表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二(かんいち)爺ちゃん、異世界へ!(仮)  作者: ぷりぷり星人
冒険者カンイチ フィヤマ編 前
61/520

精霊?


 ……


 「おかえり! カンイチ! 今日はどうだった?」

 「おう! クマ! ハナも無事で何よりだな」

 「うんうん。良く走れたようだな!」

 ”ぅぅおふ!” ”わぉふ!”

 南門の副官以下、隊員達の熱烈なお出迎えだ。犬達も ”ただいま!” と挨拶するように尻尾をぶんぶんと振って応える。

 クマ達はここでも大人気だ。

 

 「ただいま戻りました。ヨルグさん。まぁ、狩りの方はボチボチじゃな。西の池に行ったが、特に変わったところはなかったと思う」

 「そうか。ありがとうな」

 「うん? ハンスさんは、例のゴブリン……かの?」

 頼れる大きな背中の隊長ハンスの姿が見えない。

 「ああ。斥候の連中と出て行った。今日は戻らんだろうなぁ」

 

 ゴブリン、ゴブリンと聞くが、未だに何だかわからないカンイチ。敵対生物という事だけ。己で調べようとも思ったが、ヨルグさんならと聞くことに。

 「……して、ヨルグさん。ゴブリンとはいったいなんじゃ?」

 「……はぁ? 本当にカンイチの村の近くにはいなかったんか? なら仕方ないか。そうだなぁ。下級鬼族と言われてるな」

 「鬼族? 鬼かいのぉ……うん? 人か?」

 「う~~ん。そこも議論の分かれるところだな。彼らも独自に言語、文化を持ってるし。研究者だって、人だという者、魔物だという者それぞれだわ」

 「そうそう。穢れた人の成れの果てやらってな。人の女攫って孕ませるとも言うしなぁ」

 「人、食うしな。ま、俺たちからしてみれば”敵対生物”には変わらんがな。”人”を見れば襲い掛かって来る」

 近くにいた衛兵たちも参加する。クマ達をモフりながら。それだけ身近な敵対生物なのだろう。

 「孕ませる? ふぅむ。人に近しいモノなのじゃろか?」

 「エルフ以外、何にでも孕ませると聞くぞ? 節操のねぇ生き物だな」

 人を孕ませると聞いて驚く。も、


 ――ワシも似たようなものか……

 と、神の、どの人種とも繁殖可能という言葉を思い出し苦笑い。

 「ふむ。人にとっては身近な脅威という訳じゃな」

 「まぁなぁ。しっかりした防壁やら施設が無いとなぁ。小さな村は壊滅させられちまう」

 「個の力はそうでもないが、なにせ数がな。で、姿かたちな。だいたいこれくらい(140cmといったとこか)、体形はそれぞれ、痩せも居りゃデブも居る。人に比べて手が若干長いな。特徴的なのが皮膚の色。青味が掛かった緑色がおおいな。偶に赤いのやら、黒いのも居ると聞く。で、額に一本ないし二本の角があるな。武装は主に棍棒やら、木を尖らせた槍を持ってる。中には冒険者を倒して奪った剣やら槍、鎧やらの武具を装備してる奴もいるなぁ」

 「……ふむ。そこまでいけば、まんま人じゃな……」

 「まぁな。で、ついでに統率個体やら、上位個体なんぞもいる」

 「何じゃそれは?」

 「う~~ん、例えるなら、王や領主? 戦闘職のような。魔法使いもいるぞ」

 「ますますワシ等と変わらんのぉ。どうにか仲良くできんものかのぉ」

 「はっはっは。ゴブリンとか? そもそも言葉は通じねぇし、即、襲い掛かって来るからなぁ。俺達も見つけりゃ、”駆除”って具合だ」

 「だな。あいつらと仲良く? ゾッとするな」

 

 ――ここ迄毛嫌いしとるという事は、ゴブリンとのいざこざは長い歴史があるのじゃろう

 と飲み込むカンイチ。そりゃぁ、女は孕ませられて、人を食う。軍のように大人数で攻めてくりゃ尚更だ。

 「……なるほどの。見かけたら、ここに報告すればいいわけじゃな」

 「ああ。そうしてくれ。狩ってくれても構わんぞ。カンイチ。右耳で報酬がつく。上位個体には魔石もある」

 「……う~んむ。了解じゃ。余り気は進まんがの」

 まだ話だけ。実際目にするまではと思うカンイチだった。

 ……


 「お帰りなさい。カンイチさん。今、お茶淹れますねぇ~~」

 勝手知ったる他人の家。どっかと何時もの椅子に腰を掛けるカンイチ。

 「おお。すまんの。一仕事の後の一服、ありがたいわ」

 「どうでした? カエルの方は」

 お茶を淹れながら、本日の成果を尋ねるルック。

 「うん。まぁ、ボチボチじゃなかろうか。アールの方で何匹要るのかわからんがのぉ。そこそこ獲れたわい」

 「うちでも卸してほしい所ですねぇ。色々と素材が取れるし、肉もけっこう美味いし。革も人気があるんですよぉ~~」

 「ほう。美味い……か。是非とも食ってみたいものだな」

 が、”美味い”のならアールが皆、持って行ってしまうのぉ、とその風景を思い浮かべ、笑みが漏れるカンイチ。そして扉の陰でリストが歯軋りしてるのも丸見えに。

 ”ぎぃ”

 「あ、親方、カンイチさん帰って……あれ?」

 カンイチもドルの親方が帰って来たと思ったのだが、そこには、ちょこんとアールカエフが立っていた。

 「うん? アールよ。どうしたんじゃ? こんなところに。出不精じゃなかったのか?」

 ニコニコ笑いながらカンイチの手を取り、ぶんぶんと上下に振るアールカエフ。

 カンイチも満更じゃぁない。

 「いやなに、カエル獲って来たんだろう! 何匹いても足りないのでね! ギルドに卸される前に全量引き取りにね!」

 目を見張るカンイチ、そしてルックの両人

 「おいおい。ワシの事を見張ってるのかの? 信用ないのぉ」

 「はい? 人聞きの悪い。見張ってないよ。うん? でも精霊たちはキミが色々とやらかすから、面白半分でついて回ってるね。で、彼らが教えてくれるんだよ。もちろんカンイチのことは信じてるよ。でも、お人よしだからねぇ。ギルドの連中に頼まれたら譲っちゃうだろ?」

 

 ――精霊様がワシを見張ってる? 面白半分で? 

 慌てて背中や、足、肩と目を向けるも、それらしいものは見えない。

 その様子をクスクスと笑いながら眺めるアールカエフ。

 「こほん。だからって、アールよ。ワシにもギルドとの付き合いというものがある。恩もあるで。信用して家で待っておれ」

 「うん。……そうだね。少々焦ったようだ。普通の人族じゃ、残った時間も少ないし、弱っちいからコロッと死んじゃうから。うんうん。加護持ちのカンイチとなら長~~く一緒の時間を過ごせるだろう。……そうだな」

 

 一人納得顔のアールカエフ。ルックには何が何やら。

 カンイチは千年一万年……地面をはい回れと神に言われてる。そう考えれば、アールカエフは良き友になりえる。


 ――一人、家でか……孤独……誘った方が良いのかの

 ふと、アールカエフの境遇、考えがよぎる。

 

 「アールよ。一緒に狩りとか行かぬか? 外もいいもんだぞ?」

 「は? 僕は遠慮しておくよ! 頭使うからねぇ! 肉体労働はカンイチに任せた! 十全に働いてくれたまえ。はっはっは! 部屋の片付けも随時募集中だ! 鋭意参加してくれたまえ! じゃ、帰るね!」

 余計な心配だったようだ。伊達に1000年生きていない。そんな杞憂などとっくに克服してるのだろう。

 「あ、とりあえず半分持っていけ。それと、茶くらい呼ばれていけ」

 「うん? それもそうだね。折角ここまで来たんだ。ルック君。僕にもお茶貰えるかな」

 「はい! アールカエフ様!」

 ……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ