表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
閑話 カンイチ事件簿 
71/520

カンイチ事件簿 誘拐犯編ー7

 …… 


 そして、情報を売ったもの……

 

 「カンブル。信じていたのに残念だよ」

 「はい? 何のことでしょう? ギルド長? うん? ハンス殿?」

 顔色を一切変えず、書類仕事を熟しているカンブル。

 が、ハンスの背に隠れていたカンイチを見ると顔色が一気に変わる…

 「お、お前! なぜここ……はっ――!」

 思わず声が漏れる。あの夜、確かに拘束され、キプロチが連れて行ったのだ。その様子も遠くからだが見ていたカンブル。

 

 「うん。お前。ここにカンイチが居るの不思議に思ったろ?」

 「そ、そんな事は……こ、ここはギルド。ギルド員の、カ、カンイチ殿がここに居ても……」

 気丈にふるまうも、その顔色はだんだん青くかわる。その手指にもジワリ、汗が。

 攫われたはずのカンイチがこの場にいいて、ハンス……そして、ギルド長の一言……「信じていた」と。

 全ては明るみに出たと知る。

 

 どこまで明るみにでているのか。生きるために逃げ道を探す。脳をフル回転にして、が、

 

 「まぁ、大体察しはついてると思うが、今から詰所に来てもらう。勿論、縄を打たせてもらう。重罪案件だ。そこで真っ裸になってもらって、判定の魔道具に触れてもらう。これだけのことをしてるんだ無罪ということは無かろう? もし、無罪と成らば体内に埋め込むタイプの隠蔽か何かの魔道具かもしれん。医者も立ち会うから安心してくれ」

 淡々と告げるハンス。

 もう逃げることはできない。どうあがいてもハンス相手に血路を開くなど不可能だ。

 「カンブルよ。手間を取らせずにここで全てを話せ」

 ギルド長の最後勧告だ。

 「……」

 視線をあちらこちらに向け策を練る。が、そうそう良策など落ちていようはずはない。

 「そうか……。なら、ハンス頼む」

 「おうよ! じゃぁ、いくか!」

 ぬぅと、ハンスの太い腕が伸びてくる。

 「ま、待って、待ってくれぇ! キプロチに家族を! ひ、人質に! いう事を聞かないと……」

 「ふん。よく言うわい。奴らは、お前さんも仲間といっておったぞ。あまり腕力の無い金持ちの冒険者の情報も盗賊やら、人攫いに売っていたと聞く。同じ穴のむじな……いや、大きな組織に属しての行い。余計に始末が悪いわい!」

 と吐き捨てるカンイチ。ハンス達が居なかったらその首、へし折ってただろう。

 が、この男の持つ情報も価値のあるもの。全ては、刑に処されるその最後までハンスに任せるつもりだ。

 「……そ、そんなこと……。そ、そう、リスト・ギルド長! し、新人と長年仕えて来た私どちらを……」

 今度は情に訴えるカンブル。が、つまらなそうにその顔を見るリスト。

 「どちらを……だと? 違うだろう? 真っ当な者と罪人だろう? であれば、誰だって一緒だろう? わざわざ罪人を選ぶ馬鹿はおるまいよ」

 「ま、キプロチもそのうち口を割るだろうさ。そうすりゃ、お前の悪事も明らかになるだろ? あまり手間ぁ取らせんな」

 「ぐぅ……。そ、そうだ!【商人ギルド】のバレチも同じようなことをやってるんだ! 奴の情報出すから! 私の罪を軽く……」

 次の作戦は同業者を売って自分の罪を軽くしてもらおうという魂胆だ。

 「ふ~~ん。そうなんだ。商人ギルドでもねぇ。手配せよ! 情報は後でじっくり聞かせてもらおうか」

 「愚かな……。カンブルよ、お前はギルド憲章を蔑ろにした罪で既に死罪だ。減刑なんぞない」

 「な? ギ、ギルド長?」

 結局は全て無駄。死罪は決定していたらしい。

 この案件を知っているのは眼の前にいるハンスら三人。が、ハンスがいる時点で詰んでいる。今更逃げるのは不可能だ。それに、これだけの事件だ。今日、明日にもすべてが町中に知れ渡る。

 が、今尚、せわしなく視線をさまよさせる。どこかに隙が、生き残るチャンスが無いかと。

 

 「ま、そういう事だ。んじゃ、連れてくな。リスト。しっかり話すんだぞぉ。こっちは死ぬまで手を抜かねぇからな!」

 「ああ。手間を取らせたな。ハンス」

 「ふん。人攫いの片棒担ぐ屑にはお似合いの最後じゃな!」

 「……」

 がっくりと肩を落とす。もう諦めたのだろう。

 「おっと、一言。言いたかったんじゃ。キプロチにもじゃがの。リストさんから聞いておる。お前さんたち……子供いるんじゃろ。何とも思わなんだか? ああ、こたえんでええ。何も思わんから鬼畜の所業が出来るのだろうさ。この後、お前さんの子供たちの生きる道……さぞかし厳しいものになるじゃろなぁ」

 「……」

 視線を下に向けたままのカンブル。彼の心にカンイチの言葉はすこしは届いたのだろうか

 「連れて行け!」

 「はっ!」

 ……


 取り調べについては、特に厳しく行われることとなる。

 幸か不幸か、カンイチが階下に蹴り落とした下っ端の兄貴分は生きており、その苛烈な取り調べに強制参加する事となる。

 生存者は主犯のキプロチ、執事、下っ端兄貴、コック。そして慌てて町から逃げようとした冒険者3人を北門で拘束。計7名となる。

 情報提供を行っていた【冒険者ギルド】のカンブル。そして、ふって湧いた【商人ギルド】のバレチについても厳しい取り調べが行われた。

 

 キプロチの事務所にあった書類等で、もう一軒の商店の関与が疑われるも、既に逃げてもぬけの殻、国内で指名手配となる。が、恐らくは闇ギルドのダミー商会の一つでこれ以上の追跡は無理だろうと。

 

 主犯のキプロチ、家宰はずっと沈黙を貫いていたが、コック、下っ端兄貴がすんなりと口を割り、その後、家宰、そしてキプロチが順に口を割ることとなる。

 案の定と言うか、翌日早々、この事件の公表前にも拘わらずキプロチの父親とキプロチの息子、娘が何者かに殺害されたのが大きい。その知らせを聞き、正に絶望。淡々と取り調べに応じたという。己の愛する娘、息子の死を取調室で聞くこととなったのだ。これも因果応報だろう

 同様にカンブルの一家もカンブルを除く一家悉くが殺害されたと報告が入る。

 

 どこかの被害者家族が報復を果たしたのだろうと推測される。処刑される前に、その子や家族の死を知らしめる……これ以上の復讐はあろうか。

 手際から考えて”暗殺者”が使われている。だとすれば、たとえ暗殺者を捕まえても依頼主にたどり着くことはまず無い。こういった依頼は何人もの仲介人を介してなされるからだ。

 

 取り調べが終わり、カンブル、バレチの二人を加えた9人の極刑をもってフィヤマ周辺を騒がせていた少女誘拐事件は一応は収束することとなる。

 が、このグループ以外の人攫い集団や、盗賊はまだ存在しており、この手の犯罪は後を絶たない。

 特にこの町フィヤマは冒険者の町。物流量が多いのと、住人側、犯罪者側とも人の入れ替わりが多いのも要因の一つとなっている。    <完>

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ