を向き、そのまま横を見るような形だ。

 「あぐっぅ、うっぐぅ! ずひぃ、ずぴひぃぃ」

 股間を押さえながら、あらぬ方に顔を向ける男。呼吸ができないのか、苦しそうに引きつるような音を発す。顔色は赤を通り越して紫色に。

 その仲間の苦悶の表情を真正面からまともに見てる女の顔は反対に真っ青だ。

 

 「ほう。死に切れなんだか? どれ。今、楽にしてやろうかい」

 隣の躯の、胸から生やした短剣を引き抜き、ねじれた首の男の首をズッパリと斬る。

 「ほぅぐぅ……」

 ばしゃり! と飛ぶ血液。顔をあらぬ方向に引っ張っていた筋も切れたか、おかしな緊張も解け、顔の位置も、ぐりん! と元に戻る。 

 ”どちゃり”

 己の血の池に沈む男。

 「さて……と」

 ……


 人質でも取ってるつもりだろうか。商人の後ろに回り込む女。武器も無しに……

 「な、なんだい! なんだい! こ、このガキはぁ! あ、暗殺者アサシンの連中は!?」

 「少し、考えれば判ろうが。皆、斬った。お前さんの仲間の4人ものぉ。ほれ。順番じゃ。お前さんが最後。かかって来なせぇ」

 血の滴る短剣を女に向ける。

 「な、馬鹿言わないでよぉ! 私には人質が居るのよ……そ、そうよぉ! この男、見殺しにするのぉ!」

 「はぁ? 何を言ってるんじゃ? お前さんは? その男などワシは知らん。先に言ったじゃろが。偶々あの場で会っただけじゃ。まぁ、娘さん云々の話も聞かせてもらったが……。悪いがワシにはとんと、関係ない話じゃわい」

 「な、何を……そんな……こと……?……!」

 カンイチの目、その奥底を覗いてしまった。それなりに裏社会にいた女だ。……無……。悟ってしまった。私はこのまま無残に殺されるのだと……。

 

 「構わん。好きにするとええ。その男を殺すなり。なんでも好きにせい。その後、ゆっくりとワシがお前さんをくびり殺してやろうさ。そんで梁にでも吊るしてやるわい。畜生にはお似合いじゃろうて」

 そして確信した。今言われたように、家畜のように殺されるのだと……

 

 「い、いや! ……わ、わかったわ! お、お金でしょ!? お金ぇ! い、いくらでも出すわぁ! き、金貨沢山あるわよぉ。金貨! いくら欲しいのよぉ!? ねぇ!」

 「ふぅむ。そいつは後で勝手に貰うとしようかの。ワシもプロじゃし。見逃すことも無しじゃな。暗殺者まで、けしかけられて命狙われて、はい、そうですか。となる訳なかろうに? ヨルグさんにも言われちょる。小金を持った罪人ほど面倒じゃとなぁ。どれ。もうええかのぉ」

 

 ”収納”に短刀をしまい、細いロープを引っ張り出す。そして普通に、何事もなく女に向かって歩きだすカンイチ。商人の男など既に眼中にないように。その手に握られたロープがゆらりゆらりと揺れる。

 

 「は、な、なら、私を自由にしていいわよ! ねぇ! ねぇ!」

 着ている服の胸元をはだける女。

 「ふん。……畜生と交わる気は無いでの。観念しなせぇ」

 「はぁ! く、クソぉ! と、止まれ! 止まれよぉう! こ、こいつ……こいつを!」

 商人の襟首をつかみ、盾にしズルズルと下がる女。

 「好きにするとええ。ほれ。商人さん。アンタも死にたく無けりゃ、抵抗くらいせんか。相手は無手じゃぞ? それに散々、アンタを嬲った女じゃ」

 ハッ! となりガバリと顔を上げる商人。思い切り肘を後ろの女の腹に叩き付ける!

 「あがぁ!」

 肘は、脇腹に当たり、ひるんだ隙に転げるように逃げる商人。これで盾は無くなった。

 「が、がはぁ、かはぁ……ち、畜生……畜生ぉ!」

 その時、その細首にひゅるりとロープが回される……

 「はぁ? ひ! ひぃ!」

 ”ぎゅ!”

 「じゃ、約束通り、縊り殺してやろう……さ。どうせ、お前のような鬼畜、畜生の鬼ババァには子も居るまいよ。死ね」

 ずるずるとそのまま引っ張ってくカンイチ。縊り殺した後、首を吊る……ロープを渡す良き場所でも探しているのだろう。

 「ま、待ってください! ぼ、冒険者殿ぉ!」

 「うん? 邪魔せんでくれ。お宅の事情も知ってる。不憫には思うが、ワシには一切関係のないことじゃ。こ奴を生かして、また、命を暗殺者に狙われるのもつまらん」

 「そ、それでも……」

 「貴方様がワシを守ってくれるのかのぉ? できはすまいよ。それにこいつは喋らんぞ。自分でも言ってたが、恐らく場所までは知らんのじゃろ。それにこの女の死刑は決定じゃ。ワシを狙ったんじゃからの」

 「し、知ってる! はぐぅ! 知ってる! 命の代わりに……。ぐふぅ……だ、旦那ぁ! 金物屋の旦那ぁ! このガキぶっ殺せぇ! そ、そうしたら! す、すぐに娘を解放するぅ! 解放するからぁ!」

 「……ゴミが。変な気を起こしてくれるなよ……商人さん。アンタじゃワシには勝てぬぞ?」

 ぎろりと商人の目を睨みつける。手出し無用と。出そうものなら斬ると。殺気を込めて。

 「……あ、ああ……わ、私には……私にはぁ! ど、どうすればいいのだぁ!」

 その場に蹲る商人。娘の手がかりが潰える……。が、自分ではどうにもならない。絶望……

 「こ、このぉ! 腰抜けめぇ! 早くそのナイフで!」

 「うるさいのぉ……往生際の悪い。お! この梁で良かろうか。じゃぁ、そろそろ死んでもらおうかのぉ」

 「ひ! ……た、助けて! いやぁ! いや!」

 じたばたと暴れる女を蹴飛ばし、背を踏み、押さえる。

 「ダメじゃな。お前さんはプロなんじゃろう? しくじったら死あるのみじゃろが。誘拐なんぞに関わるからじゃて。多くの犠牲になった子の恨み……じっくり噛みしめればよかろう」

 女の首に輪にしたロープをかけ、首とロープの間に女の仲間が使っていた短剣の鞘を差しこむ。その鞘をぐるり、ぐるりとゆっくりと回し、徐々に首を絞めていく。絞首刑だ。

 「ひぃ! ひぎぃ?! はぐぅぅ!」

 じわり、ジワリと締まっていくロープ。その細首に食い込んでいく。

 「……あ、ああ……」

 頭を押さえる商人…

 もちろん、暴れる女。そりゃぁ、死ぬ一歩手前、半分棺桶に入ってるようなものだ。その背を踏み、ロープを更に締めていくカンイチ。

 「び! あぐあがぁあぎぃ!」

 器官も潰れ最早声にならない女。充血した真赤な目も半ば飛び出し、手でロープで外そうとするも、細いロープが首にしっかりと食いこんでいる。その長い爪で己の首を傷つけるのみ。ギリギリと締め上げられるロープ。

 「あ゛ぐぎがが……」

 「ふん。少しは子供達の無念思い知ったかのぉ。幼子の首を掻くとも言っておったなぁ!」

 ”ぐるぎり、ぐるぎりぐるぎりりぃ…”

 更に回される鞘、締まるロープ。

 「……っ…………」 

 ”ビクリ、ビクリ、ビクリ…”

 大きく身体を3回揺すり、女は動かなくなった……。 

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