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二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
冒険者カンイチ フィヤマ編 前
62/520

沼の獲物

 ……


 「なんでアールカエフ様がここに?」

 「これはよぅいらっしゃいました。アールカエフ様」

 カンイチ達がお茶を楽しんでいると、ドルの親方と珍しくリストギルド長が一緒に部屋に入って来た。

 

 「こんにちは。お茶呼ばれてるよ! リスト君! お茶菓子があればもっといいけどね。ドル君、本当にしわしわになったなぁ。……また友人を送らねばならんか……」

 ふっとアールカエフの表情に影が差す

 

 ――なるほど。外に出れば友人もできよう……が、長命種、1000年も生きているアール……何人も送って来たのじゃろうな。このワシに耐えられるだろうか……

 アールカエフの目を覗き込むカンイチ。その深緑の瞳は何を見ているのか……

 

 「はっはっは! 何をおっしゃいます。アールカエフ様! まだまだ頑張るつもりですよ!」

 「そうだね! そうだよね! 縁起でもない、はっはっは!」

 何時ものアールカエフに。

 「茶菓子用意しましょう。で、アールカエフ様、何の御用で?」

 大体の予想はついているが。

 カンイチが狩りから戻り茶をすすってる。まぁ、元々はアールカエフの依頼なのだが。先に出来るだけ引張れればと思っていたリスト。

 

 「もちろん! カエルを引き取りにね!」

 がっくりと肩を落とす。リストの顔に諦めの色が。

 「なぁに、心配無用! カンイチに窘められてね! 半分で手を打とう! 足りなければまたカンイチが獲ってきてくれるというし! ねぇ! カンイチ!」

 「まぁのぉ。あのカエルくらならの。狩るのも楽じゃし。あ! 狩り方、あってるじゃろか。足の肉は大丈夫だと思うがの」

 「キングフロッグ……決して楽じゃないんですけどぉ。まぁ、カンイチさんですし?」

 と、ルック

 「まぁな。囲まれたら対処がなぁ。カンイチくらいの身体の大きさだと食おうと追って来ただろ?」

 と、リスト。

 「うむ……大口開けてかかってきおったのぉ」

 「どれ! 早速みてみようか! ドル君! ルック君! カエルみてみようよ!」

 「はい。アールカエフ様。ルックよ、準備じゃ!」

 「はい! 親方ぁ! カンイチさんこちらに!」

 ……


 早速とカエルを銀色の鈍い光を反射する解剖台の上に出す。力が抜け、デロリと伸びたカエル。かなりの大きさだ。

 「ふぅむ。頭に一撃かぁ。すごいねぇ、相変わらず! どらどら……ワンコと共同作戦か。足首が砕けてるねぇ。そのほかは外傷無し……と。使う革の範囲に傷も無し。う~~ん、内臓の素材は無事。流石だね! カンイチ! うんうん!」

 金属製の棒をカエルのあちらこちらに当てては品定めをするアールカエフ。その様子を食い入るように見るドルとルック

 「そうですね。どうせ頭は落としちゃうし。目玉も舌も無事。文句ないように思いますが? 親方」

 アールカエフの助手、生徒のように一緒にカエルの査定を行っていたルックがドルの親方に尋ねる。

 がばりと口を開け、舌を引っ張り出す。高級珍味として高額で売買される部位だ。

 「足のお肉もパンパンだね! こりゃ美味しいぞぉ!」

 ”ぱんぱん”とカエルの腿辺りを叩くアールカエフ。

 「うむ。最高の状態じゃな。で、こいつを何匹卸せます? カンイチさん」

 ドルの問に身を乗り出すのはリスト。

 「そうさなぁ。”収納”に30いるから、15匹ずつ……かの。アールは全部で何匹要るんじゃ?」

 「あるだけ」

 カエルを吟味しながら、しれっと答えるアールカエフ

 「本当かよ……なら、今日は15匹ずつじゃな……」

 「出来ましたら、一日3匹ずつ出して頂けると…」

 「了解じゃ。此処、借りるぞ。アールには、今、15匹渡しても良いんじゃな?」

 「ああ! 任せてくれたまえ! 肉は……食べちゃうけど、いい?」

 「うむ。楽しんでくれ。全て、アールに任せる」

 「流石、カンイチだ! じゃ、受け取ろうか!」

 

 カンイチが”収納”から一匹ずつカエルを出し、そのカエルをアールカエフが己の”収納”に仕舞っていく。その様子を複雑な表情で眺めるリスト。アールカエフに大きく出られないからしょうがない。

 更にその様子を何とも言えない顔で見ているドルの親方とルック。そこまで欲しけりゃ交渉位すればよかろうよと。

 

 「さて……と。お次は、ナマズだね! ささ、出してくれたまえ! バラしてみよう!」

 バンバンと大きな解体台を叩くアールカエフ。

 誰も一言もヨロイオオナマズの事は口にしていないのだが……

 本当に精霊様が?再び己の背中やら、死角に目を向けるカンイチ。

 もちろん、それらしい影、姿は見えない……

 

 「……よく知ってるのぉ。本当にワシに”精霊”様とやらが付いて回っとるのか?」

 出不精のアールが態々出てくるとも考えづらい。来たら来たでクマたちも気づくだろう。

 「そう言ったろ? ”精霊”たちは変わったことやら、びっくりすることが大好きなんだよ。それに加護持ちのカンイチの回りは、気持ちのいい魔力が回ってるから、精霊たちも気分が良いのだろうさ?」

 「ふむ?」

 三度、背中の方に目を向ける。が、もちろん何も見えはしない

 「悪い事できませんねぇ。カンイチさん。アールカエフ様に全部筒抜けですねぇ」

 不憫な目を向けるルック。

 「うむ……困ったものじゃ」

 「だいじょうぶ! 僕は口が堅いからね! さぁさ、ナマズ!」

 口が堅い……という事は口外はしない。が、秘密は知る。という事だ。精霊以上に好奇心がありそうだし。カンイチの秘密はすべてアールカエフに握られるのは確定のようだ。

 チラリとアールカエフの顔を見るカンイチ。

 それに、にっこりと笑って応えるアールカエフ。

 

 ――ま、ええか……

 と思うカンイチだった。

 

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